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北の氷焔山地編
性悪王子、ジークのケツを叩く
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三ヶ月なんて、気付けば瞬きする間に過ぎていた。
俺たちは焔の城を後にし、王都へ帰る日を迎えていた。
荷物の片付けをしているのは――もちろんジークだ。護衛だのなんだの言っても、最終的にこういう雑用は全部こいつがやる羽目になる。
だがそのジーク、時折「ぐぅっ」と呻いては腰を押さえ、畳に座り込んでいる。
……あぁ、まただな。
「なぁジーク、お前……昨日も抱き潰されたんだろ?」
俺がわざとらしく声を掛けると、ジークはピクッと反応し、手にしていた荷を落とした。
「……っ、言うな」
耳まで真っ赤だ。
「いやいや気になるだろ。五人と番になったんだろ?どうやって回してんの?交代制?シフト?」
俺が畳みかけると、ジークは膝を抱えて呻くように答えた。
「……そこ聞くかよ……。土日休みで……日替わり週五セックスだ」
――バイトかよ。俺は吹き出しそうになった。
「へぇ、ちゃんと労基法守ってるじゃん。で、一番ヤバイの誰?」
ジークはしばし沈黙したが、観念したように吐き捨てる。
「……ドランク。あいつが一番ヤバイ。酒癖最悪で、すぐ絡んでくる。酔ったまま押し倒されると……マジで死ぬかと思う」
ドランク。俺はまだ会ったことはないが、駄竜共は既に遭遇しているらしい。
カリム曰く――「我、あいつぎ陽キャすぎて無理、ノリ軽すぎ、でも面白い」。
……なるほど。ジークが潰れるわけだ。
ジークは腰をさすりながら、最後の荷物をまとめていた。
床に座り込んでは「いてて……」と呻き、立ち上がっては「ぐぅぅ……」と呻く。傍から見てると、どう見ても腰やられたオッサンだ
――そこで俺は、ちょっとした思いつきを実行した。
パァン!
乾いた音が部屋に響いた。
俺の掌がジークのケツをしっかり捉えた瞬間だ。
「うぎゃああっ!?おま、なにしやがるっ!!」
「いやぁ~、いい音鳴ったな。で、ジーク?」
「……な、なんだよ」
「次の番のシフト表、ちゃんと作っとけよ?」
「……は?」
「日替わり週五って言ってただろ?抜けがあるとブラック職場だからな~。労基案件になっちまうぞ?」
「誰が職場だ!!俺は護衛だっ!!!」
「護衛ぃ? ヤリ腰で戦えない護衛になんて給金出さねぇけど?」
「~~~~~~っっっ!!!」
ジークは耳まで真っ赤にして、最後には荷物を投げ出した。
「俺の人生返せえええ!!!」
俺は腹を抱えて笑った。
……あーもう、やっぱコイツいじるの最高におもろい。
「俺の人生返せえええ!!!」
ジークがカーペットの上に突っ伏して絶叫する。散らかった荷物と、半分詰めかけたトランクケースが部屋の隅に転がっていた。
「ハハッ、腰抜け護衛が哀れだな」
俺はベッドに腰掛け、クッションを抱えながら爆笑していた。
そのとき――。
「……何してるの、二人とも」
洋室のドアが音もなく開き、兄上が姿を現した。背筋を伸ばし、涼しい顔。だが言葉は呆れそのものだった。
「早く荷物まとめてね。馬車が出る時刻は待ってくれないよ」
「あ、はい……」
ジークはまるで軍人のように反射で返事をした。腰を押さえながら。
続いて入ってきたのはラヴェリオン。
「騒いでないで、とっととしろ」
片腕で駄竜二匹――カリムとグランデ――をひょいっと抱え、もう片方の手でトランクを持っている。まるで荷物とペットを一緒に持ち運ぶ雑な執事のようだ。
「ぴるぅ~」
「ふぎゃっ」
駄竜どもは空気を読まずに、ラヴェリオンの腕の中でバタバタ。
「……っははは!」
俺は思わず吹き出した。せっかく兄上とラヴェリオンが威厳たっぷりに登場したのに、駄竜二匹のおかげで場の緊張感は一瞬でゼロだ。
「おいセレヴィス、笑ってないで荷物ぐらい持て!」
