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第五話
弔い
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朝靄が、ゆっくりとヨンクの街に降りてくる。
焼けた街並みに、柔らかな光が差し込む。
焦げた木々。崩れた家屋。煤にまみれた石畳のあちこちに、まだ夜の冷気が残っていた。
俺は、ノーラと肩を並べて歩いていた。
街の中央に作られた、臨時の広場。
そこに、亡くなった者たちの名前が刻まれた板が立てられている。誰かが拾ったのか、花の一輪が添えられていた。
祈りを捧げる者も、涙を堪える者もいた。声はなかった。ただ、皆が静かに向き合っていた。
「……見守ってくれていた人たちなんですね」
ノーラの声が風に溶ける。
「逃げ遅れた人たちが、自ら残ることを選んだそうだ。子供を背負って逃がしたり、自分の家を道しるべにしたり……その証言が、何件もあった」
俺の声が、少し震えたのを自覚していた。
「守りきれなかった命もある。でも、それでも、誰かの勇気が今の命に繋がってる」
ノーラはそっと膝をつき、花を手向けた。
「どうか、安らかに」
その祈りに、心の奥が締め付けられるような痛みを感じた。
誰かを失うのは、これが初めてじゃない。
だが……今回は違った。
街が壊れた。人が死んだ。それでもヨンクは生きている。
それは、ノーラが戻ってきてくれたからだ。
治療所で命を救い、俺の命を救い、そしてこの街の希望を繋いでくれた。
「……ノーラ」
俺は呼んだ。彼女が顔を上げて、まっすぐにこちらを見る。
「俺はずっと、戦うことで守ろうとしてた。街も、民も、お前も……そのために力を使ってた」
「……はい」
「けど、あの溶岩の中で、俺が限界に達して動けなくなった時……来てくれたのはお前だった。俺を守ったのは……お前だ」
言葉が震えた。
「だから、もう俺が守るだけじゃ足りない。……一緒に、支え合っていきたいんだ」
ノーラは、驚いたように目を見開き。それから、微笑んだ。
その目には、涙が滲んでいた。
「……はい。私もそう思っていました。私はエルド様をお支えできますか?」
「ああ、ノーラがいなければダメだ。俺は、強く在りたい。でも、同時に……お前と並んで歩ける男でありたいんだ」
彼女は頷き、そっと俺の手を握った。
温かかった。すべてを奪うような夜を越えてなお、こんなにも優しく、力強い。
俺たちは、ここからやり直す。
焼けた街も、亡くなった命も、すべて胸に刻んで。
やり直せる。支え合えれば、きっとまた前を向ける。
「……一緒に帰りましょうか」
ノーラが微笑みながら言った。
焼け残った屋敷が、今は“帰る場所”になっていた。
俺は彼女の肩を抱いて、小さく頷いた。
「……ああ、俺たちのヨンクに」
俺たちはここからやり直せる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あとがき
どうも作者のイコです。
第五話終わりです。
焼けた街並みに、柔らかな光が差し込む。
焦げた木々。崩れた家屋。煤にまみれた石畳のあちこちに、まだ夜の冷気が残っていた。
俺は、ノーラと肩を並べて歩いていた。
街の中央に作られた、臨時の広場。
そこに、亡くなった者たちの名前が刻まれた板が立てられている。誰かが拾ったのか、花の一輪が添えられていた。
祈りを捧げる者も、涙を堪える者もいた。声はなかった。ただ、皆が静かに向き合っていた。
「……見守ってくれていた人たちなんですね」
ノーラの声が風に溶ける。
「逃げ遅れた人たちが、自ら残ることを選んだそうだ。子供を背負って逃がしたり、自分の家を道しるべにしたり……その証言が、何件もあった」
俺の声が、少し震えたのを自覚していた。
「守りきれなかった命もある。でも、それでも、誰かの勇気が今の命に繋がってる」
ノーラはそっと膝をつき、花を手向けた。
「どうか、安らかに」
その祈りに、心の奥が締め付けられるような痛みを感じた。
誰かを失うのは、これが初めてじゃない。
だが……今回は違った。
街が壊れた。人が死んだ。それでもヨンクは生きている。
それは、ノーラが戻ってきてくれたからだ。
治療所で命を救い、俺の命を救い、そしてこの街の希望を繋いでくれた。
「……ノーラ」
俺は呼んだ。彼女が顔を上げて、まっすぐにこちらを見る。
「俺はずっと、戦うことで守ろうとしてた。街も、民も、お前も……そのために力を使ってた」
「……はい」
「けど、あの溶岩の中で、俺が限界に達して動けなくなった時……来てくれたのはお前だった。俺を守ったのは……お前だ」
言葉が震えた。
「だから、もう俺が守るだけじゃ足りない。……一緒に、支え合っていきたいんだ」
ノーラは、驚いたように目を見開き。それから、微笑んだ。
その目には、涙が滲んでいた。
「……はい。私もそう思っていました。私はエルド様をお支えできますか?」
「ああ、ノーラがいなければダメだ。俺は、強く在りたい。でも、同時に……お前と並んで歩ける男でありたいんだ」
彼女は頷き、そっと俺の手を握った。
温かかった。すべてを奪うような夜を越えてなお、こんなにも優しく、力強い。
俺たちは、ここからやり直す。
焼けた街も、亡くなった命も、すべて胸に刻んで。
やり直せる。支え合えれば、きっとまた前を向ける。
「……一緒に帰りましょうか」
ノーラが微笑みながら言った。
焼け残った屋敷が、今は“帰る場所”になっていた。
俺は彼女の肩を抱いて、小さく頷いた。
「……ああ、俺たちのヨンクに」
俺たちはここからやり直せる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あとがき
どうも作者のイコです。
第五話終わりです。
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