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別れ話と噓5
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「わあい、おふろ!」
二人は喜んで湯船に入った。
考えてみれば子供と一緒に風呂なんて初めてだ。
灯里が髪を洗う横で、二人は湯船で洗面器を裏向きに湯に沈めて持ち上げるという遊びをしている。そうそう、けっこう重いんだよな。それで”ぱかっ”って持上るのが楽しいんだっけ。昔、風香とそんな遊びをしたことを思い出す。
順番に二人の髪と体を洗ってやり、初めて触れる子供の裸の頼りなさに驚いた。あんなに元気に走り回っている体はこんなに細いのか。
小さな体につまったパワーに灯里は不思議な気分になる。
風呂上り、まだ暑がって裸のまま扇風機にあたる二人は「わー」と言い合っては音の振動を楽しんで弾けるように笑っている。
頭痛薬のおかげか風呂で体を温めたのがよかったのか、体調はよくなったがビールはやめておく。
バーベキューやおやつであまりお腹が空かないというので、夕食はそうめんで簡単に済ませた。
松岡がしていたように歯磨きをして、寝る前はまた絵本タイムだ。二人はすっかり灯里の膝がお気に入りになって、順番に座って絵本を読んでもらうようになっていた。
きょうはこれ、と玲雄が選んだのは『タルトくんとケーキのたね』。
「ええなあ、ケーキのたね」
「きょうの森にあるかもしれへん」
「ほんなら、あしたさがしにいこ」
「そうやな。さがしにいこか」
子供って現実と絵本の境界ってあるのかないのか。トトロも見たって言ってたし、きっとまだサンタも信じてるんだよな?
灯里は微笑ましく二人を眺めて『エルマーのぼうけん』を手に取った。
「じゃあ、きのうの続きな」
『エルマーのぼうけん』を読み始めると、二人はわくわくした顔で耳を傾ける。けれども数ページ読み終わる頃には、こっくりこっくり頭が揺れていた。
昼間、たっぷり遊んで疲れたのだろう。そのまま抱き上げて布団に寝かせ、本日終了とつぶやいた。きょうも無事に眠ってよかったとほっとした。
夜中に夢見て泣いたりしないといんだが。
スマホが震えたので見ると、松岡から体調を心配するメールだった。
心配ないと簡潔な返信をしておく。
また松岡が来ると思うと憂鬱だった。大友の件で貸し一つと言われてしまったし、どんなことを要求されるのか考えるとため息が出た。
唯一の救いは大友と切れたことだろうか。実感はまったくわかないが、別れてみて思うのは、今でも不思議と嫌いじゃないと言うことだった。
仕事上で尊敬する部分があるからか、色々学んだことが多いせいかもしれない。大友とつき合っていなかったら、灯里のいまの社会人としての立場はなかった気がするのだ。
彼の熱意やアイデアや仕事のやり方に触発されて、必死について行こうと頑張った成果が今の自分を作っている。こうして考えると大友とつき合って得たものは意外に大きい。
そんな自分が大友に幸せになって欲しいと思うのはおこがましいだろうか。
二人は喜んで湯船に入った。
考えてみれば子供と一緒に風呂なんて初めてだ。
灯里が髪を洗う横で、二人は湯船で洗面器を裏向きに湯に沈めて持ち上げるという遊びをしている。そうそう、けっこう重いんだよな。それで”ぱかっ”って持上るのが楽しいんだっけ。昔、風香とそんな遊びをしたことを思い出す。
順番に二人の髪と体を洗ってやり、初めて触れる子供の裸の頼りなさに驚いた。あんなに元気に走り回っている体はこんなに細いのか。
小さな体につまったパワーに灯里は不思議な気分になる。
風呂上り、まだ暑がって裸のまま扇風機にあたる二人は「わー」と言い合っては音の振動を楽しんで弾けるように笑っている。
頭痛薬のおかげか風呂で体を温めたのがよかったのか、体調はよくなったがビールはやめておく。
バーベキューやおやつであまりお腹が空かないというので、夕食はそうめんで簡単に済ませた。
松岡がしていたように歯磨きをして、寝る前はまた絵本タイムだ。二人はすっかり灯里の膝がお気に入りになって、順番に座って絵本を読んでもらうようになっていた。
きょうはこれ、と玲雄が選んだのは『タルトくんとケーキのたね』。
「ええなあ、ケーキのたね」
「きょうの森にあるかもしれへん」
「ほんなら、あしたさがしにいこ」
「そうやな。さがしにいこか」
子供って現実と絵本の境界ってあるのかないのか。トトロも見たって言ってたし、きっとまだサンタも信じてるんだよな?
灯里は微笑ましく二人を眺めて『エルマーのぼうけん』を手に取った。
「じゃあ、きのうの続きな」
『エルマーのぼうけん』を読み始めると、二人はわくわくした顔で耳を傾ける。けれども数ページ読み終わる頃には、こっくりこっくり頭が揺れていた。
昼間、たっぷり遊んで疲れたのだろう。そのまま抱き上げて布団に寝かせ、本日終了とつぶやいた。きょうも無事に眠ってよかったとほっとした。
夜中に夢見て泣いたりしないといんだが。
スマホが震えたので見ると、松岡から体調を心配するメールだった。
心配ないと簡潔な返信をしておく。
また松岡が来ると思うと憂鬱だった。大友の件で貸し一つと言われてしまったし、どんなことを要求されるのか考えるとため息が出た。
唯一の救いは大友と切れたことだろうか。実感はまったくわかないが、別れてみて思うのは、今でも不思議と嫌いじゃないと言うことだった。
仕事上で尊敬する部分があるからか、色々学んだことが多いせいかもしれない。大友とつき合っていなかったら、灯里のいまの社会人としての立場はなかった気がするのだ。
彼の熱意やアイデアや仕事のやり方に触発されて、必死について行こうと頑張った成果が今の自分を作っている。こうして考えると大友とつき合って得たものは意外に大きい。
そんな自分が大友に幸せになって欲しいと思うのはおこがましいだろうか。
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