座敷わらしの恋

みん

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3.新たな日常

23二度目の撮影3

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「ゆっくり挿れるよ」
「んっ」


 ディルドが雪也の後孔をそっと押し広げ、その縁を捲りながら進んでいく。
 僅かな隙間につるりと先端が飲み込まれて、雪也は短く息を吐いた。
 慣れ親しんだ感覚。
 内臓を押し広げられる圧迫感の先に脳が焼き切れるほどの快感があることを、雪也の体はすでに知っている。

「ふ、ふぅ……ん、んっ」

 雄の形を模した棒の、笠に張った部分までが差し込まれ、くぷりと飲み込むとすぐに引き戻される。
 呼吸を合わせることで快感に飲まれまいと抵抗するも、窄まった縁に太い部分が引っかかる度に、雪也は体を跳ねさせた。


「はっ、ぁっ、あっ、」
「気持ちいい?」
「んっ、もっと、奥、きて……」


 雪也の返事に、澤井の目がきゅっと細められた。
 次の瞬間、ディルドで入り口を勢いよく掻き回される。
 突然の衝撃に喉がのけ反った。


「ぃあ!」
「違うでしょ? 気持ちいいかって聞いてるの」
「ふぁ……きもちい、です……っきもちいぃぃぃ」


 頭がどうにかなってしまいそうだ。
 とろとろに蕩けた雪也の顔を、松永が見ている。
 それだけで意識が飛んでしまいそうなのに、澤井から与えられる快感は雪也に逃げを許さない。


「アッ! そこ、だめ……っ!」
「えー? 駄目じゃないでしょ? 雪也の気持ちいいところだよー」
「ま、って! やっ、あああ……っ」


 前立腺に添えられたディルドが、容赦なく雪也を追い詰めていく。
 抉るリズムに合わせ雪也の陰茎も反応を返した。
 強制的に快感を与えられて、足を抱えていた腕が外れる。
 雪也の足がシーツを蹴った。
 すがる先のない腕が必死に枕を抱き寄せる。
 生理的な涙がいくつも染み込んでは消えていった。


「ふぇ、……っあ、ぅ、う……っ」
「こーら、声我慢しちゃ駄目だよ」


 噛み締めた雪也の唇を澤井の舌がこじ開けるように辿る。
 喘ぎは絡め取られて、澤井に飲み込まれていった。

 これも全て聞かれているのだ。
 他でもない松永に。

 そう思うだけで、息継ぎの合間に漏れる声はどんどん甘さを増していく。


「……はっ、ふ……っ、んっ」
「中、蕩けてきたね、もっと奥行くよ」


 角度を変えたディルドが、雪也の奥を目指して進む。
 雪也が長く息を吐くと、凶器はずぶずぶと中に沈んでいった。
 目の前に星が飛ぶような快感に、息が追いつかない。
 そしてディルドは半ば進んだところで侵入を阻まれた。


「んあっ」
「あれ、雪也って直腸短いのかな、もう最初の壁来ちゃった」


 腸の形に添わされたディルドが、雪也の奥を叩く。
 突き当たりの手前の腸壁に、先端が跳ね返り、雪也の脳を揺らした。

 すでに快感を通り越して拷問に近い。
 しかし、今の雪也には喘ぐことしか出来なかった。


「あっ! あ、らめ! も、奥、おくだか、らあああ!」
「まだ入る入る。ここ抜けて、くぽくぽしたらもっと気持ちいいよ」


 澤井によって暴いてはならないところが暴かれようとしている。
 その恐怖と強すぎる快感が雪也の理性を奪っていった。

 ゴム製の弾力をもって何度も最奥を突かれ、髪を振り乱して喘いだ。
 顔はもうぐちゃぐちゃだ。
 それでもなお澤井の責めは止まらなかった。
 快感と恐怖に慄きながらも、雪也はただ受け入れることを選ぶしかない。


