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出会い
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「お疲れ様でーす……」
休んでしまった負い目からか、いつもより小さな声で挨拶をする。バックヤードには、前回のシフトで一緒だった子がおにぎりを持ったままスマホを眺めていた。晶の小さな声に気付いて、彼は勢いよくこちらを振り向く。
「月村さんだ。もう体調大丈夫なの?」
「う、うん」
「ほんと? 良かったー」
「あ、ありがと――」
「月村さんいないとレジ率先して入る人いなくて大変だったんだよね」
さも心配そうに話す彼の顔はニヤついていた。
「おかげで昨日はサボる暇もなかったし……。体調管理しっかりしてよ」
「……油断して風邪引いたのかも。ごめんね。でも休みのうちに沢山寝たし、もう全然元気だから」
「良かったー。今日はよろしく頼みまーす」
はは……と笑い返しながら、簡易更衣室へ逃げ込む。すぐに制服に着替えて、軽く身だしなみを整えようと隣にある鏡を覗いた。鏡の端っこで手描きの猫が「身だしなみに気を付けよう!」と晶に話しかけてくる。
マスクで顔半分が隠れるのは助かった。唇はきっと血の気がないし、顔だって青白い。人が見たら気を遣わせてしまうくらいひどい有様だろう。
昔から顔色の悪さは指摘されてきた。元から貧血気味で頭痛も立ち眩みもよくあったが、なんともない時も言われたことがある。多分元が白いせいで青白く見えるのだろう。自分は生まれた時から日焼けのしない敏感な肌質だったと母が言っていた気がする。
改めて鏡を見れば、幸の薄そうな男が目の前に立っていた。地毛だと信じてもらえない明るい髪。覇気のない黒い目。白いマスク。少しよれた制服。端の猫は目を瞑っている。ここが規則の緩いバイト先で本当に良かった。
「あ、月村くん! お疲れさま、今日もよろしくね」
レジでは店長が慌ただしく動きながら、頼まれた弁当を温めていた。
「店長。はい、休んだ分頑張ります」
店内はすでにたくさんのお客さんが列を作っている。迅速に、正確に捌いていると自分の顔色なんて気にする暇がない。やっと客足が落ち着いた頃には、外はすっかり暗くなっていた。
「月村くんってもう上がりだっけ」
タバコの補充をしていると、隣で別の作業をしていた店長に声をかけられた。
「はい。丁度お客さんもいないのでこのまま上がろうかと思ってます」
「そうしな、病み上がりなんだから」
「もう大丈夫ですよ」
「ほんとかなー。じゃあまあ、お疲れさま!」
「はい、お疲れさまでした」
にこにこと笑いながら挨拶をして、バックヤードに戻るとどっと疲れが襲いかかってきた。立ちっぱなしで足は痛いし、忙しさで忘れていたはずの頭痛が一気に押し寄せてくる。晶は口から悪態を吐きそうになって、かわりに大きな溜め息が口から出ていた。
もう今日は早く家に帰ってすぐに寝たい。
机に置かれたゴミを片付けてから、帰る支度を済ます。やっとバックヤードから出ようとしたところで、晶の目線はルカへと動いていた。
いまだにポスターはあのままで、どうしたってバックヤードにいると目についてしまう。他にもポスターはあるのに、どういうわけか晶の目にはルカしか映らない。そんな自分自身に乾いた笑いが漏れる。動いているところも、話しているところも見たことがないのに気になってしまうのはどうしてなのか。言葉では到底説明できそうになくて、考えるだけ無駄のような気もする。
バックヤードから出ると、レジにいた店長が待っていましたとばかりにこちらを振り向いた。
「どうしたんですか?」
「お見送りしようと思って。外も暗いから気を付けるんだよ」
