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『マルコをたずねて三光年』編
旅の始まり
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※前章までのあらすじ
個人輸送業者のドワ子とマルコは、地球からド星に帰る際に、旅客船の護衛をしていた。奇妙な敵を相手にしてドワ子がピンチになったとき、何か不思議なことが起こって、どうやらドワ子だけが別な場所に飛ばされた。
移動手段たるマルコを失い、もはや生存が危ういと考えたドワ子だったが、そこに不思議な念話が送られる。
*****
『誰?』
『ふぉっふぉっふぉっ、まずは自分から名乗ったらどうじゃ?』
謎の丸くて黒くて大きいなにかは、そのように返してきた。
近くによってよく見ると、マルコとは違い、なんか変な感じの生き物(?)だった。
丸くて黒いのはいいとして、足の代わりに触手が何本か生えていてそれで移動しているようだ。
どちらが前か後ろかわからない、というのは目が体の何か所かにあるが、その場所が到底規則的には見えずに、どの方向を前だとあるいは上だといっていいのかわからない。
仮にドワ子が人間だとすると、さいころを振ってそれによって正気度がいくらか減りそうな見た目だったが、宇宙生物を見慣れているドワ子にとってはそうでもない。
『ド星出身のドワーフで、アリ……いえ、ドワ子でいいわ』
『ほう? 偽名か? 慎重なことだの』
『そういうんじゃないんだけど……本名が好きじゃないのよね』
ドワーフにとって足のつかない水は天敵だ。
基本的に筋肉質で重いため沈む。
かつてド星でも水深2mのプールの上に縄で吊るすという拷問があったぐらいだ。
それなのにアリエルという本名は有名な人魚の名前と同じだ。
名付けた方はそういう意味ではなかったらしいが、結果としてドワ子自身も本名が好きではないため、仕事でもその名前を使っている。
『なるほど、では儂の方もヨソ爺とでも呼んでおくれ』
『ヨソ爺?』
『まあ、おぬしから見ればよその世界の存在じゃからな』
『え? よその世界?』
『なんじゃ、気づいておらんかったか? ここはおぬしのいた宇宙とは別の宇宙、別の太陽系じゃ』
なんということだろう。
いつの間にかドワ子は異世界転移していたのだった。
『元の世界に戻る方法とか、無いのかな?』
『ふむ、自分の意思で来たわけではなさそうじゃな。良ければ事情を話してもらえんかの』
ドワ子は例の指輪を取り出して、それを彼に見せながらここに来た経緯をヨソ爺に話す。
『……なるほど、そういうことか……』
『何か知ってるの? おじいちゃん』
『うむ……まず、それはおそらく火星古代人の作った物で間違いない。じゃが、儂はそもそもヤツらとは敵対していた立場でな』
『え? そうなんだ』
『何を隠そう儂は元は邪神をやっとったんじゃ』
『だから語尾が『じゃ』なんだ……』
『そういうわけではないんじゃが……』
元邪神は目の前の娘がただ者でないと恐怖した。
『でも、今は邪神やめちゃったんだよね。飽きたとか?』
『そういうわけではないのじゃ。いや、儂も昔は調子に乗って『いあいあ』言わせとったんじゃが、ある時調子に乗りすぎて触手に矢を受けてしまってな……』
その時の傷が元で邪神を引退したそうだ。
ドワ子は「触手に矢?」と思ったものの、「まあ、骨格バランスとか狂ったのかもしれない」と納得した。
そして、そんな程度で引退するならマルコに比べればよっぽど常識的な存在だ、と邪神に親近感を覚えた。
『ともかく、詳しいあれこれは知らんが、確か同じような指輪が7つあって、それをすべて集めれば願いが叶うというぐらいしか知らんな』
『なるほど、これと同じものをあと6つか……』
ナントカボールみたいな話になってきた。
『儂も邪神時代だったらちょちょいのチョイでお前さんを元の世界に戻すことができたんじゃが、今となってはそれほど力もないしな』
