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50. パパ活とか正体バレとか
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「裏取引の直前だったらしくて、悪い証拠が沢山あって会長さんとか幹部は全員逮捕されたって。東雲会は多分このまま解体することになるだろうって朱虎が言ってたよ」
風間くんが口笛を吹いた。
「スゲー、やるじゃん獅子神蓮司! 組織潰しちゃったのか」
「蓮司さんは怪我人の中にはいなかったらしいから、多分今は警察に戻ってるか、どこかに隠れてるんじゃないかな? 良かったね、環」
喜ぶかと思ったけど、環は苦々しげに舌打ちした。
「それはまずいな。兄はごたごたがおさまり次第動き出すぞ。いっそ怪我でもしていれば良かったのに」
「いやそれは無事で良かったと思うよ!? とりあえず、日曜に予定通り会えるかあとでメール送ってみる。見られる状況かわからないけど」
環はもう一度「チッ」と舌打ちした。
なんか、積極的に蓮司さんが傷つく方向に持って行こうとしている気がするけど、気のせいだろうか……?
「環センパイウケるわ~。なに、兄貴のこと嫌いなん?」
「別に嫌いでも好きでもない」
ニヤニヤしている風間くんに、環はむっつりと答えた。
「だが、兄が志麻にちょっかいを出している状況がどうにも気に食わん。私もまだ動揺しているのかもしれんな」
「へ~、環センパイも動揺とかするんだな」
風間くんがパイプ椅子をガコンと鳴らして寄り掛かった。
「つかさ、獅子神蓮司も迂闊だよなあ。妹との待ち合わせ時間ギリギリまで志麻センパイとデートしてるなんてさ」
「あ、違うの。あの日はデートじゃなくて、蓮司さんとはたまたま会ったんだ。学校帰りに電車乗り過ごしちゃってさ」
環が眉を上げた。
「制服姿の志麻と兄が一緒にいるのを見た時は、補導でもされているのかと思ったぞ。もしくはパパ活だな」
「パパ活って何?」
「援助交際だ」
「……。あのね、蓮司さんは朱虎の迎えを待つ間ギリギリまで一緒にいてくれただけで……」
「ああ、わざわざ来てくれたのに追い返していたな。朱虎さんも大変だ」
「だ、だって一緒に話聞かせるわけにもいかないでしょ! 結局、近くで待ってたし」
ガタン! と派手な音がした。
振り返ると、風間くんが椅子ごとひっくり返っていた。
「わっ、風間くん大丈夫!?」
助け起こそうと屈んで伸ばした手を、身を起こした風間くんがぐわっと掴んだ。
「ちょっと待て、今の話マジ?」
「へ? 今の話って……?」
「獅子神蓮司と話している間、朱虎さんが近くで待機してたって」
「えっ、うん。結局駅前で待ってたみたいだけど……?」
風間くんが真剣な顔になった。あたしの手を握ったまま、じっと考え込んでいる。
「どうしたの、風間くん?。何か気になることでもあった?」
「……あのさ、ちなみにその時ペンダントは持ってた? 朱虎サンから貰ったとかいう、防犯ブザーと催涙ガス入りの奴」
「これのこと? 持ってたよ、いつも持ち歩いてるし」
胸ポケットからペンダントを取り出してみせると、風間くんはあたしの手を離して深いため息をついた。
「マジか……いやでも、……うーん」
「え? 何? 何の話?」
妙に深刻そうな雰囲気だけど、全く意味が分からない。
