極々普通の王太子、名前すら覚えて貰えず、弟に婚約者までも奪われたので王子辞めました。でも何か思っていたのと違う方向へ行ってませんか?俺!?

黄色いひよこ

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二章

独りで話して独りで消えて

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「その4つの次元に5つ目の時間を足せばこの5次元の空間になる。時間は光の速さで動き尚且つ停止している空間だ」


彼に言われるように、此処は、キラキラと何かが空気中で煌めき無数の軌跡を描きつつ、留まっている真っ白な世界だ。


「あれはお前が生きていた世界を、視覚的に分かり易くした空間だ。この5次元に俺達3人しか居ないのは、5次元を理解する俺達2人が、死にかけたお前を此処に引き込んだ為だ。お前には、死なれる訳にはいかなかったからな」


彼はそう言うと、片方の唇の端だけを吊り上げて、笑った。

それはそれは意味深な笑みで、シニカルに。


「僕が……、生きている? そんな…… 」


驚愕の目で彼を見るサフィシルに、彼はにかっと笑った。


「死んだと思ったか? 悪いがそうも言ってられん。俺達は元の姿に戻る必要が有るし、お前に死なれては、元に戻った時に帰る身体が無くなってしまうからな。なぁ、お前も気付いているよな、お前には膨大な魔力ってもんがあるが、体力は幼い子供程度しかないって事。俺はさぁ、無限って位の体力はあるが魔力はゼロだ。コレって可笑しいだろ? そう思わねえか? 」


結構彼は早口だった。

サフィシルは、彼の言葉に眉を寄せた。

不思議には思っていたのだ。

己の身体が異常だと言う事も。

彼に言われなくても気付いてはいたのだ。


「俺達は魂を二つに分断されて、それぞれ違う世界に落とされた、元は一つの魂でひとりの人間なんだ。だから俺はお前に戻る」

「は? 戻るって? 」


そうサフィシルが聞いて彼が目を眇めた。


「文字通りだが? 」


そう言ってくつくつと笑う。


「心配無い。俺がお前の中に戻っても意識のベースはお前だ。俺の知識と経験と記憶がお前と混じり合うだけで、意識はお前が中心だ。安心しろ。俺はこれでも結構長生きしててな、天寿を全うしている。これ以上生きるつもりはねぇ。地球で60年生きてアストロノウツとして太陽系の外宇宙に出る為にスリープして100年。新天地で20年生きた。合計180年だぞ、もう十分だよ。お前は生きろ、お前の時間を見せて貰ったが、ハッキリ言って呆れた。ちゃんと戻って様々な誤解を説いて来い! 俺が手助けしてやるから…… 」


そう言って、彼は問答無用でガシッとサフィシルの肩を掴んだ。

反論する余地すら与えて貰えない。

独りで色々と話して彼は一瞬で姿を変えた。

青白い焔の玉へと。




そして、唐突にサフィシルの中へと潜り込んでしまった。
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