性悪転生王子、全てはスローライフのために生きる

犬っころ

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西のアクアデル編

性悪王子、ラヴェリオンがえろすぎて死ねる*

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 「あ……ぁ……もう……無理……」


 喉から漏れた声は、自分でも驚くほど力が抜けていた。
 全身の筋肉は余韻のせいで弛緩し、足先からじんわりと力が抜けていく。
 視界の端で揺れるのは、くしゃくしゃになったシーツと、汗に張り付いた自分の髪。
 心臓はまだ速く、耳の奥で血流の音が響いている。
 吐き出したばかりの温い熱が腹の奥で広がり、下腹部には微かな脈動が残っていた。

 ――正直、もう動きたくない。
 このまま目を閉じて、呼吸が落ち着くまで微睡んでいたい。
 けど……ふと脳裏に浮かぶのは、背後のラヴェリオンの存在。
 あいつはまだ終わってない。俺だけが解放されたまま、あいつの手は俺の出した物で汚れただけだ。

 罪悪感? いや、ほんの少しだけな。

 それより「でも、もう寝たい」という我儘な欲求の方が圧倒的に勝っていた。


 「……遅漏すぎ。お前もさっさと終わらせて寝ろ。俺はもう寝る」


 わざとぶっきらぼうに言い放ち、シーツを肩まで引き寄せて背中を向ける。
 この体の重さと温もりを抱えたまま沈む眠り――それを邪魔されたくない。

 ……が、甘かった。

 背後から、低く湿った声が耳を刺す。


 「……お前だけ、俺に擦られて気持ちよくなったら、それで終わりか?」


 その声音は湿度を含んだ刃のように鋭く、耳の奥に刺さると同時に脳髄をくすぐった。


 「普通はこちらのも手伝うのが筋だろう……自己中な、わがまま王子だな」


 息を吐くたびに背中に落ちる熱。
 次の瞬間、腰骨を大きな手に掴まれ、背中に灼けるような熱が押し付けられる。
 硬く主張するその存在感が、布越しでも容赦なく伝わり、下腹部に別種の熱を植え付けてくる。

 背後から回された腕は、俺の逃げ場を奪うように胸の前でがっちりと固定する。
 その拘束感は、まるで「お前の自由は俺が許すまでない」と無言で告げられているようだった。

 ――逃げられない。
 いや、逃げることなんて最初から許されていない。
 それを骨の芯まで理解してしまっている自分が、腹立たしいほど悔しい。


「……しゃーなし、手だけ貸してやる」


 俺は仰向けのまま、気怠げに右手を伸ばす。
 指先が、熱を孕んだ異物に触れた瞬間――それは、俺の呼吸すら一瞬だけ止めるほどの質量感を伴っていた。
 掌にのしかかる圧力。皮膚の裏側を突き上げる鼓動。
 熱い。硬い。重い。まるで生きた金属のようにぎっしりと詰まっている。

 根元に手を滑らせ、全体を包み込む。
 その瞬間、掌全体に生温かい熱が吸い付くように広がり、肉の輪郭を指の節でなぞるたび、表面の張りが確かに伝わってくる。
 皮膚は滑らかだが、戦場で鍛えられた身体特有の血管の隆起と、皮膚の下でせわしなく脈打つ生命力が指先を叩く。

 ――バキバキだな。

 そう思った瞬間、胸の奥が妙に満たされた。
 こいつは俺を見て、俺を触って、こうなった。
 その事実が、喉の奥に甘くねっとりした優越感を垂らし込む。
 支配しているのは俺――その確信が、体温より熱い陶酔感となって背筋を舐め上げる。

 ゆっくりと指の力を強め、握り込む。
 根元を軽く締め上げ、親指で表面を円を描くように撫で回す。
 そのたびに微かな震えと、硬さの奥に隠された柔らかさが混ざり合って、掌の中で生々しい生き物のように脈打つ。
 時折、力を抜いてなぞり、次の瞬間に急激に締め付ける――その緩急が、自分でも病みつきになるほどの反応を返してくる。

 男同士だから、面倒な恋愛感情も無い。
 ただ肉体と反応だけを相手にできる。
 柔らかく華奢な女の手には出せない、この無骨な刺激――剣ダコで固くなった皮、節立った指、掠れた皮膚のざらつき。
 その粗さが逆に鋭い刺激を生み、掌と指先に電流のような感覚を刻み込む。


 「ほら、どうだ……」


 わざと押し付けるように上下へと動かす。
 手首から肩までに伝わる重量と熱。
 相手の反応が指先に吸い込まれ、こちらの心拍まで合わせて速くなる。

 これはもう、ただの快楽じゃない。
 支配と服従の綱引きだ。

 男同士も、悪くない。いや、この瞬間に限っては――女よりもずっと面白い。

それに……もう、俺のおかずは完全にラヴェリオンだ。
 自分で認めるのも癪だが、事実として、今さら女じゃ駄目だ。柔らかくて温いだけの穴じゃ、この得体の知れない高揚へは導いてくれない。
 背筋を這い上がる電流のようなこの感覚は、こいつの指と声でしか引き出せない。


「……下手くそだな」


 低く吐かれた言葉が、耳の奥で鈍く響く。


「やってやってるだけ感謝しろ」


 口では突き放すように言いながら、その声色にはわずかな笑みが滲んでいた。
 そして俺の手はほんの僅かに力を緩めたり締めたりだ

 そもそも、男のそれを握ったことなどない。上手くてたまるか
 ラヴェリオンの記憶にあるのは、女の柔らかく湿った割れ目、その奥で震える核、そして両手に余るほど豊満な乳の弾力……そればかりだ。
 男にどうこうされた経験も、した経験もない――前世の俺だって同じだ。