「……盗聴のことか?」
ハテナマークだらけのままのあたしをそっちのけにして、環が口を開いた。
「それなら気にせずとも良いぞ。確認したところ、兄は潜入調査官として小型のジャマーを支給されて、いつも持ち歩いているそうだ。だから……」
「ゴメン。それ、オレが抜いた」
風間くんは最高に気まずそうな顔で言った。環がぴくりと眉を上げる。
「何だと」
「説明すると長いんだけど……とにかく、獅子神蓮司が持ってたジャマーは、日曜にオレがスリ取って朱虎サンに渡しちまったんだよな。まあ、紛失に気付いてたら新しいのを……」
「……どうかな。気づいていない可能性の方が高い」
二人が何の話してるのか全く分からないけど、やたら深刻な雰囲気で口をはさみにくい。
戸惑っていると、突然振り向いた環があたしの手をがしっと掴んだ。
「志麻」
「えっ、何?」
面食らうあたしの顔を、環が覗き込んでくる。
「私の兄と話した日、朱虎さんは何か変わったところはなかったか?」
「か、変わったところ?」
「獅子神蓮司について何か聞かれなかったかということだ」
「聞かれたって、別に……あ」
環に握られた手を見て、あたしは朱虎からもこんな風に手を握られたことを思い出した。
「そういえば、何か隠してることはないか、とか聞かれたっけ。何とかごまかしたけど……あ、その時にペンダントのことも言ってた。いざという時のために、絶対身に着けておいてくれって」
「……なるほど」
環は手を離すと、息を吐いた。風間くんが顔をしかめる。
「これもう間違いないっしょ」
「ああ。よく分かった」
「いや全然分かんないんですけど!?」
とうとう耐え切れず、あたしは叫んだ。
「さっきから二人とも何の話してるわけ? トウチョウとかペンダントとか……」
「ん~……もう仕方ねえよなコレ」
風間くんはがしがしと頭をかくと、気まずそうな顔であたしを見た。
「あのな、多分だけどさ……朱虎サン、獅子神蓮司の正体知ってると思う」
「……え!?」
「しかもソレ俺のせいだわ。マジでごめん」
「は? ええ!?」
意味が分からない。分からなさ過ぎてパニックだ。
「な、なんで朱虎が蓮司さんの正体知ってるの? しかも風間くんのせいってどういうこと?」
腕組みしたままの環がため息をついた。
「志麻、落ち着け。風間が説明するから、まずは座れ」
「う、うん」
「オレかよ! まあいいけどさ」
言われた通りあたしが座ると、風間くんはパイプ椅子を立て直して腰を下ろした。
「えーと……あのな、志麻センパイのペンダントなんだけどさ。それ、GPSと盗聴器が仕込まれてんだよ」
「……へ? とうちょう……!?」
風間くんが口笛を吹いた。
「スゲー、やるじゃん獅子神蓮司! 組織潰しちゃったのか」
「蓮司さんは怪我人の中にはいなかったらしいから、多分今は警察に戻ってるか、どこかに隠れてるんじゃないかな? 良かったね、環」
喜ぶかと思ったけど、環は苦々しげに舌打ちした。
「それはまずいな。兄はごたごたがおさまり次第動き出すぞ。いっそ怪我でもしていれば良かったのに」
「いやそれは無事で良かったと思うよ!? とりあえず、日曜に予定通り会えるかあとでメール送ってみる。見られる状況かわからないけど」
環はもう一度「チッ」と舌打ちした。
なんか、積極的に蓮司さんが傷つく方向に持って行こうとしている気がするけど、気のせいだろうか……?
