7 / 72
危険な男
しおりを挟む
「っなんでよ!あなたの素性くらい黙ってるわよ!新大陸に行けばそんな事関係ないわけだし!」
彼からの宣告は全く受け入れられない、身勝手なもので、私は迷わず噛みついた。
「信用できるかよ。それにお前は追われる身なのだろう?もし新大陸で家の連中かアドレナードの奴に見つかったらどうなる。お前の身柄は国に戻される恐れがあるのだぞ?」
彼から返って来た言葉は至極真っ当な答えで、確かに私が連れ戻されることになれば、おそらく私がどのようなルートで新大陸に渡ったのかは疑問視されるだろう。
彼にとって、私を放逐するのは、自分の首を絞めかねないという事だ。
コクリと唾をのむ。
そうであるならば、私がここから穏便に抜け出せる可能性は皆無だ。
私の表情を見て、彼はつぶさに私の考えを理解したらしい。
小さく「すまんな」と呟いて、組み敷いた私の上から上体を起こした。
ようやく、この組み敷かれた姿勢から解放されるそう思った矢先、私を見下ろす彼の双眸と視線が合った。
その目は、先ほどまでとはなんだか違う、怪しげな光を放っていて。
ゆっくりと戸惑い気味に彼の手が伸びてくると、私の首筋に触れて、頬を撫でる。
初めて人にそんな風に肌に触れられて、ぞくりと背筋が震える。
「久しぶりにこんな白い肌を見たな」
魅入られたようにこちらを見下ろす彼が、ため息交じりにそう呟いた。
「っ何を!」
本能的に身の危険を感じた私は、慌てて服の襟元を持ち上げて、彼の手から逃れようと身を捩るも、腰をしっかりと彼の膝に固定されてしまって思うように動けない。
私の抵抗に彼は全く動じる様子もなく、ゆったりと私の肌を撫でる手は止まることはない。
「ん、久しぶりの綺麗な肌だな。少し味合わせろ」
それどころか、もう一度上体を倒して私に覆いかぶさるようにすると、私の耳元で低く強請るような甘い声で囁くのだ。
「やぁ!」
初めて男性のそんな声と吐息を間近に聞いた私はびくんと肩を揺らして、首を振る。
「甘い匂いがするな。本当にいいとこのお嬢さんなわけだ。こんなお綺麗な香り漂わせて女一人で船旅なんて・・・俺達が乗り込まなくても、お前危なかっただろうな」
「ん、くっ」
チュウっと耳に吸い付くように口付けられて、私は小さく呻く。
言われていることの大半が頭に入っては来ないけれど、なんとなく彼が私の香りに当てられている事だけは分かった。
香りなんて特別な事は何もしていないのに、それでもやはり屋敷で使われている石鹸や化粧道具にはそうしたものがはいっていたのかもしれない。
彼がどこかを触るたびに、ピクリピクリと身体を揺らす私に彼は、ほうっと息を漏らす。
「感度いいのな・・・こりゃぁあの親父は随分喜んだだろうな」
あの親父・・・それが指すものが、誰なのか。脳裏にでっぷりと太って薄ら笑いを浮かべて私を見る。アドレナード公爵の姿が思い起こされて。
ぞくっと背筋が冷えた。
「ん?鳥肌立ったな、面白れぇ。」
そんな私の反応を楽しむように彼がくつくつ笑った。
なんだか、彼にいいように弄ばれて楽しまれているような気がする。
そうしている内にゆったりと頬を撫でた手が、顎に降りてきて、顎を持ち上げられると
唇が重ねられた。
思わず手足をばたつかせるけれど、両手はすぐに彼によって掴まれてしまい、抵抗すらできない。
ゆっくりと唇を味わうような柔らかな刺激はもちろん生まれて初めて経験することで、どうしてこういう展開になってしまったのか全く理解のできない私は、ただただ呆然と彼を見上げるしかできなかった。
彼からの宣告は全く受け入れられない、身勝手なもので、私は迷わず噛みついた。
「信用できるかよ。それにお前は追われる身なのだろう?もし新大陸で家の連中かアドレナードの奴に見つかったらどうなる。お前の身柄は国に戻される恐れがあるのだぞ?」
彼から返って来た言葉は至極真っ当な答えで、確かに私が連れ戻されることになれば、おそらく私がどのようなルートで新大陸に渡ったのかは疑問視されるだろう。
彼にとって、私を放逐するのは、自分の首を絞めかねないという事だ。
コクリと唾をのむ。
そうであるならば、私がここから穏便に抜け出せる可能性は皆無だ。
私の表情を見て、彼はつぶさに私の考えを理解したらしい。
小さく「すまんな」と呟いて、組み敷いた私の上から上体を起こした。
ようやく、この組み敷かれた姿勢から解放されるそう思った矢先、私を見下ろす彼の双眸と視線が合った。
その目は、先ほどまでとはなんだか違う、怪しげな光を放っていて。
ゆっくりと戸惑い気味に彼の手が伸びてくると、私の首筋に触れて、頬を撫でる。
初めて人にそんな風に肌に触れられて、ぞくりと背筋が震える。
「久しぶりにこんな白い肌を見たな」
魅入られたようにこちらを見下ろす彼が、ため息交じりにそう呟いた。
「っ何を!」
本能的に身の危険を感じた私は、慌てて服の襟元を持ち上げて、彼の手から逃れようと身を捩るも、腰をしっかりと彼の膝に固定されてしまって思うように動けない。
私の抵抗に彼は全く動じる様子もなく、ゆったりと私の肌を撫でる手は止まることはない。
「ん、久しぶりの綺麗な肌だな。少し味合わせろ」
それどころか、もう一度上体を倒して私に覆いかぶさるようにすると、私の耳元で低く強請るような甘い声で囁くのだ。
