【完結】狡い人

ジュレヌク

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封筒の名前

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「ねぇ、今日、レイラお姉様は、何処に行ったの?」


休日なのに、私が目覚めるよりも早く出てって、そのまま帰ってこない。

こんなこと、今までに一度もなかった。

誰に聞いても、知らない、分からないばかり。

でも、皆、視線を外すから、きっと何か知ってる。


「お母様、皆、私を蔑ろにするんです」


悲しくなって、お母様の部屋に行けば、甘いミルクティーとクッキーを出してくれた。


「こんなに愛らしい子に、なんて酷いのかしらね。旦那様も旦那様だわ。貴方に婚約者が決まっていないのに、レイラを先に嫁がせるなんて言うんですもの」


私は、驚きのあまり、ミルクティーをドレスの上にこぼしてしまった。


「レイラお姉様が、私より先に嫁ぐですって!おかしい!私の方が、可愛いのに」


あんな変な眼鏡を掛けて、髪型にも気を使わない。

女性としては、下の下なのに、私より先に婚約者が決まるなんて許せない。


「お相手は?」

「それが、旦那様は、私にも教えてくださらないのよ。困ったわね」


お母様は、呑気にも頬に手を当て、溜息をつくだけ。

最近のお父様は、お母様にも厳しくて、言うことを聞いてくれない。

私は、いてもたってもいられなくて、レイラの部屋へ向かった。


コンコン


ノックをしても、返事がない。

まだ、帰っていないのを確認し、私は、ドアノブを回した。

カチャ

今日は、珍しく鍵が掛かっていなかった。

私は、身を滑り込ませると、ドアを閉めた。

昔は、どの部屋にも鍵なんてかかっていなかったし、私とレイラの部屋は、同じだった。

でも、ある時から、私達は、部屋を分けられ鍵があちらこちらの部屋に付けられた。

屋敷の皆も、私に冷たい目を向ける。


狡い、狡い、狡い。


皆を味方に付けるレイラは、狡い。

私は、婚約者の身元が分かりそうなものを探した。

全く交流がない人間と、突然結ばれるはずがない。

レイラは、大事なものは、小箱に入れてベッドの下に隠す。

他には、クローゼットの中や、壁に掛けられた絵の裏。

誰でも思いつきそうな場所ばかり。

数分部屋を漁ったら、出てきた。

本の間に挟まれた封筒に書かれた名前は、『エピジントン・オリンピエ』。

今、学園内で最も人気があり、そして婚約者が居ない数少ない人。


「なにこれ!狡い!狡い!狡い」


私は、封筒をめちゃくちゃに破った。

そして、お顔様の元へ走る。

途中メイド長に見咎められたけど、そんなの気にしていられない。


「お母様!レイラお姉様は、やはり、狡いわ!」


ワンワン泣き続ける私に、お母様がおっしゃった。


「まぁ、レイラでいいなら、ライラでも構わないのではなくて?」


ニッコリ微笑む姿が、私には、救いに思えた。


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