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1巻
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扉を開けていたシロさんが、見かねたのか、私に優しく声をかけてくれた。
「今日はうちに泊まれば?」
その言葉に思わず顔を上げる。
「でも」
「だってお姉さんの家わからないんでしょ……?」
それはそうだ。私だってこんなことになるとは思っていなかった。バイトで貯めていたお金があるとは言え、何日間もホテル泊まりできるだけの余裕はない。しばらくお姉ちゃんの家に、泊めて貰うつもりだったのに。
「私の家は大丈夫だし、お客さん用の布団もあるから。こんな時間だし」
「ホテル、探します」
さすがに他人にそこまでは、甘えられない。
断ろうと首を横に振ったけれど、シロさんは私の背中をぐいぐい押して部屋に引き摺り込んだ。
「それくらい甘えなさい」
「でも」
「でもも、だっても、ないの! はいはい、入る!」
シロさんの有無を言わさない言葉に押され、お家へとお邪魔する。
良い香りのする部屋は整理整頓されていて、とても綺麗だった。
「明日のことは、明日また考えよ」
「はい、すみません」
「いいのいいの。どうせ私も春休み中で暇だったし。さて、ご飯どうしようかな。あ、うちの学生が行くご飯屋さんに行こっか。バス停の通りに、定食屋さんがあるのよ」
荷物をとりあえず置かせて貰って、シロさんに勧められてソファに座る。あったかいお茶を差し出しながら、シロさんが独り言のようにぶつぶつと言葉にする。
「はい……」
「落ち込まないで、ごめんね」
「なんで、シロさんが謝るんですか」
「住所を見せて貰った時に気づければ、ホテルに泊まるとかもできたかなって」
シロさんは何も悪くない。勘違いしてメモした私が、百パーセント悪い。
いただいたお茶を一口飲み込めば、冷え切った体に優しさが広がっていった。
私がお茶を飲んでいる間に、シロさんは布団を敷いてくれた。キレイに整えられた布団に転がれば、涙が溢れてくる。
逃げてきたのに、これからどうしたらいいんだろう。今まで、自分で決断したことなんかなかった。帰るのはイヤ。でも、お姉ちゃんもいない。
シロさんに押し切られなかったら、泊まるとこもなく、きっと北海道の寒さに凍えていた。私、どうしたらいいんだろう。誰か、教えてよ。
第二章 スープカレーと観覧車
昨夜はあんなに不安だったのに、他人の家で寝たとは思えないほどの快眠だった。想像よりも、体は疲れ切っていたのかもしれない。
鳥の鳴き声で目を覚ませば、ぐーっと伸びをしたシロさんと目が合った。
「おはよ、恵ちゃん」
「おはようございます」
しぱしぱする目でシロさんを見てから、お姉ちゃんのことを思い出してスマホを確かめる。メッセージは一件。【しばらく、帰らない。観光でもしたら?】だけ。
家はどこかという質問や、会いに来たという私の言葉は完全スルー。
観光でもするよ。するけど……「どこに行くの」と打ち込んで送っても、すぐには既読にはならない。
家を飛び出してきた妹が、心配じゃないんだろうか。いつもだったら、もっと寄り添ってくれるのに。私が受験勉強に嫌気がさして泣き言を送った時だって、数秒で「大丈夫だって」と返ってきた。思えば、お姉ちゃんがこんな淡白なこと、今までなかった気がする。
メッセージで弱音を吐けば、すぐに着信があって、いつもの偉そうな口調で「またそうやってぐずぐずする! 大丈夫だって言ってるから、大丈夫なのよ!」とお姉ちゃん節を炸裂させていた。
朝からスマホばかり触る私を非難するでもなく、シロさんは心配そうな顔で見つめている。
「お姉さんから返信きてた?」
「しばらく、帰らないそうで……」
はぁ、とため息が出る。そんな私にシロさんがこてんと首を傾げた。
「あらぁ、じゃあしばらく家に泊まってもいいわよ」
「さすがにそれは……」
「札幌観光してる間だけでも、ね! どうせ私も春休み中だし。付き合うわ」
少々強引なところも嫌じゃないのは、シロクマの見た目だからだろうか。
私は思ったよりも、単純みたいだ。
昨日は怒りに任せて家を出てきてしまったけど、シロさんと出会えてよかったと既に思っている。泊めて貰うなんて迷惑をかけてしまったけど、少しだけ心が凪いでいる。
