目付きの悪い俺が黒猫に振り回されてます。

海野(サブ)

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中編

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「えっ、や、やめる…?」

 突然、先輩がこのカフェを辞めると俺と灰島さんに伝えてきたのだ。

「あぁ、今月いっぱいでな。」

「い、いやまた急にですね!?」

「何か事情があったんですか?」

 先輩は俺と同じ正社員として雇われている。だからってわけではないが、そうすぐに辞めるとは思わなかった。

「実はな、漫画家デビューすることになってな。」

「……え?ま、まんが…!?」

 先輩の口から衝撃的な言葉が出た。俺と灰島さんは一瞬お互い顔を合わせた後、もう一度先輩を見た。

「せ、先輩漫画描いてたんですか!?」

「あぁ、仕事終わったあとにな。SNSで載せてたら出版社から連絡来てな、本格的にうちで描かないかって言われたのさ。いやぁ、見る目あるよな!」

 先輩はあっはっはっと、鼻を高くして大笑いしていた。
 し、知らなかった。最近目の下にクマが出来たなとは思っていたが、夜な夜な漫画を描いていたということだったのか。

「そ、そうだったんですね…けどすごいです。漫画家って、先輩努力されたんですね…」

「まっ、おれは天才だったってわけだな。………………」

 何故か先輩は俺の顔を見て、気まずそうにして顔をそらした。

「……まぁ、どっかの誰かさんが努力してるのを見て、おれも夢を再度追いかけてみようってなったんだけどな。」

 ぼそっと聞こえない小さな声で何か呟いていた。何を言っていたのかわからないが、だいぶ先輩を見直したというか、誤解していた。漫画家になるというのは運も実力も必要らしい。だから先輩はそれを掴んだということだ。それは、本当に素晴らしいし、すごいと初めて先輩を尊敬出来たかもしれない。

「だからコミック出たら10冊は買えよな!あ、今からサイン書いてやるよ?嬉しいだろ?未来の売れっ子漫画家のサインだぜ?」

 とはいえ上からの目線は変わらずのようだ。この人、SNSで漫画投稿してたって言ってたけど、上から目線で炎上しなかったのだろうか。
 とにかく、これから売れるとするならばまずはその上から目線を直すしかないだろう、と上から目線で思ってしまうのであった。

「そういうことだ。だから来月からは少ない人数で回さないといけなくなる。」

 奥からマスターがため息つきながら出てきた。

「別におれが居なくたって回るだろ。」

「そんな訳ないだろ…とにかく、2人には申し訳ないが当分4人で回すことになる。」

 マスターと奥さん、俺と灰島さんで店を回すことになりそうだ。確かに忙しい時間帯は4人では回すのは厳しい。これから冬休みが入ると一気に忙しくなる。しかも灰島さんは大学の試験でシフト入れない日がある。

「バイト募集してもなかなか人がこないもんな。」

「そこ、なんだよな…」

「近くにすぐ働いてくれそうな人が居たら紹介しますね。」

「……」

 ふと、俺はクロの顔が浮かんだ。
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