『そうなんだ……でも、そこそこまだ強いよね』
『ふぉっふぉっふぉっ、まあそうじゃな』
「じゃあ、私をド星に連れて行ってくれる?』
『ああ、あそこか……ええぞ。面白そうじゃからしばらく手助けしてやろう』
普通に考えれば、邪神が手助けしてくれるという状況は警戒すべきなのかもしれない。 だが、他に方法が無いドワ子としては素直に助けを乞うしかなかった。
そして、ヨソ爺は『元』邪神であったため、あんまり邪悪ではなく、しかも引退していて暇を持て余していた。
そんなわけですんなりドワ子とヨソ爺は一緒にドラゴ……ではなく太陽系7つの秘宝の残り6つを探す旅に出るのだった。
*****
『お、あれじゃあれじゃ』
『わあ、やっと帰ってきたって感じだ』
マルコと同じぐらいのサイズで同じような形だったので同じように乗ったが、ヨソ爺は細部が違うのでちょっと苦戦した。
だが、そのあたりはヨソ爺が触手を使ってドワ子の体を固定したので何とかふり落とされることなく、ドワ子は故郷のド星の懐かしいシルエットに安どのため息をこぼす。
土星の周りの輪と置換された大きな輪状の岩塊、そして長旅を終えてきた旅人を出迎えるための大きなネオンサイン。
『あれ?』
いや、何かおかしい。
あのネオンサインは『イラッシャイマセ』の最後の『セ』が左右反転のものだったはずだ。
なぜ左右反転かは昔のアニメを参考にしたとかなんとかドワ子は聞いたことがある。
しかし、いま彼女の目の前にあるそのネオンサインはなぜか『オイデヤス』となっている。当然『ス』は左右反転している。
どうして変わっているのか、そしてどうしてここまで違うのに最後の1文字が反転しているのか?
その問いに答える者はいない。
少なくとも今はまだ……
*****
デオチ、ナンデ‼
というわけで、頭の悪い新章一発目お届けします。
新キャラ、ヨ=ソ爺登場です。
例によって先のことなど考えていないのですがよろしくお願いします。
気に入ったらフォローやブックマーク、評価などお願いします。
個人輸送業者のドワ子とマルコは、地球からド星に帰る際に、旅客船の護衛をしていた。奇妙な敵を相手にしてドワ子がピンチになったとき、何か不思議なことが起こって、どうやらドワ子だけが別な場所に飛ばされた。
移動手段たるマルコを失い、もはや生存が危ういと考えたドワ子だったが、そこに不思議な念話が送られる。
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『誰?』
『ふぉっふぉっふぉっ、まずは自分から名乗ったらどうじゃ?』
謎の丸くて黒くて大きいなにかは、そのように返してきた。
近くによってよく見ると、マルコとは違い、なんか変な感じの生き物(?)だった。
丸くて黒いのはいいとして、足の代わりに触手が何本か生えていてそれで移動しているようだ。
どちらが前か後ろかわからない、というのは目が体の何か所かにあるが、その場所が到底規則的には見えずに、どの方向を前だとあるいは上だといっていいのかわからない。
仮にドワ子が人間だとすると、さいころを振ってそれによって正気度がいくらか減りそうな見た目だったが、宇宙生物を見慣れているドワ子にとってはそうでもない。
『ド星出身のドワーフで、アリ……いえ、ドワ子でいいわ』
『ほう? 偽名か? 慎重なことだの』
『そういうんじゃないんだけど……本名が好きじゃないのよね』
ドワーフにとって足のつかない水は天敵だ。
基本的に筋肉質で重いため沈む。
かつてド星でも水深2mのプールの上に縄で吊るすという拷問があったぐらいだ。
それなのにアリエルという本名は有名な人魚の名前と同じだ。
名付けた方はそういう意味ではなかったらしいが、結果としてドワ子自身も本名が好きではないため、仕事でもその名前を使っている。
『なるほど、では儂の方もヨソ爺とでも呼んでおくれ』
『ヨソ爺?』
『まあ、おぬしから見ればよその世界の存在じゃからな』