ぐぅううとお腹が鳴った。ごはんをご所望らしい。シロさんも私のお腹の音に釣られて、こちらを見て笑っていた。
「じゃあ、まずは美味しいものでも食べに行きましょう! カレーはお好き?」
「よく食べはします」
「じゃあスープカレー食べに行きましょう! 地下鉄に乗って行くわよ! あ、キャリーケースは邪魔だろうから置いていって良いよ」
シロさんの言葉に甘えて、キャリーケースを部屋の隅っこにおいやって着替える。昨日は、骨身に染みる寒さだった。
防寒具も追加したいところだけど……お金の余裕があるとは言えないからどうしようかな。
迷っていると、シロさんが私の肩をつついた。
「あ、よかったらこのコート使う? 私のサイズには合わないから」
シロさんから差し出されたコートは暖かそうなピンク色のピーコートだった。私の好きなデザインで、一瞬考えてしまう。そこまで甘えるのは、流石に申し訳ない。
「貰い物なんだけどね……着れないサイズだから」
けれどダメ押しでそう言われてしまった。
確かにシロさんが着ると、さすがにコートは小さすぎるかもしれない。
私に無理やり着せるように腕を通させてくるシロさん。抵抗もしづらくされるがまま、立ち尽くす。
コートは、私のサイズにぴったりだった。シロさんは嬉しそうに私の周りをくるくる回る。
「やっぱり、ピッタリね! 風邪を引かれても困るからそれ着ておいて」
「でも」
「でもも、だっても良いのよ! 貰えって言ってるわけじゃないし、借りておきなさい」
ビシッと私に人差し指を突き立てて、腰に手を当てる。可愛いのに、なんだか偉そうでお姉ちゃんと重なった。つい、甘えたくなってしまう感じは、お姉ちゃんと年齢とかも近いからだろうか。
「じゃあ、ありがたく」
「よし、出発進行!」
そんなわけで話がまとまって、慣れた道をとぽとぽと進むシロさんの後ろを歩く。
昨日は、夕方だったからあまり周りの様子を見られていなかったけど、至って普通の住宅街に見える。札幌は、私が想像していたよりも都会ではなかった。想像通り雪は、降り積もっているけど。
昨日と同じようなバスに乗れば、地下鉄の駅があっという間に見えてきた。この街に慣れてきたなと、二日目にして感想を抱いた。昨日も乗った地下鉄は、代わり映えしない。
地下鉄に体を揺られながら、シロさんと他愛もない話を繰り返す。まるで、私とシロさんは、元々の知り合いだったみたいだ。
時折、核心をつくような質問にぐっと息が詰まることもあるけど。
「何が不満だったの」
「家族のですか?」
聞き返してから考える。
私を見てくれなかったこと、姉と比較されたこと、いくらでも思いつく。それでも、人に話すには子供じみていて恥ずかしくて、言葉にしづらい。
出来るだけ無難そうなところだけを口にしよう、とゆっくり口を開いた。
「――慰めてほしかったのかも。受験だって自分なりに頑張って一年を費やしたんですよ。私の実力不足だったとしても、親には寄り添ってほしかったなぁ。なんて」
「甘えたかったのね」
「だって、今まで甘えられることなんてなかったんですよ。私が良い点数を取ってきても、ふーんだけ、バイトを始めても、そう、だけ。私に何の興味もないくせに、悪いところだけ見られるのが辛かったんです」
うまくオブラートに包んで話そうとしていた。それなのに、今まで言葉にしてこなかったせいで、どんどん言葉は素直になっていってしまう。
恥ずかしい子供のままの私。誰にも見せたことのない、心の中の幼い私だ。親の顔を思い出して、首を横にブンブン振って振り切る。
今は楽しいことだけ目に映したい。
そんな私の頭にシロさんのもふもふの手がぽふんと置かれた。
「数日だけでも、私には甘えても良いわよ」
「シロさん……!」
「近い!」
抱きついてもふもふの毛皮に顔を埋めようとすれば、シロさんの短い手が私のおでこを押さえつける。
「甘えて良いって言ったのに」
「そういう意味じゃない!」
「ひどい!」
言い合いをしているうちに、地下鉄は大通駅に着いていて、二人して慌てて立ち上がって電車から降りる。
おかしくなって、お腹を抱えてくすくすと笑い合いながら。素直に言うことがこんなに楽になれることだとは思わなかった。
「こっちよ!」
迷路のような道をするすると進んでいく背中に、シロさんの鞄のストラップを握りながらなんとかついていく。ナビがあれば一人で確かにたどり着くことはできたと思う。それでも、こんなに周りを観察できなかったかも。