そう言ってわざわざ外まで出てくれた店長の笑顔を見て、晶はいたたまれなくなった。
俺は心配してもらうほどの人間じゃないです。あなたの労いの言葉に勝手に傷ついて拒絶した人間なんです。
申し訳ない気持ちで店長に会釈をして、光源のコンビニから急いで離れる。晶の視界は一気に夜で塗り潰された。
コンビニから自宅までの道のりは街灯が少ない。あったとしても光が弱かったり、点滅して意味の成していないものがほとんどだ。足元の見にくい道を早足で歩く。白い息が目の前を揺蕩っては消えを繰り返した。
風が吹くたび身震いしては、足がすくんで立ち止まってしまう。身体が思うように動かなかった。冷たい外気に触れたからか、はたまたろくに休憩も取らず労働をしていたからか。ズキズキと頭が痛みに呻き、身体はどんどん重くなる。激しい運動はしていないのに息も上がっている。ぐわんぐわんと回る視界に、ついに我慢できずその場で膝をついた。
気持ち悪い。もう慢性的な貧血とか立ちくらみとか、そんな類のものではない。明らかに、今自分は命の危険を感じていた。深夜の人気のない場所ということもあって、周りの助けを望めそうにもない。
……こんなところで死ぬのかな。
一向に治る気配のない気持ち悪さと息切れが思考を悪い方へと塗りつぶしてくる。
――二十歳になったら。
――好きな人と暮らす、夢みたいな生活。
子供のころから『おかえり』という言葉がほしかった。家族、恋人、相棒、どんな関係でもいい。帰りを待ってくれる相手がほしい。寂しさを塗りつぶせるような関係性をずっと望んでいた。なのに二十歳になった自分には帰りが遅くて連絡してくれる人もいなければ、探してくれる人もいない。一緒に暮らす家族も、それに値する人も、いない。
目の奥が熱くなって、晶は唇を強く噛み締めた。こんなことなら意地を張らずに家で安静にしていれば良かったのか? でもあんな優しい店長に迷惑はかけたくない。じゃあ、どうすればよかったんだ。
少しずつ薄れていく意識の中、ついに考え事すら出来なくなる。うずくまって頭を地面に擦り付けた。ひんやりとしたコンクリートが痛い。
ああ、誰か。俺を見つけてください。涙は今にも溢れ出しそうだったけれど、泣いたらさらに惨めになる気がしてこらえた。ぐっと喉が圧迫されて、耐えるように大きく息を吸う。そのとき、ふと甘い香りが鼻腔をくすぐった。
季節外れの花を思い出させるその匂いは後ろから感じる。もう動かせないと思っていた身体が香りの元を辿ろうとほとんど無意識に起き上がった。
「あ、」
後ろをゆっくりと振り返れば、すぐ目の前、自分を見下ろすように一人の男が立っていた。
もしかして心配して来てくれたのだろうか。そう思ったのだが、
「……おい、なんでこんなところにいる」
男の声は冷たかった。一瞬何を言っているのか理解できず首をかしげると、彼は大げさに溜め息をついた。
「お前の顔は事務所でも見ていない。一体、今の今までどうやって生きてきた?」
男の言っている意味も、なにを聞きたいのかもさっぱり分からない。
「え、今は、一人暮らしですけど」
「そういう意味じゃない!」
チッと男の舌打ちが頭上で聞こえる。
「ああ、くそ、何でこんな……」
視線を上にやれば、鋭い目がこちらを射抜くように見つめていた。帽子を深く被りマスクもしているため表情はわかりにくいが、眉間に皺を寄せて息を荒げている。その姿はどこか苦しそうにも見えた。もしかして彼も具合が悪いのだろうか。
自分のことを棚に上げ、思わず声をかけようとした時だった。
雲で隠れていた月が顔を出す。
ぼんやりとしていた視界が月光で一気に鮮明になる。まるで視力が良くなったかのように、目に映る景色は色鮮やかに夜の闇と目の前の男を映し出した。