『え? よその世界?』
『なんじゃ、気づいておらんかったか? ここはおぬしのいた宇宙とは別の宇宙、別の太陽系じゃ』
なんということだろう。
いつの間にかドワ子は異世界転移していたのだった。
『元の世界に戻る方法とか、無いのかな?』
『ふむ、自分の意思で来たわけではなさそうじゃな。良ければ事情を話してもらえんかの』
ドワ子は例の指輪を取り出して、それを彼に見せながらここに来た経緯をヨソ爺に話す。
『……なるほど、そういうことか……』
『何か知ってるの? おじいちゃん』
『うむ……まず、それはおそらく火星古代人の作った物で間違いない。じゃが、儂はそもそもヤツらとは敵対していた立場でな』
『え? そうなんだ』
『何を隠そう儂は元は邪神をやっとったんじゃ』
『だから語尾が『じゃ』なんだ……』
『そういうわけではないんじゃが……』
元邪神は目の前の娘がただ者でないと恐怖した。
『でも、今は邪神やめちゃったんだよね。飽きたとか?』
『そういうわけではないのじゃ。いや、儂も昔は調子に乗って『いあいあ』言わせとったんじゃが、ある時調子に乗りすぎて触手に矢を受けてしまってな……』
その時の傷が元で邪神を引退したそうだ。
ドワ子は「触手に矢?」と思ったものの、「まあ、骨格バランスとか狂ったのかもしれない」と納得した。
そして、そんな程度で引退するならマルコに比べればよっぽど常識的な存在だ、と邪神に親近感を覚えた。
『ともかく、詳しいあれこれは知らんが、確か同じような指輪が7つあって、それをすべて集めれば願いが叶うというぐらいしか知らんな』
『なるほど、これと同じものをあと6つか……』
ナントカボールみたいな話になってきた。
『儂も邪神時代だったらちょちょいのチョイでお前さんを元の世界に戻すことができたんじゃが、今となってはそれほど力もないしな』
『そうなんだ……でも、そこそこまだ強いよね』
『ふぉっふぉっふぉっ、まあそうじゃな』
「じゃあ、私をド星に連れて行ってくれる?』
『ああ、あそこか……ええぞ。面白そうじゃからしばらく手助けしてやろう』
普通に考えれば、邪神が手助けしてくれるという状況は警戒すべきなのかもしれない。 だが、他に方法が無いドワ子としては素直に助けを乞うしかなかった。
そして、ヨソ爺は『元』邪神であったため、あんまり邪悪ではなく、しかも引退していて暇を持て余していた。
そんなわけですんなりドワ子とヨソ爺は一緒にドラゴ……ではなく太陽系7つの秘宝の残り6つを探す旅に出るのだった。
*****
『お、あれじゃあれじゃ』
『わあ、やっと帰ってきたって感じだ』
マルコと同じぐらいのサイズで同じような形だったので同じように乗ったが、ヨソ爺は細部が違うのでちょっと苦戦した。
だが、そのあたりはヨソ爺が触手を使ってドワ子の体を固定したので何とかふり落とされることなく、ドワ子は故郷のド星の懐かしいシルエットに安どのため息をこぼす。
土星の周りの輪と置換された大きな輪状の岩塊、そして長旅を終えてきた旅人を出迎えるための大きなネオンサイン。
『あれ?』
いや、何かおかしい。
あのネオンサインは『イラッシャイマセ』の最後の『セ』が左右反転のものだったはずだ。
なぜ左右反転かは昔のアニメを参考にしたとかなんとかドワ子は聞いたことがある。
しかし、いま彼女の目の前にあるそのネオンサインはなぜか『オイデヤス』となっている。当然『ス』は左右反転している。
どうして変わっているのか、そしてどうしてここまで違うのに最後の1文字が反転しているのか?
その問いに答える者はいない。
少なくとも今はまだ……
*****
デオチ、ナンデ‼
というわけで、頭の悪い新章一発目お届けします。
新キャラ、ヨ=ソ爺登場です。
例によって先のことなど考えていないのですがよろしくお願いします。
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