不気味な念仏

いち こ

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七 河原

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岸に着くと、船頭はゆっくりとした口調で語る。
「お気を付けて、またのお越しを待っています」

何か無機質のような語り口で、温かみを感じられなかった。
「なんか嫌ね。幽霊か何かになってしまったみたいね」
 ミレイが言うのを聞きながら、サチが身を首を傾げる。

「何か変ですね。私が何年か前に渡った時は、こんな河原がなかったような気がします」
あたりを見回すと、河原が広がって、あちらこちらに石が積み上げられていた。

近所に住んでいるのだろうか?
女の子が数人、童歌わらべうたを歌いながら、石の上に石を積み上げていく。まるで、ヨーロッパの山々で見られるケルンのようなものが、あちらこちらに見られる。

「何をしているのでしょうか?」
 サチが側に寄っていくと、子供たちは逃げるように立ち去る。

ケケケと、およそ人でない声で笑い声を上げた。足が速い。

「待って! ただ、何をしていたか聞くだけだけど。あっ。光代みつよちゃん!」
 子供の中に知り合いに、サチの知り合いがいたようである。

「光代ちゃん待って。お姉ちゃんだよ。昔遊んだでしょう?」
 光代と呼ばれる三歳ぐらい童女がこちらを向いて、立ち止まる。

おかっぱ頭に両肩のところで髪の毛が、切りそろえている。まるで座敷童である。

「お姉ちゃんのことを覚えている? サチよ。覚えていない?」
 しかし、光代はニタリニタリと、笑いながら歯を見せたなり、他のわらわと走り去った。

「知り合いかい? ずいぶん、愛想が悪いねえ」
 ミレイがあきれたように言うと、サチがまたも首をかしげた。

「おかしいな。光代は幼い頃死んで、荼毘だびに伏したのだけども」
「そんな馬鹿なこと。死んだ子供が生き返るはずがあるまいし。他人のそら似じゃないかい?」

「そんなことはないと思うけど・・・。へんだなあ。第一、光代ちゃんと呼ぶと立ち止まったじゃない?」
 ハヤトが横から口を挟む。

「あんな大きな声で、叫ぶと、誰でもこちらを見るさ。それにしても、あのニタリ顔は何か気味悪かったなあ」
 そう言いながら、足元にあった石が十個ほど積み上がったケルンを蹴り倒した。

瞬間。カラスが三羽、頭上を飛び「カー」と大きく泣いた。
呼応するように、周りの木々に止まっていたカラスが、「カア。カア」と鳴く。

冷たい風が川面から吹いてきた。

ハヤトは、してはいけないことをしたような気持ちになった。

「何か、不気味だね。さっさと立ち去ろうよ。日が暮れるよ」
ミレイが先をせかすように言う。



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