「環センパイウケるわ~。なに、兄貴のこと嫌いなん?」
「別に嫌いでも好きでもない」
ニヤニヤしている風間くんに、環はむっつりと答えた。
「だが、兄が志麻にちょっかいを出している状況がどうにも気に食わん。私もまだ動揺しているのかもしれんな」
「へ~、環センパイも動揺とかするんだな」
風間くんがパイプ椅子をガコンと鳴らして寄り掛かった。
「つかさ、獅子神蓮司も迂闊だよなあ。妹との待ち合わせ時間ギリギリまで志麻センパイとデートしてるなんてさ」
「あ、違うの。あの日はデートじゃなくて、蓮司さんとはたまたま会ったんだ。学校帰りに電車乗り過ごしちゃってさ」
環が眉を上げた。
「制服姿の志麻と兄が一緒にいるのを見た時は、補導でもされているのかと思ったぞ。もしくはパパ活だな」
「パパ活って何?」
「援助交際だ」
「……。あのね、蓮司さんは朱虎の迎えを待つ間ギリギリまで一緒にいてくれただけで……」
「ああ、わざわざ来てくれたのに追い返していたな。朱虎さんも大変だ」
「だ、だって一緒に話聞かせるわけにもいかないでしょ! 結局、近くで待ってたし」
ガタン! と派手な音がした。
振り返ると、風間くんが椅子ごとひっくり返っていた。
「わっ、風間くん大丈夫!?」
助け起こそうと屈んで伸ばした手を、身を起こした風間くんがぐわっと掴んだ。
「ちょっと待て、今の話マジ?」
「へ? 今の話って……?」
「獅子神蓮司と話している間、朱虎さんが近くで待機してたって」
「えっ、うん。結局駅前で待ってたみたいだけど……?」
風間くんが真剣な顔になった。あたしの手を握ったまま、じっと考え込んでいる。
「どうしたの、風間くん?。何か気になることでもあった?」
「……あのさ、ちなみにその時ペンダントは持ってた? 朱虎サンから貰ったとかいう、防犯ブザーと催涙ガス入りの奴」
「これのこと? 持ってたよ、いつも持ち歩いてるし」
胸ポケットからペンダントを取り出してみせると、風間くんはあたしの手を離して深いため息をついた。
「マジか……いやでも、……うーん」
「え? 何? 何の話?」
妙に深刻そうな雰囲気だけど、全く意味が分からない。
「……盗聴のことか?」
ハテナマークだらけのままのあたしをそっちのけにして、環が口を開いた。
「それなら気にせずとも良いぞ。確認したところ、兄は潜入調査官として小型のジャマーを支給されて、いつも持ち歩いているそうだ。だから……」
「ゴメン。それ、オレが抜いた」
風間くんは最高に気まずそうな顔で言った。環がぴくりと眉を上げる。
「何だと」
「説明すると長いんだけど……とにかく、獅子神蓮司が持ってたジャマーは、日曜にオレがスリ取って朱虎サンに渡しちまったんだよな。まあ、紛失に気付いてたら新しいのを……」
「……どうかな。気づいていない可能性の方が高い」
二人が何の話してるのか全く分からないけど、やたら深刻な雰囲気で口をはさみにくい。
戸惑っていると、突然振り向いた環があたしの手をがしっと掴んだ。
「志麻」
「えっ、何?」
面食らうあたしの顔を、環が覗き込んでくる。
「私の兄と話した日、朱虎さんは何か変わったところはなかったか?」
「か、変わったところ?」
「獅子神蓮司について何か聞かれなかったかということだ」
「聞かれたって、別に……あ」
環に握られた手を見て、あたしは朱虎からもこんな風に手を握られたことを思い出した。
「そういえば、何か隠してることはないか、とか聞かれたっけ。何とかごまかしたけど……あ、その時にペンダントのことも言ってた。いざという時のために、絶対身に着けておいてくれって」
「……なるほど」
環は手を離すと、息を吐いた。風間くんが顔をしかめる。
「これもう間違いないっしょ」
「ああ。よく分かった」
「いや全然分かんないんですけど!?」
とうとう耐え切れず、あたしは叫んだ。
「さっきから二人とも何の話してるわけ? トウチョウとかペンダントとか……」
「ん~……もう仕方ねえよなコレ」
風間くんはがしがしと頭をかくと、気まずそうな顔であたしを見た。
「あのな、多分だけどさ……朱虎サン、獅子神蓮司の正体知ってると思う」
「……え!?」
「しかもソレ俺のせいだわ。マジでごめん」
「は? ええ!?」
意味が分からない。分からなさ過ぎてパニックだ。
「な、なんで朱虎が蓮司さんの正体知ってるの? しかも風間くんのせいってどういうこと?」
腕組みしたままの環がため息をついた。
「志麻、落ち着け。風間が説明するから、まずは座れ」
「う、うん」
「オレかよ! まあいいけどさ」
言われた通りあたしが座ると、風間くんはパイプ椅子を立て直して腰を下ろした。
「えーと……あのな、志麻センパイのペンダントなんだけどさ。それ、GPSと盗聴器が仕込まれてんだよ」
「……へ? とうちょう……!?」
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