改札を通り抜けて、階段を上って地上に出る。
冷え切った空気が顔に吹き付けて、北海道らしさを見た気がした。
北海道の三月はまだまだ寒いみたいだ。私の地域ではもう桜の芽がつき始めていると言うのに、緑の気配は一ミリもしない。その事実が心地よくて、胸いっぱいに空気を吸い込む。
肺の奥から空気が身体中を冷やして、冷静にさせてくれる気さえしてきた。
「こっちよ」
深呼吸を繰り返していた私を引っ張るように、シロさんは鞄のストラップをぐいぐいとしならせる。
ついていけば、観覧車が目に飛び込んできた。横に目線を移せば狸小路と書かれたアーケード街からは、賑やかな音がしている。人々が行き交う様は、私をまるで異物と言っている気がしてくる。
楽しそうに手を繋ぐカップル。子供を抱きあげて頬擦りする親子。私が欲しかった理想がその場に固まっているみたいで、目を塞ぎたくなった。
「恵?」
そう声を掛けられて、ようやく呼吸ができた。
私は幸せそうな光景から目を引きはがして、シロさんに作った微笑みを向ける。
「ううん、なんでもないです。あっちですか?」
「観覧車の方よ」
いつのまにか、ちゃん付けもなくなった呼び方に微かに嬉しさを感じてしまうのは親しくなった気がするからだろうか。
シロさんのことも、呼び捨てにしようかと迷って、それは失礼な気がしてやめた。
観覧車の方に向かって歩けば、観覧車はビルの上にドンッと構えていた。じいっと見つめる私に勘違いしたのか、シロさんが観覧車を指さす。
「ノルベサ乗る?」
「ノルベサって名前なんですね?」
「あの観覧車に乗る、べさでノルベサ」
「え、そう言う意味で?」
「本当の意味は知らないわよ」
ないはずの観覧車に乗った記憶が脳裏にチラリと浮かんで、ため息が溢れた。遊園地に行った記憶なんてほとんどないのに。映画とかドラマとかの記憶と、混同しているんだろう。
「とりあえずお腹空いたからスープカレー食べてからね」
「はーい」
乗りたかったわけではないけど。
せっかく札幌まで来たのだから、観光スポットは寄っておこう。あれだけ高ければ、札幌の街並みを一望できるだろうし。
ノルベサのすぐ近くに、スープカレーのお店はあった。
黒塗りの扉は、まるでお店の扉じゃないみたい。一人だったら開けるのは躊躇っていたかも。
シロさんが気にもせず開ければ、カランカランと上の方に付いていた鐘が鳴った。
「いらっしゃいませー!」
店員さんの明るい声に釣られて顔を上げれば、扉の先は階段。
珍しい形のお店に、心がワクワクと跳ね上がる。一段一段上っていけば、木を基調としたおしゃれな空間が広がっていた。二人がけの席が多く用意されているけど、カウンター席もある。テイクアウトと書かれた貼り紙も。
ほんのり薄暗い黄色っぽい照明が、ムーディーな雰囲気を醸し出している。案内された席に座れば、シロさんがメニュー表を見せてくれた。
「おすすめは、チキンレッグ、あとラムね」
「ラムは、食べたことないのでチキンレッグにします」
迷って困らせたくなくて、おすすめを即座に選ぶ。
すぐ店員さんを呼ぼうとすれば、シロさんのもふもふの手に止められた。
「まだよ」
「え?」
シロさんはメニュー表に書かれている項目を、指差しながら読み上げていく。スープカレーはメイン食材のページと、私は気付いていなかったけど細かいセレクトがあるらしい。
「はい、ここが追加トッピング。で、スープの種類と辛さとご飯のサイズね」
選ぶものの多さにめまいがしそうだ。
メニューをじいっと眺めて、追加トッピングはとりあえず選ぶことをやめた。
そこでふと、自分で何かを選ぶのはいつぶりだろう……そんなことを考えてしまった。同時に、何かが考えるのをやめろというように叫び、私はメニューにさっと目を走らせて顔を上げた。
「全部普通で、スープは一番人気のやつ」
待たせるのも、申し訳ない。だから一番人気や、普通と貼られているものにしようとしたのに……またシロさんが私を止めた。
「本当にそれが良いの?」
シロさんの言葉に、一呼吸分息が止まった。
私が諦めてきた『選ぶ』ということ、それを避けたのを見抜かれている気がしたから。
「追加で食べたいものはないの?」
選ぶことが、私は昔から苦手だった。
苦手だった? 本当に? 親が先回りして勝手に選んでいただけじゃない?
