〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro

文字の大きさ
33 / 74
アフターストーリー

アフターストーリー第7話 皇弟の恋愛事情

しおりを挟む
(いや~ん、めっちゃモフモフ~。ここは、天国ですか!?何この見渡す限りの毛玉!癒やしの渋滞っ!この子たち、私をキュン死させたいの!?もうキュン死しちゃうぞぉ!あー、もう堪らん!!)

そこに「このご飯あげてみますか?」と、声が掛けられる。エルメが声のする方を見ると、お皿を手にした少しふくよかな女性が立っていた。エルメは当然断る選択肢などなく「まあ、ありがとうございます!是非!」と笑顔を返す。女性はそれにニコっと笑うと、手に持つ皿を渡して去っていった。

エルメは兎獣がお皿から器用に餌を取り出し、ムシャムシャと食べる様子に癒やされながら、内心いまの女性が何者なのかと、首を傾げていた。

(奥さんじゃないし、使用人?にしては、なかなかの貴族っぽい雰囲気をお持ちよね?うーん・・)

そんな至福の時を堪能するエルメを、マリオンとバロンが見守っている。

「彼女、雰囲気が変わったな。可愛くなった」

バロンの突然の告白に「叔父上!何を言うんですか!」とマリオンは焦りと憤りを見せる。

「まあ、そう怒るな・・・結婚式で会った時や兄上に物申した時は、スキのないいかにも王女の雰囲気だったが、今は穏やかで柔らかい」

「やめてください。エルメを見ないでください」

マリオンの言葉に「おやおや・・これはまた・・クックックッ・・」と楽しげに笑いを漏らすバロン。それにマリオンは「彼女との時間を、邪魔する者は例え叔父上でも消します」と物騒なセリフを吐く。それにバロンは、呆れた表情を浮かべた。

「お前、子供ができたらどうするんだ?その勢いだと、子供にも嫉妬しそうだぞ」

「何とでも言ってください」

「彼女も厄介なヤツの妻になったものだな」

バロンの茶化しに「毛だらけの叔父上に言われたくないですね」とマリオンも応戦し、二人の会話は幕を閉じた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


無事に毛玉を返した帰りの馬車の中。マリオンとエルメの声が聞こえる。

「驚いただろう?叔父上は聖獣の前では、別人だからな」

「うん、まあね。でもあんな一面があるなんて、素敵だと思うわ。私、勝手に親近感持っちゃったし、優しい人なんだなって分かった。世のモフ好きに悪い人はいないからね」

「まあ詳しいことは知らんが、大抵の女は叔父上の正体を知ると、一目散に逃げるらしいぞ」

「へえ、そうなんだ。でもあの見目で結婚してないって聞いてたから、実は変な趣味持ちじゃないかとかちょっと心配しちゃったけど、そんな必要なかったわ」

エルメの言葉の意味が分からないマリオンが「どういうことだ?」と口にする。それにエルメは「あのちょっとぽっちゃりした女の人だよ」と答えた。それでも「意味が分からん」と言うので、エルメは呆れた様子で言った。

「もう!男の人ってこういうことには、疎いよね。だってバロン様はあの人のこと好きだよ。それにあの人もバロン様のこと好き。つまり相思相愛ってこと!二人が話してるところ見て、ピーンときちゃった!マリオンは、二人を見て気付かなかったの?」

エルメの問いに「叔父上の色恋など知らん」とマリオンは心底どうでもいい感を出しまくっている。他人の色恋に敏感なのは、いつの時代も女性だというのは変わらぬ真理だ。そんなマリオンに、エルメは口を尖らせる。

「えー!ねえ、あの人何て名前?何であの屋敷にいたの?」

「そんな事、私が知るはずなかろうが・・」

「そんなぁ、マリオンはバロン様が心配じゃないの?」

マリオンの「何を心配しろというのだ」という答えは、どうやらエルメの耳に届いていないらしい。何故なら、マリオンのことなど忘れ、エルメはバロンの恋に頭の中がいっぱいになったからだ。

「いやーん、私キューピットしちゃおうかな」

エルメの楽しげなセリフにギョッとしたマリオンは「余計なことはよせ。当人同士に、任せておけ。横槍をいれると、上手くいくもんも上手くいかん。叔父上もいい歳だ。いいか?絶対に口を出すなよ」と釘を刺す。それに対するエルメの返事は当然拒否だ。

「えー!」

「“えー”じゃない!こらっ、返事!」

「はーい・・つまんないの・・・」

そんな会話を繰り広げる二人を乗せた馬車は、太陽が降り注ぐ日差しの中、人々で賑わう皇都を進んでいった。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】 公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

悪女役らしく離婚を迫ろうとしたのに、夫の反応がおかしい

廻り
恋愛
第18回恋愛小説大賞にて奨励賞をいただきました。応援してくださりありがとうございました!  王太子妃シャルロット20歳は、前世の記憶が蘇る。  ここは小説の世界で、シャルロットは王太子とヒロインの恋路を邪魔する『悪女役』。 『断罪される運命』から逃れたいが、夫は離婚に応じる気がない。  ならばと、シャルロットは別居を始める。 『夫が離婚に応じたくなる計画』を思いついたシャルロットは、それを実行することに。  夫がヒロインと出会うまで、タイムリミットは一年。  それまでに離婚に応じさせたいシャルロットと、なぜか様子がおかしい夫の話。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~

白井
恋愛
「我が伯爵家に貴様は相応しくない! 婚約は解消させてもらう」  枯葉のような地味な容姿が原因で家族から疎まれ、婚約者を姉に奪われたステラ。  土下座を強要され自分が悪いと納得しようとしたその時、謎の美形が跪いて手に口づけをする。  「美しき我が光……。やっと、お会いできましたね」  あなた誰!?  やたら綺麗な怪しい男から逃げようとするが、彼の執着は枯葉令嬢ステラの想像以上だった!  虐げられていた令嬢が男の正体を知り、幸せになる話。

処理中です...