「……もういい。足を貸せ」


 命令のような低い声。
 次の瞬間、俺の体は軽々と抱き起こされ、抵抗する間もなく四つん這いに組み直された。
 膝はわずかにベッドから浮き、背中にひやりとした空気が滑り込む。
 腰を押さえる手は、妙に優しく、しかしその優しさが逆に逃げ場を封じ込める。
 尻をわずかに高く持ち上げられ、胸と腹を沈めるように姿勢を調整される。
 その屈辱的な形に、心臓が嫌な意味で早鐘を打った。

 ――ヒヤッ。


「……っ冷たっ!」


 太ももの内側に、予告もなく冷たいものがすっと塗り込まれた。
 ジェルが薄く伸び、皮膚の上に滑らかな膜を作る。
 塗られた部分からじわじわと冷えが這い上がり、同時にそこが異様に敏感になっていく。

 腰を引こうとした瞬間、背中を軽く押さえつけられた。ほんとに逃げ道がない。まぁ、どうせマグロになるつもりしかないからいいけど。


「お前がいつも使ってるボディジェルだ。……暫く大人しくしてろ」


 低く、耳元で囁かれる声は確信に満ち、俺の反応を楽しんでいる。
 ジェルの匂いが微かに漂い、鼻腔の奥をくすぐった。


「お、おい……ちょ、素股は話が違うだろ」


 声は上擦り、情けなく震えている。
 腹の奥が熱くなるのが自分でも分かる。理性と本能がせめぎ合い、体はじわじわと前者に裏切られていく。

 俺は枕を抱き、顔を埋めた。
 何かやばいことをしている自覚は、もちろんある。
 けれど……この先に待ち受けるであろう圧倒的な快楽を思えば、背中を這い上がる寒気すら甘美に感じる。
 心臓が一拍ごとに熱を帯び、血流が全身を巡るたび、緊張と期待が混ざり合った妙な息が喉から漏れる。

 恐怖と高揚、その境界線はもう見えない。
 天秤は、確実に快楽の方へと傾き始めていた。

ラヴェリオンの腰が、容赦なく俺の尻に打ち付けられる。
挿入されているわけじゃない――それなのに、そこにあるのは生々しい肉の熱と脈動、陰嚢が俺の尻の根元を打つたび、低く鈍い快感が背骨を駆け上がる。

裏筋が俺のエクスカリバーの裏を擦り、陰嚢が校門のすぐ下を叩くたびに、まるでそこから直接痺れが走るようだ。


「くっ…、あ…」


自分でも情けないと思う声が漏れる。未貫通なのに、頭の奥まで揺さぶられている錯覚――いや、錯覚どころか、脳が勝手に“これは中まで突き込まれている”と信じ込んでしまうほどの摩擦だ。

ラヴェリオンは涼しい顔で、ただ出すためだけの獣のようなリズムで腰を振り続ける。俺をイカせるつもりなんてない、ただ自分が気持ちよくなるために打ち付けているのが分かる。それが、逆に胸の奥をざわつかせ、悔しいのに熱くなる。


「は…っ、あ…、くそ…」


腰がぶつかるたびにイキそうになる。何度も、何度も。
俺は無意識に腰を引こうとするが、背中から肩までを大きな手に押さえ込まれ、逃げ場を与えられない。

そして、唐突にラヴェリオンの動きが荒くなる。
一瞬、息を詰めた俺の背筋を震わせるような熱が、背中一面にぶちまけられた。どくどくと脈打つ感触が、皮膚越しに伝わってくる。


「……」


しばらく動かず、荒い呼吸だけが耳に落ちる。

背中越しに伝わる熱と脈動に翻弄されながら、ふと横を振り向いた。
その瞬間、視界に飛び込んできたのは、汗で額の髪を濡らし、わずかに食いしばった顎のライン、そして鋭くも獣じみた光を帯びたラヴェリオンの瞳だった。

――雄々しい。
ただでさえ人目を奪う顔立ちなのに、今のそれは戦場で獲物を仕留める刹那の獣の顔だ。

喉が勝手に鳴る。
呼吸が熱い。
腰を打ち付けるたびに落ちる影が、その逞しい頬の輪郭を際立たせ、濡れた睫毛の先から零れる汗が頬を滑り落ちていく。


「……っ」


言葉にならない。
エロすぎて、心臓が一瞬止まるかと思った。
全身がじわりと熱を帯び、頭が白くなる。

やっぱメイン攻略者はイケメンだな

やがてラヴェリオンはタオルを手に取り、無造作に、しかし妙に優しい手つきで背中の熱を拭き取った。
温もりが消えた背中に、涼しい風が触れる。その心地よさに、まぶたが急に重くなった。

元々眠さは限界だったのだ。

俺は、そのまま抵抗もせず眠りに落ちた。
まるで、深夜にだけ許される秘密の取引を終えたあとのように――。

――今夜の結論。
ラヴェリオンがえろすぎて、死ぬ。
あの雄々しい顔、戦う獣のような眼差し、汗で濡れた逞しい首筋と、わずかに開いた口から漏れる荒い息――全部が、反則だ。

そして俺は……ちょろすぎて、もうどうしようもない。
ほんの数秒見つめられただけで、心も体もあっさり陥落。

やばいことをしている自覚はあるのにやめられない。

くそ、俺は王族で、プライドも高くて、簡単になびく男じゃないはずなのに――
今夜だけは、完全に敗北だ。

























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