私が望んでることは? わからない……選べるお姉ちゃんが羨ましかった。好きなものを語るお姉ちゃんが、羨ましかった。だから、私お姉ちゃんの好きなものを、自分の好きなものだと言い張ってきた。
彼に選ばれた時だって、そうだ。彼が選んでくれたから、私も彼と付き合うことを選んだフリをした。自分の本当の選びたいことなんて、今だってわからない。
メニューという、こんな小さなこと一つとっても。
うなだれて、シロさんに力なく首を振る。
「わからないです」
「好きなものくらいあるでしょ?」
シロさんの言葉が鋭い刃のように胸の奥に突き刺さる。まるで、叱られているみたいに感じてしまった。私は、自分が何を好きかわからない。でも、親に勝手に選ばれる人生も嫌だった。
ごはん屋さんに行けば、親が全て決めていたし、高校だって親の言うとおり選んだ。自分で選べないから。どこがいい? と聞かれて、すぐに答えられなかった。じっくり考えてみたら、答えは違ったのかもしれない。でも、考えることを放棄して、親の言いなりで生きてきた。
そして、今はただただ、親の言うことに歯向かいたくて、家を飛び出した。
生意気で、ずるくて、自分勝手だ。
自己反省会が脳内で勝手に始まりそうになって、首を横に振る。それから、もう一度メニューに目を落として、頷いた。
「ブロッコリーにします」
「わかった!」
お姉ちゃんが、いつだったか帰ってきた時に言っていた「スープカレーの素揚げのブロッコリーっておいしいんだよ!」という言葉を思い出したからだ。
結局私は、お姉ちゃんの二番煎じを自分からするんだ。お姉ちゃんと比較されることを嫌がって、怒っているくせに。
「あ、ラッシーはどうする?」
シロさんはいちいち私に確認を取るように、聞いてくる。自分で選びなさい、と人から言われるのは初めてな気がした。
シロさんが指差したメニュー表の中の、イチゴラッシーという文字に目が留まって、口の中に想像で甘酸っぱい味が広がる。
「イチゴラッシーにします」
「私はプレーンにしよ、すいませーん」
シロさんが頼んでくれているうちに、メニュー表にもう一度目を通す。
私が本当に食べたいものは何だろう。
心の中で問いかけながらメニューを見ても、想像が付かなくて、やっぱり選べそうにはなかった。
シロさんはソワソワという感じで、時折厨房の方を見つめる。私も一緒になって遠目に覗けば、ジュワワという音を立てながら野菜を揚げているところだった。
「一回食べたら恵もハマるわよ」
ドヤ顔で腕組みするシロさんが、あまりにも可愛い。だから、うんうんと大きく何度も頷く。
運ばれてきたスープカレーは、カレーというにはあまりにもスープが緩い。確かに、スープだ。スプーンで掬ってもとろみは一切なくシャバシャバのカレー。
ちらりとシロさんの様子を窺えば、嬉しそうに目をキラキラと輝かせているから正しい形なのだろう。
「ご飯はね、後でスープに入れるでも、スプーンで掬って浸してもいいの」
「そうなんですね」
「とりあえず食べましょ!」
嬉しそうにスプーンを構えて、一口食べ始めたシロさんの真似をしてスープを口に運ぶ。
スパイスが口の中でふわりと弾けて、舌も喉も鼻も刺激した。程よい辛さと、複雑な旨みが喉の奥に落ちていく。辛いのに、ほんのり甘い気もしてくる。スパイスが複雑に絡み合って、一言では形容し難い味をしていた。カレーというよりも、おいしいスープだ。素揚げされた色とりどりの野菜をどれから食べようか迷って、シロさんの真似をしようと顔を上げる。
「今日はうちに泊まれば?」
その言葉に思わず顔を上げる。
「でも」
「だってお姉さんの家わからないんでしょ……?」
それはそうだ。私だってこんなことになるとは思っていなかった。バイトで貯めていたお金があるとは言え、何日間もホテル泊まりできるだけの余裕はない。しばらくお姉ちゃんの家に、泊めて貰うつもりだったのに。
「私の家は大丈夫だし、お客さん用の布団もあるから。こんな時間だし」
「ホテル、探します」
さすがに他人にそこまでは、甘えられない。