見覚えのある人物だった。背格好と、帽子から覗く綺麗な艶のある黒髪。前の晩に同じく夜空を見上げていた人だ。その時は後ろ姿だけだったから、顔は初めて見る。
彼の瞳は真っ赤に鈍く光り輝いていた。人間のものとは思えない血のように濃い色に思わず目を奪われ、身体が嘘みたいに熱を持つ。息がどんどん上がり、汗も滲み始めた。
何だ、これは。
今までの吐き気と眩暈とは別に、今度は心臓の音と熱が頭を支配した。神経の全てが集中しているのかと思うくらい意識が彼にしか向かない。
「――……っ!」
男が息を呑んだのがわかった。小さい音のはずなのに、息遣いも衣服のこすれる音も視界と同じように鮮明に聞こえる。
しばらく無言で直立不動だった彼は、なにかを決心したかのように大きく息を吐き、晶に「立てるか」と手を差し出した。誘われるままに手を重ねれば、強い力で一気に身体を持ち上げられる。あまりの力強さに驚いて体勢を崩しそうになると、彼は晶の背中と膝の下に腕を回して難なく抱き上げた。
「保護のためにも、お前を家に連れて行く」
「え?」
「あと口も開くな。……着くまで、目え瞑ってろ」
「え、あ、はあ」
聞きたいことはすでに山ほどある。ただ、彼の声色から今は何も聞かない方が得策のような気がした。ぎゅっと強く目を閉じて、腕を男の首に回す。
「行くぞ」
次の瞬間、空を切る音が晶の全身を包み込んだ。
冷たい風が全身を叩き、鋭い音がすぐ横を通過する。身体は痛いし、振動だってすごい。いつ吐いてもおかしくない。でも、今はそんなことどうでもよかった。
じんわりと伝わる熱。
さらに密着して近くなった彼の匂い。
初対面で冷たくされようが、勝手に話を進められようが、晶にとってはそれら全てが些細なものとして全てが後方に吹き飛んでいった。
だって、彼は自分を見つけてくれた。
晶は男の思ったより丈夫な胸元に頭を擦り付ける。少しだけ速いリズムを刻む鼓動が伝わってくる。まるで星が夜空で煌めく音だ。星を眺めて生きてきた自分にとって、それはまさしく絶対的な光だった。
休んでしまった負い目からか、いつもより小さな声で挨拶をする。バックヤードには、前回のシフトで一緒だった子がおにぎりを持ったままスマホを眺めていた。晶の小さな声に気付いて、彼は勢いよくこちらを振り向く。
「月村さんだ。もう体調大丈夫なの?」
「う、うん」
「ほんと? 良かったー」
「あ、ありがと――」
「月村さんいないとレジ率先して入る人いなくて大変だったんだよね」
さも心配そうに話す彼の顔はニヤついていた。
「おかげで昨日はサボる暇もなかったし……。体調管理しっかりしてよ」
「……油断して風邪引いたのかも。ごめんね。でも休みのうちに沢山寝たし、もう全然元気だから」
「良かったー。今日はよろしく頼みまーす」
はは……と笑い返しながら、簡易更衣室へ逃げ込む。すぐに制服に着替えて、軽く身だしなみを整えようと隣にある鏡を覗いた。鏡の端っこで手描きの猫が「身だしなみに気を付けよう!」と晶に話しかけてくる。
マスクで顔半分が隠れるのは助かった。唇はきっと血の気がないし、顔だって青白い。人が見たら気を遣わせてしまうくらいひどい有様だろう。
昔から顔色の悪さは指摘されてきた。元から貧血気味で頭痛も立ち眩みもよくあったが、なんともない時も言われたことがある。多分元が白いせいで青白く見えるのだろう。自分は生まれた時から日焼けのしない敏感な肌質だったと母が言っていた気がする。
改めて鏡を見れば、幸の薄そうな男が目の前に立っていた。地毛だと信じてもらえない明るい髪。覇気のない黒い目。白いマスク。少しよれた制服。端の猫は目を瞑っている。ここが規則の緩いバイト先で本当に良かった。
「あ、月村くん! お疲れさま、今日もよろしくね」
レジでは店長が慌ただしく動きながら、頼まれた弁当を温めていた。
「店長。はい、休んだ分頑張ります」
