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プロローグ
まさか本の中に転移するなんて_1
しおりを挟む「ふんふん……」
家に帰り、ベッドに寝転がりながら早速買った本を初めから読む。みんなが知っているメジャーな話から、知らない人も多いだろうマニアックな話まで、この本には様々な話が詰められているようだった。
そして、この本は垣根がない。目次をさっと見ると、日本も海外も、関係なく話が収められていた。
知っている話でも書体が変われば雰囲気も変わって違う味わいが出るし、知らない話は知らない話で未知の世界を経験できるようだった。
あっという間に時間が過ぎていく。仕事の帰りにいつもの古本屋へ駆け込み、この本を手に入れた彼女は、食事とお風呂を済ませ自由時間を満喫していた。何物にも代えがたいこの時間は、彼女にとって至福の時間であり、嫌なことを忘れられる大切な時間だった。
「……あれ?」
読み進めていた彼女だったが、ページをめくる指が止まる。お店では表紙と裏表紙、それに目次と最初の数ページしか見ていなかったため、今まで気付かなかったのだが。
この本に収められている話は、導入部分とある程度の盛り上がり部分、説明に近い内容は書かれているものの、その続きが書かれておらず、どの話も中盤から後半がすっぽりと抜けていたのだ。
「……嘘っ……!!」
──あぁ、しまった。なんてことだ。買う前にすべてきちんと確認すれば良かった。と、彼女は頭を抱えた。そうしたら、すぐに気付くことも出来たのに、と。
最初から最後までゆっくりじっくり中身を確認してみたが、印刷ミスや、ページの綴りミス、落丁などと呼べるレベルのものでは無かった。
だって、読みたい部分が綺麗に、それはもう綺麗に真っ白なのだから──。
「……いや、ま、まさか、そういう風に、作られたのかな?」
パラパラと、一度確認したのにも関わらず、彼女はまた全ページ確認していく。
「……もしかして、敢えて続きを白紙にしていて、『この続きは自分で好きなように考えて良い』とか? ……いやいやそんな、まさかねぇ……」
パタン、と諦めて本を閉じ、ふぅ、と、残念そうな表情で小さく溜息を吐いた。
「んぁー……これ、どうしよっかなぁ……」
ゴロゴロとベッドの上で転がる。
そうして気が付くと、すっかり眠ってしまっていたのであった──。
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