断ろうと首を横に振ったけれど、シロさんは私の背中をぐいぐい押して部屋に引き摺り込んだ。
「それくらい甘えなさい」
「でも」
「でもも、だっても、ないの! はいはい、入る!」
シロさんの有無を言わさない言葉に押され、お家へとお邪魔する。
良い香りのする部屋は整理整頓されていて、とても綺麗だった。
「明日のことは、明日また考えよ」
「はい、すみません」
「いいのいいの。どうせ私も春休み中で暇だったし。さて、ご飯どうしようかな。あ、うちの学生が行くご飯屋さんに行こっか。バス停の通りに、定食屋さんがあるのよ」
荷物をとりあえず置かせて貰って、シロさんに勧められてソファに座る。あったかいお茶を差し出しながら、シロさんが独り言のようにぶつぶつと言葉にする。
「はい……」
「落ち込まないで、ごめんね」
「なんで、シロさんが謝るんですか」
「住所を見せて貰った時に気づければ、ホテルに泊まるとかもできたかなって」
シロさんは何も悪くない。勘違いしてメモした私が、百パーセント悪い。
いただいたお茶を一口飲み込めば、冷え切った体に優しさが広がっていった。
私がお茶を飲んでいる間に、シロさんは布団を敷いてくれた。キレイに整えられた布団に転がれば、涙が溢れてくる。
逃げてきたのに、これからどうしたらいいんだろう。今まで、自分で決断したことなんかなかった。帰るのはイヤ。でも、お姉ちゃんもいない。
シロさんに押し切られなかったら、泊まるとこもなく、きっと北海道の寒さに凍えていた。私、どうしたらいいんだろう。誰か、教えてよ。
第二章 スープカレーと観覧車
昨夜はあんなに不安だったのに、他人の家で寝たとは思えないほどの快眠だった。想像よりも、体は疲れ切っていたのかもしれない。
鳥の鳴き声で目を覚ませば、ぐーっと伸びをしたシロさんと目が合った。
「おはよ、恵ちゃん」
「おはようございます」
しぱしぱする目でシロさんを見てから、お姉ちゃんのことを思い出してスマホを確かめる。メッセージは一件。【しばらく、帰らない。観光でもしたら?】だけ。
家はどこかという質問や、会いに来たという私の言葉は完全スルー。
観光でもするよ。するけど……「どこに行くの」と打ち込んで送っても、すぐには既読にはならない。
家を飛び出してきた妹が、心配じゃないんだろうか。いつもだったら、もっと寄り添ってくれるのに。私が受験勉強に嫌気がさして泣き言を送った時だって、数秒で「大丈夫だって」と返ってきた。思えば、お姉ちゃんがこんな淡白なこと、今までなかった気がする。
メッセージで弱音を吐けば、すぐに着信があって、いつもの偉そうな口調で「またそうやってぐずぐずする! 大丈夫だって言ってるから、大丈夫なのよ!」とお姉ちゃん節を炸裂させていた。
朝からスマホばかり触る私を非難するでもなく、シロさんは心配そうな顔で見つめている。
「お姉さんから返信きてた?」
「しばらく、帰らないそうで……」
はぁ、とため息が出る。そんな私にシロさんがこてんと首を傾げた。
「あらぁ、じゃあしばらく家に泊まってもいいわよ」
「さすがにそれは……」
「札幌観光してる間だけでも、ね! どうせ私も春休み中だし。付き合うわ」
少々強引なところも嫌じゃないのは、シロクマの見た目だからだろうか。
私は思ったよりも、単純みたいだ。
昨日は怒りに任せて家を出てきてしまったけど、シロさんと出会えてよかったと既に思っている。泊めて貰うなんて迷惑をかけてしまったけど、少しだけ心が凪いでいる。
ぐぅううとお腹が鳴った。ごはんをご所望らしい。シロさんも私のお腹の音に釣られて、こちらを見て笑っていた。
「じゃあ、まずは美味しいものでも食べに行きましょう! カレーはお好き?」
「よく食べはします」
「じゃあスープカレー食べに行きましょう! 地下鉄に乗って行くわよ! あ、キャリーケースは邪魔だろうから置いていって良いよ」
シロさんの言葉に甘えて、キャリーケースを部屋の隅っこにおいやって着替える。昨日は、骨身に染みる寒さだった。
防寒具も追加したいところだけど……お金の余裕があるとは言えないからどうしようかな。
