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北の氷焔山地編
性悪王子、ドラゴンの性欲にドン引き
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俺はまだ幼い無垢な駄竜たちに、この場の現実を見せたくなかった。だからこそ彼らを入口に残し、一人で儀式の間へと踏み込む。
中から漏れ出す声が、耳を打った。
押し殺すようでいて、どうしようもなく洩れ出てしまった呻き。
――ジークの声だ。
荒く掠れたその響きには、苦悶と快楽の入り交じったどうしようもない色が滲んでいた。
「……っ、ぁ……っ……く……!」
息を詰めた。胸の奥がざらつく。
あれは俺がよく知っている響きだった。
自分自身が体験してしまった、あの屈辱と背徳の感覚。
――ケツ穴で感じてしまっている。
俺は唇を噛み、冷笑を浮かべた。
「……俺と同じだな。ざまぁみろ」
そう吐き捨てたが、胸の奥には拭えぬざわめきがあった。
救い出すべき仲間の姿を見届ける覚悟を、強引に自分へ言い聞かせるしかなかった。
けれど――そうだ、あまり夜更けまでここに残っていては、さすがに怪しまれる。
俺は鼻をつまみ、襖に手をかけた。何が充満しているか知りたくもない。匂いで理解できてしまう自分の方が嫌だった。
「……お前ら駄竜だろ、人間相手だぞ。せめて、手加減くらいしてやれ」
声をかけても、その腰の律動は一切緩むことはない。
返事をする代わりに、軋む畳と、ジークの喉から絞り出される声が答えた。
「ぁ……ぁぁっ……や……っ……」
壊れた玩具のように喘ぎ続ける姿は、惨めで、あまりに哀れだった。
――むごい。惨い。俺は目を逸らしそうになりながら、それでも逸らせなかった。
鼻を突く酒の匂い。吐き気を催すほど濃い熱気。
……ああ、うちの可愛い駄竜たちを連れてこなくてよかった。
心底そう思い、冷たい汗が背を伝った。
次の瞬間――ジークと、目が合った。
あの馬鹿はすでに壊れ果て、トコロテンを吹き出し、おしっこまで垂らしていた。
俺はその光景を直視してしまい、気まずさに喉が詰まる。
そして何を思ったのか、俺の口は勝手に動いた。
「……気持ちいいか? ジーク」
――言ってしまった。
違う、違うだろ俺。何を慰めたつもりだ。
いや、今なら「ざまぁみろ」って笑ってやれたのに。
一回でいいからやり直させて欲しい。
「っ゛ぅうっ、人でなしぃ……!」
しゃがれ声でそう吐き捨てた。
どうやらまだ、理性の灯火は消えていないらしい。
……ああ、残酷な話だ。正気を保ったまま、代わる代わる弄ばれる。
その分だけ、壊れるのも遅く、苦しみは長い。
酒と汗と精臭が混ざり合ったこの空間で、ジークは人間としての矜持を失わぬよう、必死に踏みとどまっている――だが、その崩壊は時間の問題だ。
「おい、成人済み駄竜共」
俺は鼻を摘まんだまま、乱痴気騒ぎの中心に声を投げた。
「こいつ、人間だからな?壊すなよ。俺の護衛だ」
言い捨てると、腰を振るのも止めずに奴らは口々に返す。
「ん、分かったー」
「分かってる分かってる」
「安心しろ、人間って丈夫だろ?」
……分かってねぇ。
この調子じゃ、壊すどころか“新しい生き物”にされかねない。
俺がもう回収は後回しだと背を向けた瞬間だった。
一際甲高い、耳を裂くようなジークの叫びが響く。
「――俺達と番になるか? ほら、誓いのやつ」
「なんだっけ。血だろ、血。飲ませりゃいい」
次の瞬間、駄竜共は一斉にジークへ噛みついた。肩、鎖骨、太腿。
白い肌に赤がにじみ、奴らは自分の親指の腹を噛み切ると、滲む血をジークの唇へ押し付ける。
「誓いますか? 誓ったら一旦やめてやる」
「ぁあああっ、ち゛かぅ゛……っ、番、なりゅぅうぅ゛!!」
その声は悲鳴なのか、快楽なのか――俺にはもう区別がつかない。
