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アカズキン(狼×女主/狩人×女主/ヘタレ/擬人化/ロリ)
狼さん_1
しおりを挟む「――あれ? ノエルじゃないか?」
「……え? 誰?」
どこかからノエルを呼ぶ声がする。だが、それがどこからなのかが分からない。近くで名前を呼ばれている筈なのに、姿が見えなかった。
「酷いな! ライガじゃないか! 忘れたのか!?」
「え、ああ、ごめん、って、何処?」
「此処だよ! 下を見ろ!」
訳が分からないまま適当に相槌を打ち、言われた通り下を見ると、そこには一匹の大きな狼がいた。
「な……あ……?」
「やっと気が付いたか。無視すんなよ!」
「……狼が、喋ったぁ!?」
「なんなんだよ今日は!」
"ヤバイ、どうしよう"
ノイは適当に嘘を吐くことにした。小呂楽仲の良い知り合いだろうのに、全く誰なのかが分からないのは申し訳ない気持ちにはなったが、これを乗り切らなければ先はない。
「えっと、ライガ? ごめんなさい、実は、私、昨日頭を打ったみたいで、そうしたら記憶喪失になってしまって……。お母さんに言ったら心配かけちゃうし、どうしていいか。本当にごめんなさい」
「……それ、本当か?」
「ええ……だから、貴方のことも思い出せなくて。……とても素敵な毛並みに、綺麗な瞳ね。こんなにカッコいい狼さんなら、絶対分かる筈よ」
ニッコリと笑って、ライガの背を撫でた。綺麗な毛並みだ。指を通る毛の感覚が心地良い。
「……あっ! この手の感じ、それに……この匂いは、間違いなくノエルだな」
「分かって貰えて嬉しいわ。……あのね? ライガ。私今、とても困っていて……」
「うん? どうしたんだ?」
「実はね、母のお姉さんの家に、この葡萄酒とパンを届けないとならないのだけれど。場所がイマイチわからなくて。言ったことはあるみたいなんだけど、残念ながら覚えていないし……」
ノイは悲しそうな顔で、持っていた紙をライガに見せた。
「あぁ! 大丈夫だ、此処なら分かるぞ。記憶なくしちゃ不便だろう。俺が、その家まで連れていってやる」
「有り難うライガ! 貴方、優しいのね」
「べ、別に、困った奴を助けるのは普通だろう?」
ライガはプイッとお尻を向ける。
"ツンデレ! って奴かしら? ……こんなこと言ってはいけないとは思うけど、ちょっと思考が緩いのかもしれないわね……。簡単に信じてくれちゃったし……"
歩き続けて街が見えるまで、ノイはライガからノエル本人について聞いていた。お母さん、おばあちゃんと三人暮らし。赤いケープは、やはりおばあちゃんの手作りのようだ。いつも気にいって付けていた、ノエルのトレードマーク。お父さんは都会に出稼ぎに出ており、一年に何回か戻ってくるが、基本は家にいないらしい。
ノエルに関して、年齢は聞いていないが、風貌からまだ少女だろう。
普段は町とは反対方向の小さな森で、よく遊んでいるそうだ。その時はライガも一緒に遊ぶとのこと。特に気に入っているのは泉での水遊び。勿論町にも出かけるが、専ら母親の買い物の付き添いか、学校へ勉強に向かう時。あとはたまに、母の姉のところに遊びに行っていたが、最近は行かなくなっており、不思議に思っていた。疲れるのか元気がなくなるし、痣が出来ることもあり、心配していた、と。
ライガは獣人で、狼の姿、狼人間の姿、人間の姿に変身出来るらしい。ノエルとは、小さい頃からの付き合いで、幼馴染らしい。二人はよく、森で遊んでいた。
年は十六。ノイから見たらまだまだ子どもである。
"……十六? 幼馴染ってことは、同い年の可能性もあるの? 小さい頃からの付き合いって言ってるし……。 え、私から見たら、ノエルはもっと子供に見えるけど……?"
実際、ノイはノエルの容姿を見て、よくて十二、三歳、もしかしたらもっと下なのではと思っていた。子どもに対して童顔と言うのもおかしな話かもしれないが、背も低いし色も白く華奢だ。顔つきは幼いだけでなく何処か頼りなくもあり、体格も良く大人っぽいライガと比べると、幼馴染と言うよりは妹と兄に見えた。
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