迷っていると、シロさんが私の肩をつついた。
「あ、よかったらこのコート使う? 私のサイズには合わないから」
シロさんから差し出されたコートは暖かそうなピンク色のピーコートだった。私の好きなデザインで、一瞬考えてしまう。そこまで甘えるのは、流石に申し訳ない。
「貰い物なんだけどね……着れないサイズだから」
けれどダメ押しでそう言われてしまった。
確かにシロさんが着ると、さすがにコートは小さすぎるかもしれない。
私に無理やり着せるように腕を通させてくるシロさん。抵抗もしづらくされるがまま、立ち尽くす。
コートは、私のサイズにぴったりだった。シロさんは嬉しそうに私の周りをくるくる回る。
「やっぱり、ピッタリね! 風邪を引かれても困るからそれ着ておいて」
「でも」
「でもも、だっても良いのよ! 貰えって言ってるわけじゃないし、借りておきなさい」
ビシッと私に人差し指を突き立てて、腰に手を当てる。可愛いのに、なんだか偉そうでお姉ちゃんと重なった。つい、甘えたくなってしまう感じは、お姉ちゃんと年齢とかも近いからだろうか。
「じゃあ、ありがたく」
「よし、出発進行!」
そんなわけで話がまとまって、慣れた道をとぽとぽと進むシロさんの後ろを歩く。
昨日は、夕方だったからあまり周りの様子を見られていなかったけど、至って普通の住宅街に見える。札幌は、私が想像していたよりも都会ではなかった。想像通り雪は、降り積もっているけど。
昨日と同じようなバスに乗れば、地下鉄の駅があっという間に見えてきた。この街に慣れてきたなと、二日目にして感想を抱いた。昨日も乗った地下鉄は、代わり映えしない。
地下鉄に体を揺られながら、シロさんと他愛もない話を繰り返す。まるで、私とシロさんは、元々の知り合いだったみたいだ。
時折、核心をつくような質問にぐっと息が詰まることもあるけど。
「何が不満だったの」
「家族のですか?」
聞き返してから考える。
私を見てくれなかったこと、姉と比較されたこと、いくらでも思いつく。それでも、人に話すには子供じみていて恥ずかしくて、言葉にしづらい。
出来るだけ無難そうなところだけを口にしよう、とゆっくり口を開いた。
「――慰めてほしかったのかも。受験だって自分なりに頑張って一年を費やしたんですよ。私の実力不足だったとしても、親には寄り添ってほしかったなぁ。なんて」
「甘えたかったのね」
「だって、今まで甘えられることなんてなかったんですよ。私が良い点数を取ってきても、ふーんだけ、バイトを始めても、そう、だけ。私に何の興味もないくせに、悪いところだけ見られるのが辛かったんです」
うまくオブラートに包んで話そうとしていた。それなのに、今まで言葉にしてこなかったせいで、どんどん言葉は素直になっていってしまう。
恥ずかしい子供のままの私。誰にも見せたことのない、心の中の幼い私だ。親の顔を思い出して、首を横にブンブン振って振り切る。
今は楽しいことだけ目に映したい。
そんな私の頭にシロさんのもふもふの手がぽふんと置かれた。
「数日だけでも、私には甘えても良いわよ」
「シロさん……!」
「近い!」
抱きついてもふもふの毛皮に顔を埋めようとすれば、シロさんの短い手が私のおでこを押さえつける。
「甘えて良いって言ったのに」
「そういう意味じゃない!」
「ひどい!」
言い合いをしているうちに、地下鉄は大通駅に着いていて、二人して慌てて立ち上がって電車から降りる。
おかしくなって、お腹を抱えてくすくすと笑い合いながら。素直に言うことがこんなに楽になれることだとは思わなかった。
「こっちよ!」
迷路のような道をするすると進んでいく背中に、シロさんの鞄のストラップを握りながらなんとかついていく。ナビがあれば一人で確かにたどり着くことはできたと思う。それでも、こんなに周りを観察できなかったかも。
改札を通り抜けて、階段を上って地上に出る。
冷え切った空気が顔に吹き付けて、北海道らしさを見た気がした。
北海道の三月はまだまだ寒いみたいだ。私の地域ではもう桜の芽がつき始めていると言うのに、緑の気配は一ミリもしない。その事実が心地よくて、胸いっぱいに空気を吸い込む。
