不気味な念仏

いち こ

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三回忌①

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トンネルをやっとの事で抜けると、いつの間にか地下鉄の線路のような所を歩いていた。
「やはり地下鉄の路線につながっていた」

先を見ると駅のホームのようなところが見える。
明るい。あそこまで行くと外に出られる。急いだ。

「後ろから電車が来るよ!」
ミレイの言葉に後ろを振り返ると、遠くに電車のライトが見えた。

「やばい。轢かれる」
俺は、ミレイとサチの手を取って、横の壁のくぼみに入った。
二人の肩を抱き寄せて、くぼみの壁側にぐっと体を寄せると、電車がすぐに横を通り過ぎる。

風圧が来て、くぼみから落ちそうになったが、落ちてしまうと死んでしまうので、じっと我慢をする。
ほんの10秒ほどで電車が行き過ぎた。

「危なかったな。はやいところ、ホームに急ごう」
電車をやり過ごした後、三人でホームに急ぐ。また、電車が来ると大変だ。
先ほどの電車はホームを通過したのか、見えなかった。

「あの人、ツルハシで穴を掘っているよ」
途中、線路を治しているのだろう。ツルハシで盛んに穴を掘っている人夫の横を通った。

「こんにちは。大変ですね。ところで、この駅は何という駅なのですか?」
尋ねても、人夫は応えずに、黙々と穴を掘り続けた。

「無愛想だね。一言何とか言えばいいのに」
 サチが、後ろを振り返り、首をかしげて言う。

「でも、変よ。あの人、一人しか働いていない。工事ならば、もう少し人数がいても良いのに。第一顔色が真っ青」
 言われてみるとその通りである。こんな地下鉄の路線で、一人働きなど珍しかった。
 顔色も確かに青かった。

「そうさな。今日は不思議なことが多く起こる」

一言言うと、地下鉄のホームの先端に着いていた鉄のはしごを登るとホームに上った。

そのまま、駅のなかを通り、改札に行くが、誰もいない。
「駅員の誰もいない。全く不思議だ」

俺は「不思議」を連発しながら、外に出た。
外に出ると中央寺の前であった。

中央寺は、息子の葬式以来である。

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