「あっそんな、奥きたらぁっ! くぽって、くぽって入っちゃうぅ……っ」
「うん、奥でくぽくぽしようね。気持ちよくなろうね」


 ぐ、と澤井の手に力が込められ、ディルドの先端が壁を潜り抜ける。
 内臓の収縮を無視して突き入れられたそれに、雪也の背中は弓なりに反った。


「ひぃう……っ、っ、っ、……っ!」


 声も出せないほどの衝撃。
 雪也は目を見開いて唇をはくはくと開閉させた。
 中に馴染むまで手を止めた澤井が、雪也の腹を優しく撫で上げる。
 息が整った頃、澤井は続きをしても良いか問うような顔で雪也の腹を指先でちょいとつついた。

 気遣われている。
 こんなときでもその一瞬がとても嬉しい。

 承諾の返事の代わりに澤井の指に自らの指を絡める。


「……手……、握って?」


 本当に握りたいのは松永の手だけれど。
 同じ空間にいるのに、こんなにも遠い。

 松永に手を伸ばしたい気持ちを抑えて、雪也は澤井を下から見上げて微笑んだ。


「うん、いいよ」


 強張りの取れた雪也が、大きく息を吸う。
 澤井は空いた手でディルドを掴んで、軽くその手を引いた。


「ひぅ!」


 腸の襞にディルドの亀頭が引っ掛かり、雪也の体が大きく跳ねる。
 腹の上で握った手を白くなるほどに握り込む。
 澤井は安心させるようにぎゅっと握り返してくれた。


「もう一回、いれるね」
「ああああ……っ」


 のけぞった喉が、悲鳴のような嬌声を紡ぐ。
 快感に打ち震える太腿が、じたばたとシーツを掻いた。
 今にもはち切れそうにそり立った陰茎が、ふるふると震えながら天を向いている。
 澤井はその先端に息を吹きかけ、雪也の快感を煽った。


「も、でちゃ、でちゃう……っ」
「そうだね、そろそろ出そっか」


 言うが刹那。
 澤井は雪也の中に埋まったディルドを激しく抜き差しして、雪也を果てへと導いた。


「ぃ、ああああ……っ! い、く……っ、い、くいくいくいくい、ああああ!!!」


 そして雪也はそのままの姿勢で白濁を吐き出した。


「よく出来ました」


 澤井がずるりとディルドを引きずり出して雪也の頭を撫でる。
 続いて澤井に抱きしめられて、雪也の二度目の撮影は終了した。



「雪也!」


 全身で息をしながらベッドに沈んでいると、大した距離でもないのに半ば駆け足で松永が側にやってきた。
 意識がふんわりとしたまま、漠然と松永を認識する。
 定まらない焦点で松永の顔を捉えようと視線を彷徨わせると、覗き込んだ松永と視線が絡んだ。
 両耳の横に松永の腕がある。
 顔が驚くほどに近い。
 澤井やスタッフのざわめきが聞こえたが、胸の鼓動がうるさくてちっとも気にならない。

 松永が、自分見ている。


「あ……」
「雪也」


 はっきりと松永を認識すると、思わず目尻から涙が溢れた。

 上手に出来た?
 あなたのためになった?
 あなたのために、淫乱になれたでしょうか?

 言葉を紡ごうと唇を開閉しても、思いばかりが募って形にならない。


「……上出来だ。よく頑張ったな」


 松永の右手が労るように雪也の頭を撫でた。

 澤井に褒められたときとは比べものにならない感情が胸の中を吹き荒れる。

 嬉しい。
 その想いと共に、罪悪感ばかりが募っていく。

 松永のためと言いきかせながら、結局はその後に来る松永からのご褒美を求めている自分が許せない。
 見返りなど何も気にせず、ただ体を差し出すだけの存在にどうしてなれないのか。


「へへ……っ」


 雪也はすべてを誤魔化すようにふにゃんと笑った。
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