……何ともまぁ、下卑た誓いだ。
俺が初めて見た「番」はルルとフェリリアのもので、あれは息を呑むほど神秘的だった。
だが、この駄竜共は違う。まさかの“共有”。気まぐれにも程がある。
おめでとう、ジーク。
ほぼ永遠を生きる資格を与えられたじゃないか。
だが――今のこいつの頭じゃ、その重みすら理解していないだろう。
快楽に呑まれて、空っぽの瞳で震えているだけだ。
……あーあ。
どうしてこうなるんだろうな。
畳の上に転がるジークは、五人のドラゴンに囲まれ、息も絶え絶えだった。
首筋や手首には、竜の牙で付けられた赤い噛み跡。
それぞれの指先を噛み切った血を、確かにジークは飲んでしまった。
つまりもう――五人のドラゴンと「共有の番」になっている。
「……おめでとう、ジーク。人間のくせに、永遠を生きられる体になったな」
俺は襖を開け放ちながらそう言った。
ドラゴン達は笑いながら口々に叫ぶ。
「な!ちゃんと誓ったよな!」
「これで仲間だ!」
「俺らの人間番だ!」
ジークは荒い呼吸の合間に、かすれ声で俺を睨む。
「っ……ざけんな……俺は……っ、こんなの望んで……」
「でも誓ったろ?“番になる”ってな」
俺は皮肉気に笑って肩を竦めた。
ジークはその場に縋りつくように俺の服を掴み、涙に濡れた目で言った。
「セレヴィス……っ、助けろ……頼む……」
「はいはい。しょうがねぇな」
俺は駄竜共を一睨みし、床に膝をついてジークを抱き起こした。
ドラゴン達は面白がるようにざわつくが、誰も本気で止めては来ない。
「共有の番だって?気まぐれにも程があるだろ。
こいつ壊したら焔に報告すっからな。覚悟しとけよ」
その一言で、さすがにドラゴン達も肩をすくめ黙り込んだ。
背中にジークを担ぎ、儀式の間を出る。
その瞬間、ジークが俺の首元に顔を押し付けて、かすかに呟いた。
「……俺、もう……人間じゃなくなっちまったのか……」
「さぁな。けど少なくとも――お前はまだ、俺の護衛だ」
そう言って俺は、泣き疲れたジークを担いだまま、酒臭い空気から逃げるように歩き出した。
中から漏れ出す声が、耳を打った。
押し殺すようでいて、どうしようもなく洩れ出てしまった呻き。
――ジークの声だ。
荒く掠れたその響きには、苦悶と快楽の入り交じったどうしようもない色が滲んでいた。
「……っ、ぁ……っ……く……!」
息を詰めた。胸の奥がざらつく。
あれは俺がよく知っている響きだった。
自分自身が体験してしまった、あの屈辱と背徳の感覚。
――ケツ穴で感じてしまっている。
俺は唇を噛み、冷笑を浮かべた。
「……俺と同じだな。ざまぁみろ」
そう吐き捨てたが、胸の奥には拭えぬざわめきがあった。
救い出すべき仲間の姿を見届ける覚悟を、強引に自分へ言い聞かせるしかなかった。
けれど――そうだ、あまり夜更けまでここに残っていては、さすがに怪しまれる。
俺は鼻をつまみ、襖に手をかけた。何が充満しているか知りたくもない。匂いで理解できてしまう自分の方が嫌だった。
「……お前ら駄竜だろ、人間相手だぞ。せめて、手加減くらいしてやれ」
声をかけても、その腰の律動は一切緩むことはない。
返事をする代わりに、軋む畳と、ジークの喉から絞り出される声が答えた。
「ぁ……ぁぁっ……や……っ……」
壊れた玩具のように喘ぎ続ける姿は、惨めで、あまりに哀れだった。
――むごい。惨い。俺は目を逸らしそうになりながら、それでも逸らせなかった。
鼻を突く酒の匂い。吐き気を催すほど濃い熱気。
……ああ、うちの可愛い駄竜たちを連れてこなくてよかった。
心底そう思い、冷たい汗が背を伝った。
次の瞬間――ジークと、目が合った。
あの馬鹿はすでに壊れ果て、トコロテンを吹き出し、おしっこまで垂らしていた。
俺はその光景を直視してしまい、気まずさに喉が詰まる。
そして何を思ったのか、俺の口は勝手に動いた。