店内はすでにたくさんのお客さんが列を作っている。迅速に、正確に捌いていると自分の顔色なんて気にする暇がない。やっと客足が落ち着いた頃には、外はすっかり暗くなっていた。
「月村くんってもう上がりだっけ」
タバコの補充をしていると、隣で別の作業をしていた店長に声をかけられた。
「はい。丁度お客さんもいないのでこのまま上がろうかと思ってます」
「そうしな、病み上がりなんだから」
「もう大丈夫ですよ」
「ほんとかなー。じゃあまあ、お疲れさま!」
「はい、お疲れさまでした」
にこにこと笑いながら挨拶をして、バックヤードに戻るとどっと疲れが襲いかかってきた。立ちっぱなしで足は痛いし、忙しさで忘れていたはずの頭痛が一気に押し寄せてくる。晶は口から悪態を吐きそうになって、かわりに大きな溜め息が口から出ていた。
もう今日は早く家に帰ってすぐに寝たい。
机に置かれたゴミを片付けてから、帰る支度を済ます。やっとバックヤードから出ようとしたところで、晶の目線はルカへと動いていた。
いまだにポスターはあのままで、どうしたってバックヤードにいると目についてしまう。他にもポスターはあるのに、どういうわけか晶の目にはルカしか映らない。そんな自分自身に乾いた笑いが漏れる。動いているところも、話しているところも見たことがないのに気になってしまうのはどうしてなのか。言葉では到底説明できそうになくて、考えるだけ無駄のような気もする。
バックヤードから出ると、レジにいた店長が待っていましたとばかりにこちらを振り向いた。
「どうしたんですか?」
「お見送りしようと思って。外も暗いから気を付けるんだよ」
そう言ってわざわざ外まで出てくれた店長の笑顔を見て、晶はいたたまれなくなった。
俺は心配してもらうほどの人間じゃないです。あなたの労いの言葉に勝手に傷ついて拒絶した人間なんです。
申し訳ない気持ちで店長に会釈をして、光源のコンビニから急いで離れる。晶の視界は一気に夜で塗り潰された。
コンビニから自宅までの道のりは街灯が少ない。あったとしても光が弱かったり、点滅して意味の成していないものがほとんどだ。足元の見にくい道を早足で歩く。白い息が目の前を揺蕩っては消えを繰り返した。
風が吹くたび身震いしては、足がすくんで立ち止まってしまう。身体が思うように動かなかった。冷たい外気に触れたからか、はたまたろくに休憩も取らず労働をしていたからか。ズキズキと頭が痛みに呻き、身体はどんどん重くなる。激しい運動はしていないのに息も上がっている。ぐわんぐわんと回る視界に、ついに我慢できずその場で膝をついた。
気持ち悪い。もう慢性的な貧血とか立ちくらみとか、そんな類のものではない。明らかに、今自分は命の危険を感じていた。深夜の人気のない場所ということもあって、周りの助けを望めそうにもない。
……こんなところで死ぬのかな。
一向に治る気配のない気持ち悪さと息切れが思考を悪い方へと塗りつぶしてくる。
――二十歳になったら。
――好きな人と暮らす、夢みたいな生活。
子供のころから『おかえり』という言葉がほしかった。家族、恋人、相棒、どんな関係でもいい。帰りを待ってくれる相手がほしい。寂しさを塗りつぶせるような関係性をずっと望んでいた。なのに二十歳になった自分には帰りが遅くて連絡してくれる人もいなければ、探してくれる人もいない。一緒に暮らす家族も、それに値する人も、いない。
目の奥が熱くなって、晶は唇を強く噛み締めた。こんなことなら意地を張らずに家で安静にしていれば良かったのか? でもあんな優しい店長に迷惑はかけたくない。じゃあ、どうすればよかったんだ。
少しずつ薄れていく意識の中、ついに考え事すら出来なくなる。うずくまって頭を地面に擦り付けた。ひんやりとしたコンクリートが痛い。