「やぁ!」
初めて男性のそんな声と吐息を間近に聞いた私はびくんと肩を揺らして、首を振る。
「甘い匂いがするな。本当にいいとこのお嬢さんなわけだ。こんなお綺麗な香り漂わせて女一人で船旅なんて・・・俺達が乗り込まなくても、お前危なかっただろうな」
「ん、くっ」
チュウっと耳に吸い付くように口付けられて、私は小さく呻く。
言われていることの大半が頭に入っては来ないけれど、なんとなく彼が私の香りに当てられている事だけは分かった。
香りなんて特別な事は何もしていないのに、それでもやはり屋敷で使われている石鹸や化粧道具にはそうしたものがはいっていたのかもしれない。
彼がどこかを触るたびに、ピクリピクリと身体を揺らす私に彼は、ほうっと息を漏らす。
「感度いいのな・・・こりゃぁあの親父は随分喜んだだろうな」
あの親父・・・それが指すものが、誰なのか。脳裏にでっぷりと太って薄ら笑いを浮かべて私を見る。アドレナード公爵の姿が思い起こされて。
ぞくっと背筋が冷えた。
「ん?鳥肌立ったな、面白れぇ。」
そんな私の反応を楽しむように彼がくつくつ笑った。
なんだか、彼にいいように弄ばれて楽しまれているような気がする。
そうしている内にゆったりと頬を撫でた手が、顎に降りてきて、顎を持ち上げられると
唇が重ねられた。
思わず手足をばたつかせるけれど、両手はすぐに彼によって掴まれてしまい、抵抗すらできない。
ゆっくりと唇を味わうような柔らかな刺激はもちろん生まれて初めて経験することで、どうしてこういう展開になってしまったのか全く理解のできない私は、ただただ呆然と彼を見上げるしかできなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました
古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
皆様の応援のおかげでHOT女性向けランキング第7位獲得しました。
前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。
恋に落ちたニーナだが、平民の自分が二度と会うことはないだろうと思ったのも、束の間。魔法が使えることがバレて、晴れて貴族がいっぱいいる王立学園に入ることに!
しかし、そこにはウィルはいなかったけれど、何故か生徒会長ら高位貴族に絡まれて学園生活を送ることに……
見た目は地味ダサ、でも、行動力はピカ一の地味ダサ令嬢の巻き起こす波乱万丈学園恋愛物語の始まりです!?
小説家になろうでも公開しています。
第9回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作品
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
子ども扱いしないでください! 幼女化しちゃった完璧淑女は、騎士団長に甘やかされる
佐崎咲
恋愛
旧題:完璧すぎる君は一人でも生きていけると婚約破棄されたけど、騎士団長が即日プロポーズに来た上に甘やかしてきます
「君は完璧だ。一人でも生きていける。でも、彼女には私が必要なんだ」
なんだか聞いたことのある台詞だけれど、まさか現実で、しかも貴族社会に生きる人間からそれを聞くことになるとは思ってもいなかった。
彼の言う通り、私ロゼ=リンゼンハイムは『完璧な淑女』などと称されているけれど、それは努力のたまものであって、本質ではない。
私は幼い時に我儘な姉に追い出され、開き直って自然溢れる領地でそれはもうのびのびと、野を駆け山を駆け回っていたのだから。
それが、今度は跡継ぎ教育に嫌気がさした姉が自称病弱設定を作り出し、代わりに私がこの家を継ぐことになったから、王都に移って血反吐を吐くような努力を重ねたのだ。
そして今度は腐れ縁ともいうべき幼馴染みの友人に婚約者を横取りされたわけだけれど、それはまあ別にどうぞ差し上げますよというところなのだが。
ただ。
婚約破棄を告げられたばかりの私をその日訪ねた人が、もう一人いた。
切れ長の紺色の瞳に、長い金髪を一つに束ね、男女問わず目をひく美しい彼は、『微笑みの貴公子』と呼ばれる第二騎士団長のユアン=クラディス様。
彼はいつもとは違う、改まった口調で言った。
「どうか、私と結婚してください」
「お返事は急ぎません。先程リンゼンハイム伯爵には手紙を出させていただきました。許可が得られましたらまた改めさせていただきますが、まずはロゼ嬢に私の気持ちを知っておいていただきたかったのです」
私の戸惑いたるや、婚約破棄を告げられた時の比ではなかった。
彼のことはよく知っている。
彼もまた、私のことをよく知っている。
でも彼は『それ』が私だとは知らない。
まったくの別人に見えているはずなのだから。
なのに、何故私にプロポーズを?
しかもやたらと甘やかそうとしてくるんですけど。
どういうこと?
============
「番外編 相変わらずな日常」
いつも攻め込まれてばかりのロゼが居眠り中のユアンを見つけ、この機会に……という話です。
※転載・複写はお断りいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる