家出令嬢が海賊王の嫁!?〜新大陸でパン屋さんになるはずが巻き込まれました〜

香月みまり

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危険な男

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「っなんでよ!あなたの素性くらい黙ってるわよ!新大陸に行けばそんな事関係ないわけだし!」

彼からの宣告は全く受け入れられない、身勝手なもので、私は迷わず噛みついた。

「信用できるかよ。それにお前は追われる身なのだろう?もし新大陸で家の連中かアドレナードの奴に見つかったらどうなる。お前の身柄は国に戻される恐れがあるのだぞ?」

彼から返って来た言葉は至極真っ当な答えで、確かに私が連れ戻されることになれば、おそらく私がどのようなルートで新大陸に渡ったのかは疑問視されるだろう。

彼にとって、私を放逐するのは、自分の首を絞めかねないという事だ。

コクリと唾をのむ。
そうであるならば、私がここから穏便に抜け出せる可能性は皆無だ。

私の表情を見て、彼はつぶさに私の考えを理解したらしい。
小さく「すまんな」と呟いて、組み敷いた私の上から上体を起こした。

ようやく、この組み敷かれた姿勢から解放されるそう思った矢先、私を見下ろす彼の双眸と視線が合った。
その目は、先ほどまでとはなんだか違う、怪しげな光を放っていて。

ゆっくりと戸惑い気味に彼の手が伸びてくると、私の首筋に触れて、頬を撫でる。
初めて人にそんな風に肌に触れられて、ぞくりと背筋が震える。

「久しぶりにこんな白い肌を見たな」

魅入られたようにこちらを見下ろす彼が、ため息交じりにそう呟いた。


「っ何を!」
本能的に身の危険を感じた私は、慌てて服の襟元を持ち上げて、彼の手から逃れようと身を捩るも、腰をしっかりと彼の膝に固定されてしまって思うように動けない。
私の抵抗に彼は全く動じる様子もなく、ゆったりと私の肌を撫でる手は止まることはない。

「ん、久しぶりの綺麗な肌だな。少し味合わせろ」

それどころか、もう一度上体を倒して私に覆いかぶさるようにすると、私の耳元で低く強請るような甘い声で囁くのだ。

「やぁ!」
初めて男性のそんな声と吐息を間近に聞いた私はびくんと肩を揺らして、首を振る。

「甘い匂いがするな。本当にいいとこのお嬢さんなわけだ。こんなお綺麗な香り漂わせて女一人で船旅なんて・・・俺達が乗り込まなくても、お前危なかっただろうな」

「ん、くっ」

チュウっと耳に吸い付くように口付けられて、私は小さく呻く。
言われていることの大半が頭に入っては来ないけれど、なんとなく彼が私の香りに当てられている事だけは分かった。
香りなんて特別な事は何もしていないのに、それでもやはり屋敷で使われている石鹸や化粧道具にはそうしたものがはいっていたのかもしれない。

彼がどこかを触るたびに、ピクリピクリと身体を揺らす私に彼は、ほうっと息を漏らす。

「感度いいのな・・・こりゃぁあの親父は随分喜んだだろうな」
あの親父・・・それが指すものが、誰なのか。脳裏にでっぷりと太って薄ら笑いを浮かべて私を見る。アドレナード公爵の姿が思い起こされて。

ぞくっと背筋が冷えた。


「ん?鳥肌立ったな、面白れぇ。」
そんな私の反応を楽しむように彼がくつくつ笑った。
なんだか、彼にいいように弄ばれて楽しまれているような気がする。

そうしている内にゆったりと頬を撫でた手が、顎に降りてきて、顎を持ち上げられると

唇が重ねられた。

思わず手足をばたつかせるけれど、両手はすぐに彼によって掴まれてしまい、抵抗すらできない。

ゆっくりと唇を味わうような柔らかな刺激はもちろん生まれて初めて経験することで、どうしてこういう展開になってしまったのか全く理解のできない私は、ただただ呆然と彼を見上げるしかできなかった。
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