ああ、誰か。俺を見つけてください。涙は今にも溢れ出しそうだったけれど、泣いたらさらに惨めになる気がしてこらえた。ぐっと喉が圧迫されて、耐えるように大きく息を吸う。そのとき、ふと甘い香りが鼻腔をくすぐった。
季節外れの花を思い出させるその匂いは後ろから感じる。もう動かせないと思っていた身体が香りの元を辿ろうとほとんど無意識に起き上がった。
「あ、」
後ろをゆっくりと振り返れば、すぐ目の前、自分を見下ろすように一人の男が立っていた。
もしかして心配して来てくれたのだろうか。そう思ったのだが、
「……おい、なんでこんなところにいる」
男の声は冷たかった。一瞬何を言っているのか理解できず首をかしげると、彼は大げさに溜め息をついた。
「お前の顔は事務所でも見ていない。一体、今の今までどうやって生きてきた?」
男の言っている意味も、なにを聞きたいのかもさっぱり分からない。
「え、今は、一人暮らしですけど」
「そういう意味じゃない!」
チッと男の舌打ちが頭上で聞こえる。
「ああ、くそ、何でこんな……」
視線を上にやれば、鋭い目がこちらを射抜くように見つめていた。帽子を深く被りマスクもしているため表情はわかりにくいが、眉間に皺を寄せて息を荒げている。その姿はどこか苦しそうにも見えた。もしかして彼も具合が悪いのだろうか。
自分のことを棚に上げ、思わず声をかけようとした時だった。
雲で隠れていた月が顔を出す。
ぼんやりとしていた視界が月光で一気に鮮明になる。まるで視力が良くなったかのように、目に映る景色は色鮮やかに夜の闇と目の前の男を映し出した。
見覚えのある人物だった。背格好と、帽子から覗く綺麗な艶のある黒髪。前の晩に同じく夜空を見上げていた人だ。その時は後ろ姿だけだったから、顔は初めて見る。
彼の瞳は真っ赤に鈍く光り輝いていた。人間のものとは思えない血のように濃い色に思わず目を奪われ、身体が嘘みたいに熱を持つ。息がどんどん上がり、汗も滲み始めた。
何だ、これは。
今までの吐き気と眩暈とは別に、今度は心臓の音と熱が頭を支配した。神経の全てが集中しているのかと思うくらい意識が彼にしか向かない。
「――……っ!」
男が息を呑んだのがわかった。小さい音のはずなのに、息遣いも衣服のこすれる音も視界と同じように鮮明に聞こえる。
しばらく無言で直立不動だった彼は、なにかを決心したかのように大きく息を吐き、晶に「立てるか」と手を差し出した。誘われるままに手を重ねれば、強い力で一気に身体を持ち上げられる。あまりの力強さに驚いて体勢を崩しそうになると、彼は晶の背中と膝の下に腕を回して難なく抱き上げた。
「保護のためにも、お前を家に連れて行く」
「え?」
「あと口も開くな。……着くまで、目え瞑ってろ」
「え、あ、はあ」
聞きたいことはすでに山ほどある。ただ、彼の声色から今は何も聞かない方が得策のような気がした。ぎゅっと強く目を閉じて、腕を男の首に回す。
「行くぞ」
次の瞬間、空を切る音が晶の全身を包み込んだ。
冷たい風が全身を叩き、鋭い音がすぐ横を通過する。身体は痛いし、振動だってすごい。いつ吐いてもおかしくない。でも、今はそんなことどうでもよかった。
じんわりと伝わる熱。
さらに密着して近くなった彼の匂い。
初対面で冷たくされようが、勝手に話を進められようが、晶にとってはそれら全てが些細なものとして全てが後方に吹き飛んでいった。
だって、彼は自分を見つけてくれた。
晶は男の思ったより丈夫な胸元に頭を擦り付ける。少しだけ速いリズムを刻む鼓動が伝わってくる。まるで星が夜空で煌めく音だ。星を眺めて生きてきた自分にとって、それはまさしく絶対的な光だった。
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