「……気持ちいいか? ジーク」
――言ってしまった。
違う、違うだろ俺。何を慰めたつもりだ。
いや、今なら「ざまぁみろ」って笑ってやれたのに。
一回でいいからやり直させて欲しい。
「っ゛ぅうっ、人でなしぃ……!」
しゃがれ声でそう吐き捨てた。
どうやらまだ、理性の灯火は消えていないらしい。
……ああ、残酷な話だ。正気を保ったまま、代わる代わる弄ばれる。
その分だけ、壊れるのも遅く、苦しみは長い。
酒と汗と精臭が混ざり合ったこの空間で、ジークは人間としての矜持を失わぬよう、必死に踏みとどまっている――だが、その崩壊は時間の問題だ。
「おい、成人済み駄竜共」
俺は鼻を摘まんだまま、乱痴気騒ぎの中心に声を投げた。
「こいつ、人間だからな?壊すなよ。俺の護衛だ」
言い捨てると、腰を振るのも止めずに奴らは口々に返す。
「ん、分かったー」
「分かってる分かってる」
「安心しろ、人間って丈夫だろ?」
……分かってねぇ。
この調子じゃ、壊すどころか“新しい生き物”にされかねない。
俺がもう回収は後回しだと背を向けた瞬間だった。
一際甲高い、耳を裂くようなジークの叫びが響く。
「――俺達と番になるか? ほら、誓いのやつ」
「なんだっけ。血だろ、血。飲ませりゃいい」
次の瞬間、駄竜共は一斉にジークへ噛みついた。肩、鎖骨、太腿。
白い肌に赤がにじみ、奴らは自分の親指の腹を噛み切ると、滲む血をジークの唇へ押し付ける。
「誓いますか? 誓ったら一旦やめてやる」
「ぁあああっ、ち゛かぅ゛……っ、番、なりゅぅうぅ゛!!」
その声は悲鳴なのか、快楽なのか――俺にはもう区別がつかない。
……何ともまぁ、下卑た誓いだ。
俺が初めて見た「番」はルルとフェリリアのもので、あれは息を呑むほど神秘的だった。
だが、この駄竜共は違う。まさかの“共有”。気まぐれにも程がある。
おめでとう、ジーク。
ほぼ永遠を生きる資格を与えられたじゃないか。
だが――今のこいつの頭じゃ、その重みすら理解していないだろう。
快楽に呑まれて、空っぽの瞳で震えているだけだ。
……あーあ。
どうしてこうなるんだろうな。
畳の上に転がるジークは、五人のドラゴンに囲まれ、息も絶え絶えだった。
首筋や手首には、竜の牙で付けられた赤い噛み跡。
それぞれの指先を噛み切った血を、確かにジークは飲んでしまった。
つまりもう――五人のドラゴンと「共有の番」になっている。
「……おめでとう、ジーク。人間のくせに、永遠を生きられる体になったな」
俺は襖を開け放ちながらそう言った。
ドラゴン達は笑いながら口々に叫ぶ。
「な!ちゃんと誓ったよな!」
「これで仲間だ!」
「俺らの人間番だ!」
ジークは荒い呼吸の合間に、かすれ声で俺を睨む。
「っ……ざけんな……俺は……っ、こんなの望んで……」
「でも誓ったろ?“番になる”ってな」
俺は皮肉気に笑って肩を竦めた。
ジークはその場に縋りつくように俺の服を掴み、涙に濡れた目で言った。
「セレヴィス……っ、助けろ……頼む……」
「はいはい。しょうがねぇな」
俺は駄竜共を一睨みし、床に膝をついてジークを抱き起こした。
ドラゴン達は面白がるようにざわつくが、誰も本気で止めては来ない。
「共有の番だって?気まぐれにも程があるだろ。
こいつ壊したら焔に報告すっからな。覚悟しとけよ」
その一言で、さすがにドラゴン達も肩をすくめ黙り込んだ。
背中にジークを担ぎ、儀式の間を出る。
その瞬間、ジークが俺の首元に顔を押し付けて、かすかに呟いた。
「……俺、もう……人間じゃなくなっちまったのか……」
「さぁな。けど少なくとも――お前はまだ、俺の護衛だ」
そう言って俺は、泣き疲れたジークを担いだまま、酒臭い空気から逃げるように歩き出した。
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