座敷わらしの恋

みん

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3.新たな日常

21二度目の撮影

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「雪也」


 隣から呼ばれて澤井に視線を合わせる。
 恋人同士と錯覚させるような甘い空気だ。
 松永からの視線も感じて、ほんのりくすぐったい気持ちになった。


「ちゅーしよっか」


 雪也の指に指を絡めながら澤井が下から伺うように見つめてくる。
 滲み出る恥ずかしさをおさえて、雪也は目を逸らしながらも小さく頷いた。
 澤井の手が頬に添えられる。
 次の瞬間にはそっと顔を引き寄せられて、唇が触れ合った。
 近寄ってきたカメラよりもその向こうの松永を意識してしまう。
 雪也の体は少しだけ逃げた。


「ん」


 思わず漏れた声も澤井の唇に簡単に飲み込まれてしまう。
 最初は触れるだけだった唇は、だんだん深くなった。
 松永の目の前で松永でない男にゆっくりと食べられている。
 その背徳感に塗れた感覚は、痺れるような快感となって雪也を誘った。


「はぁ、ん……」


 後頭部から差し込まれた澤井の手に、やんわりと髪の毛を掻き回される。
 澤井が力をいれた分体が密着して、唇の合わせが深まった。
 耳朶を撫で、頬をなぞる指が徐々に性的な色を増す。
 背中を滑りシャツに侵入した澤井の掌に、雪也はびくんと体を震わせた。


「ぁ……」
「可愛い、雪也。もっと見せて」


 背中に触れた布団の感覚にすら反応してしまう。
 自分の表情は酷く蕩けていることだろう。

 下から見上げた男の顔が、雪也の見たことのない松永の顔と重なった。
 松永もこんな顔で自分を抱くのだろうか。


(そんな、想像……駄目なのに……)


 理性と裏腹に目が松永を探してしまう。
 照れたように見せかけて雪也は視線を澤井から逸らした。


(あ……どうして……)


 急激に体に熱が籠るのがわかる。
 逸らした顔の先では、松永の視線が自分を捉えていた。


「み、て……、俺の……」


 その視線に促されるままにシャツをたくし上げて、雪也は松永を見つめたまま胸を澤井に差し出した。


(見てる、松永さんが、見てる……)


 ぎゅっと目を閉じると、澤井は指を雪也の胸に滑らせた。
 息を呑む間もなく、慎ましく立ち上がった両方の乳首が軽やかに弾かれる。


「あっ、や……っ」
「気持ちいい? もっと触ろうか」
「ん、ん……っ、声、出ちゃうぅ……っ」
「出しなよ、全部聞いてあげる」


 楽しげな澤井の声が耳を犯す。
 閉ざされた瞳の中では、雪也の目の前の男はすでに松永だった。
 空想の松永の舌と指先で弄ばれて、雪也はにべもなく喘いだ。


「ん、ん、んんん……っ」
「どうしたの? 雪也、もじもじしてる」
「あ……っ」


 その刺激に目の中の松永が霧散する。
 澤井の指先が触れたのはジーンズのファスナー部だった。
 胸への刺激だけでゆるく勃ち上がったそこが布地を押し上げている。
 澤井は興奮したように舌で唇を舐めると、爪先で合わせ目をかりかりと引っ掻いて雪也を焦らした。


「あ、や、やぁ……っ触って、ほしい、です……っ」
「んー? 触ってるよー?」
「ちが……っ、ふぇ、ちょくせつ、さわって……っ」


 目の端にじわりと涙が滲んだ。
 知らず知らずのうちに腰が揺れて、この先に待つ快感を求めてしまう。
 浅ましい、淫乱な、雪也の体。

 でも、その体を松永が見ている。

 雪也はぶるりと身を震わせた。


「雪也はえっちだなぁ~……いいよ、さわるね」
「んっ」


 ゆっくりと下ろされたファスナー。
 丁寧に足を開かされて脱がされたジーンズ。

 そこではしっとり濡れた陰茎が下着を押し上げていた。


「もう濡れてるね……」
「あっ」


 澤井の指先が布越しに先端を撫でる。
 抑えきれなかった声が、空間を跳ねた。


「ほら、見て」


 促されるままに視線を向けると、澤井の指先と布地の間は糸で結ばれていた。
 羞恥で思わず目を伏せる。


「虐めたくなっちゃう顔しちゃって……」
「あっ、あっ」


 下着の上からぎゅっと熱棒が握られ、布ごと下にスライドされる。
 摩擦と勢いで布が外れ、隠された欲望が空気に曝された。


「ぁう……っ」
「固くて、びくびくしてる……気持ちいいの?」


 続け様に澤井の指先が輪を作り、滑らかな動作で手を上下させる。
 それが亀頭に引っかかる度に止められない快感が走って、雪也の腰はびくびくと跳ねた。
 追い上げるように徐々に早まる動きに、思考がどんどん侵されていく。


「出したい、……イきた、いぃ……っ」
「ええー? もう? 駄目だよ、イきたかったら、俺をイかせて?」


 服を全部脱ぎ捨てた澤井が、雪也の顔を跨ぐ。
 膝立ちになった澤井は、喘ぐ雪也の口元に剛直を突き付けた。
 導かれるようにその先端に唇を寄せる。
 ぱくりと咥えると、澤井は雪也の頭を一度だけ撫でた。


「ん、いい子……」
「……はぁ、ふ、……んぅ」


 澤井によって押さえられている手がじんじんと甘く痺れる。
 舌だけで竿をなぞり、時折り唇で扱いては目の前の雄を味わった。


「んむ」


 口内に雄を受け入れ、不自由な頭を前後する。
 その喉奥はまだ澤井の形に馴染んでおらず、迎え入れる度に息が詰まって軽くえずいた。


「っ、雪也、上手だね、気持ちいいよ」
「ん、んん、ぐ、ぅ、ん……っ」


 口から体の中を暴かれている。
 澤井は雪也の喉奥を味わうように腰をスライドさせた。
 喉を抉られるタイミングで喉の奥から断続的な呻きが漏れ、生理的な涙が滲む。

 これも全て、カメラと松永に見られているのだ。
 雪也の喉奥は意図せず締まった。


「口に、出すから、ね」
「ぐ、……っ、っ、ん、っ」

 
 側頭部を両手で挟んで固定した澤井が、吐精に向けて腰の動きを早める。
 胸をのけ反らせて、背中が弓なりにしなった。
 息苦しさから体に力が入って踵が上がる。
 膝を立てて開かれた両足の間で、自らの陰茎が存在を主張するかのように揺れていた。

 そして。


「の、ん、で……っ」
「っ、!」


 澤井は腰をぴったりと雪也の口元に押し付けて、その精を雪也に注いだ。
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