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アカズキン(狼×女主/狩人×女主/ヘタレ/擬人化/ロリ)
初めての場所_3
しおりを挟む幸いにも、ノエルの母の書いた文字を読むことが出来た。この辺りの設定は、いい加減なのだろうか。案外、神様も細かい作業? は、面倒なのかもしれない。……それとも、彼女に配慮してくれたのだというのか。
"あー、全然現実味が無い"
もしかして夢を見ているのではないか、と、ノイは思った。そもそも、ウタ自身が自分の夢の産物で、今はその夢の続きだという可能性もある。最近仕事で疲れていて、物語を読むことで小さなストレス発散をしていたから、それが夢に影響したのかもしれない。ウタのしたことは自分の望んだことだとは思いたくなかったが、命の危機が迫ると人間は云々と言うし、たまたまかもしれない。そう一生懸命頭の中で考えていた。
夢かどうか確かめるには、自分の頬を抓ると良い、と、聞くことを思い出し、ノイは自分の頬を割と勢いよく抓った。
「……っぐぅ!? 普通に痛いわ!」
恐らく夢ではないのだろう。もしかしたら、もっと強い刺激だったら、夢の場合は目が覚めるかもしれない。そう頭を過ったが、万が一現実だった場合、非常につらい思いをしてしまうと、思いとどまった。
いくらウタの保証があるとはいえ、痛みが無くなったり、苦しみから解放されるのではないのだろう。
「……そういえば、まだ外に一回も出ていないけれど、どうなっているのかしら?」
ノイは自分の部屋の窓を開けた。気のサッシが、独特な音を立てる。
「……わーお、なんにもない!」
……何にもない訳では無い。少ないものの、近隣にはいくつか民家が建っており、恐らく町だろう建物が乱立した場所が遠くの方に見える。そこまでの道はそれなりに整備されているようで、家の目の前の何もない広場のような場所から、町の入口かもしれない場所まで、一本道が走っていた。
「へぇ。昔の話でも、意外と整理されているものなのね」
考えているだけでは仕方ない、と、トレードマークになっている筈の深紅のケープを被り、葡萄酒とパンの入ったバスケットを持って家を出た。
広場に見えた場所は、地面に石畳が引かれており、『雰囲気が出ている』とノイは感心していた。ただの土よりも、ずっと見ていて心が躍る。異国の地に舞い降りたみたいだ。
「……異国どころか異世界だったわ……」
ノイは思い出したように溜息を吐いた。
「旅行だと思って、楽しむしかないわね」
順応性は高いらしい。クヨクヨ悩んでいても、家に帰れる訳では無い、そう思っただけかもしれないが。
「……しまった。文字が読めても、場所は分からないわ……」
おおよその位置と、隣町までの行き方は母から聞いた。変な顔をされたが、形振り構っていられなかった。……が、肝心の隣町の中の、丁目や番地が分からない。ラッキーだったのは、みな、一軒家であったこと。マンションのような建物がない為、上がったり降りたりをしなくても済むのだ。一つのフロアに何戸も入っている中から一件を探す、複数の団地の中から一件を探す、なんてことはしなくても良いらしい。
広場から続いている、町の入り口から入った場合の簡単な地図も添えてはくれたものの、線と□のみという知らない人には簡素過ぎる出来で、ノイには理解出来なかった。
「うーん、これは難しいなぁ……」
トボトボと貰った紙を見ながら、町までの道を歩く。窓から見えた道を歩いていると、此処は童話らしく、草原が広がり、石畳の道がずっと続いていた。時々見える木々が葉を揺らし、風の音と葉の擦れる音がノイの耳を楽しませた。昔書かれた童話の世界だから、ゲームのようにモンスターは出てこない。割と安心して歩いて行けるだろう。それはノイにとっては安心材料だった。だが、無事に目的地に辿りつけるかどうかは、また別の話だった。
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