「やだー俺、王子だし」
ジークはヨロヨロと洋服をトランクに詰め込みながら、小声で俺を睨んだ。
俺たちは焔の城を後にし、王都へ帰る日を迎えていた。
荷物の片付けをしているのは――もちろんジークだ。護衛だのなんだの言っても、最終的にこういう雑用は全部こいつがやる羽目になる。
だがそのジーク、時折「ぐぅっ」と呻いては腰を押さえ、畳に座り込んでいる。
……あぁ、まただな。
「なぁジーク、お前……昨日も抱き潰されたんだろ?」
俺がわざとらしく声を掛けると、ジークはピクッと反応し、手にしていた荷を落とした。
「……っ、言うな」
耳まで真っ赤だ。
「いやいや気になるだろ。五人と番になったんだろ?どうやって回してんの?交代制?シフト?」
俺が畳みかけると、ジークは膝を抱えて呻くように答えた。
「……そこ聞くかよ……。土日休みで……日替わり週五セックスだ」
――バイトかよ。俺は吹き出しそうになった。
「へぇ、ちゃんと労基法守ってるじゃん。で、一番ヤバイの誰?」
ジークはしばし沈黙したが、観念したように吐き捨てる。
「……ドランク。あいつが一番ヤバイ。酒癖最悪で、すぐ絡んでくる。酔ったまま押し倒されると……マジで死ぬかと思う」
ドランク。俺はまだ会ったことはないが、駄竜共は既に遭遇しているらしい。
カリム曰く――「我、あいつぎ陽キャすぎて無理、ノリ軽すぎ、でも面白い」。
……なるほど。ジークが潰れるわけだ。
ジークは腰をさすりながら、最後の荷物をまとめていた。
床に座り込んでは「いてて……」と呻き、立ち上がっては「ぐぅぅ……」と呻く。傍から見てると、どう見ても腰やられたオッサンだ
――そこで俺は、ちょっとした思いつきを実行した。
パァン!
乾いた音が部屋に響いた。
俺の掌がジークのケツをしっかり捉えた瞬間だ。
「うぎゃああっ!?おま、なにしやがるっ!!」
「いやぁ~、いい音鳴ったな。で、ジーク?」
「……な、なんだよ」
「次の番のシフト表、ちゃんと作っとけよ?」
「……は?」
「日替わり週五って言ってただろ?抜けがあるとブラック職場だからな~。労基案件になっちまうぞ?」
「誰が職場だ!!俺は護衛だっ!!!」
「護衛ぃ? ヤリ腰で戦えない護衛になんて給金出さねぇけど?」
「~~~~~~っっっ!!!」
ジークは耳まで真っ赤にして、最後には荷物を投げ出した。
「俺の人生返せえええ!!!」
俺は腹を抱えて笑った。
……あーもう、やっぱコイツいじるの最高におもろい。
「俺の人生返せえええ!!!」
ジークがカーペットの上に突っ伏して絶叫する。散らかった荷物と、半分詰めかけたトランクケースが部屋の隅に転がっていた。
「ハハッ、腰抜け護衛が哀れだな」
俺はベッドに腰掛け、クッションを抱えながら爆笑していた。
そのとき――。
「……何してるの、二人とも」
洋室のドアが音もなく開き、兄上が姿を現した。背筋を伸ばし、涼しい顔。だが言葉は呆れそのものだった。
「早く荷物まとめてね。馬車が出る時刻は待ってくれないよ」
「あ、はい……」
ジークはまるで軍人のように反射で返事をした。腰を押さえながら。
続いて入ってきたのはラヴェリオン。
「騒いでないで、とっととしろ」
片腕で駄竜二匹――カリムとグランデ――をひょいっと抱え、もう片方の手でトランクを持っている。まるで荷物とペットを一緒に持ち運ぶ雑な執事のようだ。
「ぴるぅ~」
「ふぎゃっ」
駄竜どもは空気を読まずに、ラヴェリオンの腕の中でバタバタ。
「……っははは!」
俺は思わず吹き出した。せっかく兄上とラヴェリオンが威厳たっぷりに登場したのに、駄竜二匹のおかげで場の緊張感は一瞬でゼロだ。
「おいセレヴィス、笑ってないで荷物ぐらい持て!」
「やだー俺、王子だし」
ジークはヨロヨロと洋服をトランクに詰め込みながら、小声で俺を睨んだ。
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