肺の奥から空気が身体中を冷やして、冷静にさせてくれる気さえしてきた。
「こっちよ」
深呼吸を繰り返していた私を引っ張るように、シロさんは鞄のストラップをぐいぐいとしならせる。
ついていけば、観覧車が目に飛び込んできた。横に目線を移せば狸小路と書かれたアーケード街からは、賑やかな音がしている。人々が行き交う様は、私をまるで異物と言っている気がしてくる。
楽しそうに手を繋ぐカップル。子供を抱きあげて頬擦りする親子。私が欲しかった理想がその場に固まっているみたいで、目を塞ぎたくなった。
「恵?」
そう声を掛けられて、ようやく呼吸ができた。
私は幸せそうな光景から目を引きはがして、シロさんに作った微笑みを向ける。
「ううん、なんでもないです。あっちですか?」
「観覧車の方よ」
いつのまにか、ちゃん付けもなくなった呼び方に微かに嬉しさを感じてしまうのは親しくなった気がするからだろうか。
シロさんのことも、呼び捨てにしようかと迷って、それは失礼な気がしてやめた。
観覧車の方に向かって歩けば、観覧車はビルの上にドンッと構えていた。じいっと見つめる私に勘違いしたのか、シロさんが観覧車を指さす。
「ノルベサ乗る?」
「ノルベサって名前なんですね?」
「あの観覧車に乗る、べさでノルベサ」
「え、そう言う意味で?」
「本当の意味は知らないわよ」
ないはずの観覧車に乗った記憶が脳裏にチラリと浮かんで、ため息が溢れた。遊園地に行った記憶なんてほとんどないのに。映画とかドラマとかの記憶と、混同しているんだろう。
「とりあえずお腹空いたからスープカレー食べてからね」
「はーい」
乗りたかったわけではないけど。
せっかく札幌まで来たのだから、観光スポットは寄っておこう。あれだけ高ければ、札幌の街並みを一望できるだろうし。
ノルベサのすぐ近くに、スープカレーのお店はあった。
黒塗りの扉は、まるでお店の扉じゃないみたい。一人だったら開けるのは躊躇っていたかも。
シロさんが気にもせず開ければ、カランカランと上の方に付いていた鐘が鳴った。
「いらっしゃいませー!」
店員さんの明るい声に釣られて顔を上げれば、扉の先は階段。
珍しい形のお店に、心がワクワクと跳ね上がる。一段一段上っていけば、木を基調としたおしゃれな空間が広がっていた。二人がけの席が多く用意されているけど、カウンター席もある。テイクアウトと書かれた貼り紙も。
ほんのり薄暗い黄色っぽい照明が、ムーディーな雰囲気を醸し出している。案内された席に座れば、シロさんがメニュー表を見せてくれた。
「おすすめは、チキンレッグ、あとラムね」
「ラムは、食べたことないのでチキンレッグにします」
迷って困らせたくなくて、おすすめを即座に選ぶ。
すぐ店員さんを呼ぼうとすれば、シロさんのもふもふの手に止められた。
「まだよ」
「え?」
シロさんはメニュー表に書かれている項目を、指差しながら読み上げていく。スープカレーはメイン食材のページと、私は気付いていなかったけど細かいセレクトがあるらしい。
「はい、ここが追加トッピング。で、スープの種類と辛さとご飯のサイズね」
選ぶものの多さにめまいがしそうだ。
メニューをじいっと眺めて、追加トッピングはとりあえず選ぶことをやめた。
そこでふと、自分で何かを選ぶのはいつぶりだろう……そんなことを考えてしまった。同時に、何かが考えるのをやめろというように叫び、私はメニューにさっと目を走らせて顔を上げた。
「全部普通で、スープは一番人気のやつ」
待たせるのも、申し訳ない。だから一番人気や、普通と貼られているものにしようとしたのに……またシロさんが私を止めた。
「本当にそれが良いの?」
シロさんの言葉に、一呼吸分息が止まった。
私が諦めてきた『選ぶ』ということ、それを避けたのを見抜かれている気がしたから。
「追加で食べたいものはないの?」
選ぶことが、私は昔から苦手だった。
苦手だった? 本当に? 親が先回りして勝手に選んでいただけじゃない?
