ヌンアルカディア

貝人

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第2話 虹が見えた

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   あれから10分くらいだろうか、ポンコツナビは泣き続けた。メソメソぐじゅぐじゅと。

 「なっなあとりあえず泣きやめよ。動けば良いんだろ・・・」

『ほっほんどにぃうごいでぐれるんでじゅが? 』

  泣き過ぎだろ、涙声で何言ってるかわからないし。

  でじゅがって何だよ全く面倒奴だな。

「あーほら泣きやめよ。動くからとりあえず先ずはダンジョンの情報寄越せよ」

『あい。先ず一の界の作りはこの部屋と同じ様な石造りです、ダンジョン内では何が起きるかわかりませんので用心してくください終わり』

  素晴らしく簡潔な説明だった。

「おい、終わりじゃねえだろ!  どんなトラップがあるかとか、構造とか、ドロップアイテムとか!  何かこう色々あんだろ! 」

『私今、情報の権限が無いから答えられないんですよ・・・せめて一の界をクリアしてくれないと』

「はあ、まじかよ。手探りかよ・・・せめてマップとかは?     あっナビのお前が覚えられるとかか? 」

『えっ?  無理無理。私物覚え悪いんですよ、残念無念って感じ?  みたいな? 』

  悪びれもなく言いやがった。

「やっぱ行かない」

『ちょっと!  この部屋だけでずっとこんなやり取り続ける気ですか⁉︎ 』

「だって無理ゲー過ぎるし」

『帰りたくないんですか? 』

  帰りたいかかあ、正直どうでも良いな。戻ってもやりたいゲームも無いし、ただのウンコ製造機だしな。

『なっ何てやる気が無い・・・でもダンジョンクリアしたら願いが叶うかもしれないですよ?  多分きっと・・・・』

  嘘で釣ろうとしだしな、コイツ。そんな都合の良い話無いだろうしな。帰れるって話も眉唾だしなあ。

『ゲーム好きなんですよね?  ゲームの世界ですよ!  楽しみましょうよ! 』

「糞ゲーの世界だ、勘違いすんな。良ゲーならやったわ、良ゲーならな」

『何が不満何ですか! 』

「靴、マップ、チートが無い」

『そっそれは・・・』

「そもそも、そんなに帰る事に拘りも無い」

『うっうわああああ!!!  』

「うおっどうしたいきなり・・・・」

『何よ、何よ。もう良いよ、好きにすれば良いじゃんか。私知らない』

  超めんどくせえ、拗ねやがった。煽り過ぎたかな。

「あーわかった、わかりました。とりあえずここから出るよ、一応クリアを目指すよ」

『どうせまた、行かないって言うんでしょ? 』

「行くよ。行くからとりあえずここから出せよ、オシッコしたいし」

『理由がオシッコって酷い・・・』

「生理現象に文句言うなよ」

  まじで小便したい、マップは無いけどマーキング。何つって。

  チョロチョロチョロ

『さっ最低ですよ南原さん・・・・。とりあえず行きますよ?  良いですか? 』

 ちょ待てよ!  今オシッコ出始めだよ。ちょろちょろしてんだろーが。

『ヌンアルカディア一の界スタートですう! 』

  突如身体が浮き上がる

「おいっ!  待てって! 」

  オシッコが止まる気配が無い、俺のオシッコで虹が生まれるファンタジー。

『汚ねえ虹だ』

「喧しいわ! 」



  先ほどの部屋とは違う石造りの場所に飛ばされた。下半身丸出しで。誰にも見られなくて良かった。

  とりあえずズボンを上げる。手を洗えないのが難点だが仕方ない。紙は確保したいな、尻を拭くように。

「なあ、何で明るいんだ?  見た感じ電気も無いのに」

『さあ?  多分ダンジョンの魔力とかなんかじゃないですか?  多分』

  ポンコツナビに聞いた俺が間違いだった。

「手探りで進むにしても、目印が欲しいな」

  手頃な石を探し、壁に傷をつけると

「なっ自動修復付きかよ・・・」

  松明無双とかできるのかな、耐久値とか分からないけど。

『プププ当たり前じゃないですか!  どんなゲームだってダンジョンの壁は壊せない、これ常識じゃないですか。本当にゲーマー何ですか? 』

  糞、ポンコツナビめ。ただまあ仕方ないゲームでは良くある事だ。こいつはちょいちょいゲームに例えて来る、多分宝箱的なアイテムや、あまり考えたくないがモンスターもいるんだろう。

「とりあえず真っ直ぐしか進めないし行くか・・・」

  トボトボと俺は歩き出す。

「あー疲れた、もう無理、動けない、動きたく無い」

『ちょっと南原さん、早くないですか?  まだ100mも進んでませんよ? 』

「引きニート舐めんな、100mも歩いたら俺死んじゃうよ・・・」

  足がめちゃくちゃ震えてきやがる。こんなに歩いたのは中学以来だ。

『死にませんって!  頑張りましょう!  私応援しますから!   ファイオー!  ファイオー! 』

「お前なあ・・・・」

  少し休んだし、ポンコツナビのありがたく無い応援も、五月蝿いから歩くか。

  少し進むと青いゼリー状の物体が目の前に現れた、あれ?  どっから現れた?

「まっまさか魔物か?  捕食されちゃうパターンか?  男の服が消えるとか誰得だよ! 」

  やばい、スライムで俺のぽろりがピンチだ。

『最弱のスライム相手にビビり過ぎじゃないですか?  まさか虫も殺せない系男子とか? 』

  顔が見えなくてもわかる、こいつ絶対やれやれだぜ的な顔してやがる。なっ殴りてえ。

「虫くらいやれるわ!  でも石くらいしか無いし、くっ糞喰らえ! 」

  海斗は石を投げた、スライムに当たらなかった

『ノーコン過ぎません? 』

  ポンコツナビからも呆れられる始末

「くっそお!  こうなりゃやけだ! 」

  スライムに接近し、殴る、殴る!  連続パンチだ!

  スライムの反撃、俺の股間に大ダメージ

「ぐっうおお・・・・股間はだめだろ・・・」

『うわあ、痛そ。股間への打撃ってそんなに痛いんですか?  私ついてないから分からないなあ』

  このポンコツめ!  痛いに決まってるだろ、お前だって腹パンされたら痛いだろ、腹パンの50倍のダメージだぞ

「息子の恨み!  きええええ!」

  俺は般若の形相でスライムを殴りまくった。股間の恨みはらさでおくべきか!

  連打していると、突然スライムが丸い石を残して消えた。

  頭の中にピコンと音が響く。

『やりましたね!  スライムを倒しましたよ! 』

「それより、何か頭の中に音が・・・」

『レベルアップですよ!  おめでとうございます! 』

  ポンコツナビが大興奮しているがそれどころじゃ無い

「レベルの概念あるのかよ・・・・」
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