座敷わらしの恋

みん

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1.はじめての撮影

8撮影2

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「ぁは、は、は、はあ」


 達してなお快感の波が引かない体をベッドに預ける。


(まだ、カメラまわってる……)


 一度では駄目なのだと、思考の定まらない中、震える腕で体を起こした。


「ふ……」

 
 なんとか膝立ちになり、ほぼ脱げていたバスローブをベッドの下に落とす。

 ほんのり色付いた白い体に、足の間で未だゆるく立ち上がるペニス。
 カメラに正面から映っているのを確認して、雪也はボクサーパンツをずり下げた。

 カメラの前で初めて雪也の全貌が明らかになる。

 恥ずかしさよりも何よりも、白い粘着質な液体がぬちゃぬちゃと纏わりつく様が、酷く背徳的だった。


「イっちゃ、った」


 自らの出した白濁を指で救い、ぺろりと舌で舐め上げる。
 苦味に少しだけ眉を顰めて、視線はカメラの後ろの松永に定めた。

 驚いたように見開かれた松永の視線が、雪也から逸らされることはない。
 雪也は満たされた気持ちで微笑んで、下肢に手を伸ばした。


「ん、もっ、と……」


 左手でペニスを支えて、右手の人差し指を鈴口に宛がう。
 そのままくるくると刺激して、雪也は再び熱い吐息を漏らした。


「あは! ぁ、あ、あ、ぁあ!」


 左手も上下に動かして、両手でペニスを弄ぶ。
 ひたすらに快感を貪って、雪也はその刺激に身を委ねた。


「ぁ! い、く……っ、いく、いく、い、く!」


 思い切りペニスを扱きあげる様が、カメラに収められていく。
 右手で乳首を捻りあげると、脳天に快感が突き抜けた。


「あ、あああああ……っ!」


 膝ががくがくと痙攣する。
 立ったままの体勢を維持できず、背中側に右手を付いて体を支えた。
 雪也の下腹部が前に突き出して、背中が反る。
 顔だけはカメラに映るようにと首を起こして、一瞬の硬直の後、雪也は吐精した。


「ひ、はひ、……っは、ぁ」


 カメラのレンズに精液がかかっている。

 それを胡乱げに見つめた雪也は、肩で息をしながら四つん這いで目の前のカメラまで這った。

 そのレンズの白濁は、松永の前で雪也が淫乱になった証。
 自らの吐き出した浅ましい欲望を、雪也は丁寧に舌で舐めとった。


「も、っかい……する?」


 沈黙を打ち破ったのは、規則的な電子音。
 撮影は、終わった。


 そのまましばらくの間。
 疲れ切った雪也も、カメラ越しの松永もスタッフも、時が止まったように動かなかった。


「……あ、タオル、タオルを」
「……ありがと」
「……! チェックを!」

 スタッフの声に静寂が色を取り戻す。
 雪也がタオルを受け取ると、坂本がスタッフにチェックの指示を出した。

 忙しなく動くスタッフを横目に、雪也はベッドに体を預けてただぼーっと松永を見ていた。

 自分を見て松永はどう思ったのか。
 淫乱だと、思ってくれただろうか。
 少しでも松永の助けになったと。

 松永は、褒めてくれるだろうか。

 動かない松永を見て、雪也は期待を込めた眼差しを床に沈めた。

 これは自己満足だ。
 期待しなければ、傷付くこともない。
 そもそも雪也は松永に知覚されずとも、松永のそばにいるだけで良かったのだから。

「雪也」

 ぽん、と頭に受けた衝撃。

「……?」

 ゆっくりと顔をあげると、雪也の頭に手を置いた松永が、優しい微笑みを浮かべていた。

 思わず瞳が揺れる。


「お前……後ろは触らないんだな」


 雪也はへらへらと微笑んで、胸の中に滲んだ暖かさを押し込めた。


「……触ったら、もっと、したくなっちゃうじゃん。触った方が良かった?」


 それをあなたが望むなら、いくらでも触るけれど。


「……いや、十分だ。今日の撮影は終わりだよ。……よくやった、雪也」


 再び頭を撫でられて、雪也は今度こそ体から力を抜いた。


「よか、……た」


 スタッフの撤収の声と焦ったような松永の気配を感じながら、雪也はゆっくりと意識を飛ばした。

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