私が望んでることは? わからない……選べるお姉ちゃんが羨ましかった。好きなものを語るお姉ちゃんが、羨ましかった。だから、私お姉ちゃんの好きなものを、自分の好きなものだと言い張ってきた。
彼に選ばれた時だって、そうだ。彼が選んでくれたから、私も彼と付き合うことを選んだフリをした。自分の本当の選びたいことなんて、今だってわからない。
メニューという、こんな小さなこと一つとっても。
うなだれて、シロさんに力なく首を振る。
「わからないです」
「好きなものくらいあるでしょ?」
シロさんの言葉が鋭い刃のように胸の奥に突き刺さる。まるで、叱られているみたいに感じてしまった。私は、自分が何を好きかわからない。でも、親に勝手に選ばれる人生も嫌だった。
ごはん屋さんに行けば、親が全て決めていたし、高校だって親の言うとおり選んだ。自分で選べないから。どこがいい? と聞かれて、すぐに答えられなかった。じっくり考えてみたら、答えは違ったのかもしれない。でも、考えることを放棄して、親の言いなりで生きてきた。
そして、今はただただ、親の言うことに歯向かいたくて、家を飛び出した。
生意気で、ずるくて、自分勝手だ。
自己反省会が脳内で勝手に始まりそうになって、首を横に振る。それから、もう一度メニューに目を落として、頷いた。
「ブロッコリーにします」
「わかった!」
お姉ちゃんが、いつだったか帰ってきた時に言っていた「スープカレーの素揚げのブロッコリーっておいしいんだよ!」という言葉を思い出したからだ。
結局私は、お姉ちゃんの二番煎じを自分からするんだ。お姉ちゃんと比較されることを嫌がって、怒っているくせに。
「あ、ラッシーはどうする?」
シロさんはいちいち私に確認を取るように、聞いてくる。自分で選びなさい、と人から言われるのは初めてな気がした。
シロさんが指差したメニュー表の中の、イチゴラッシーという文字に目が留まって、口の中に想像で甘酸っぱい味が広がる。
「イチゴラッシーにします」
「私はプレーンにしよ、すいませーん」
シロさんが頼んでくれているうちに、メニュー表にもう一度目を通す。
私が本当に食べたいものは何だろう。
心の中で問いかけながらメニューを見ても、想像が付かなくて、やっぱり選べそうにはなかった。
シロさんはソワソワという感じで、時折厨房の方を見つめる。私も一緒になって遠目に覗けば、ジュワワという音を立てながら野菜を揚げているところだった。
「一回食べたら恵もハマるわよ」
ドヤ顔で腕組みするシロさんが、あまりにも可愛い。だから、うんうんと大きく何度も頷く。
運ばれてきたスープカレーは、カレーというにはあまりにもスープが緩い。確かに、スープだ。スプーンで掬ってもとろみは一切なくシャバシャバのカレー。
ちらりとシロさんの様子を窺えば、嬉しそうに目をキラキラと輝かせているから正しい形なのだろう。
「ご飯はね、後でスープに入れるでも、スプーンで掬って浸してもいいの」
「そうなんですね」
「とりあえず食べましょ!」
嬉しそうにスプーンを構えて、一口食べ始めたシロさんの真似をしてスープを口に運ぶ。
スパイスが口の中でふわりと弾けて、舌も喉も鼻も刺激した。程よい辛さと、複雑な旨みが喉の奥に落ちていく。辛いのに、ほんのり甘い気もしてくる。スパイスが複雑に絡み合って、一言では形容し難い味をしていた。カレーというよりも、おいしいスープだ。素揚げされた色とりどりの野菜をどれから食べようか迷って、シロさんの真似をしようと顔を上げる。
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それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
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