ハルとアキ

花町 シュガー

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親衛隊編

3

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(確か、今日の4限目はあいつのクラスが体育だったな)

って事は、恐らく奴は今生徒会室にいるはず。
ちょっと様子見に行ってみるか……


ちょうど授業終わりのチャイムが鳴ったころ生徒会室前に着いて、ピッとカードをセンサーにかざす。

ガチャッ

「……あ?」

ガチャガチャッ

(んだこれ、内側から鍵がかかってんのか?)

何やってんだ?あいつ。


「おい!開けろ!!いるんだろうが!」


カチャッ
「わ、ごめんなさいっ!」

内鍵が外れてピョコッとあいつの顔が出てきた。

「俺の生徒会室で内鍵かけるとは、初日からいい度胸だなぁ小鳥遊」

「ふふふ、ちょっと訳がありまして。 
どうぞ会長サマ」

(〝様〟だけ変な強調入ってんぞ)


「はぁぁぁ……ったく、何なんだてめぇはーー」


な、


(なんだ、これは……)

あんなに荒れてた部屋が、綺麗に片付いている。
いや、寧ろこんなに綺麗な生徒会室をこれまで見たことがない。

いつも限界が来たら親衛隊の奴らに1日がかりで掃除させてんのに、それをこいつが1人で?
しかもこの短期間に…だと……?

あり得ない。
大体、お前なにやってんだよ。
お前は俺と同じ、自分で掃除をしなくてもいいレベルの人間だろ。
それなのに、なんで……

「ふふふ、満足いただけましたか? 会長サマ」

「っ、おい…これはどういうことだ」

「いやぁ、僕が入った時すんごい有様だったので。こんなところで仕事したいないなぁと思って少し掃除させていただきました」

は?
これが少しだと?

「でも、どうしてもシャンデリアの蜘蛛の巣だけはどうにもできなくて……

頼んでいいですか? 会長サマ」


「…………は?」


この俺に、掃除を頼むだと?

「お前なに言ってrーー」

「あぁそれに僕待ち合わせしてるんでもう行かなきゃ!
それじゃぁ後はお願いしますねっ、会長サマっ」

「っ、おい!」

肩を掴もうとした俺の手をスルッと避けられる。

「もー僕急いでるんですよ! 早く行かないと食堂の席埋まっちゃうじゃないですかー!そ・れ・に!僕は今日デミグラスハンバーグを食べるんです!
いいですか!? 追いかけてこないでちゃっちゃとシャンデリアの蜘蛛の巣なんとかして下さいね!」

いま一個づつメニュー制覇してるんですから邪魔しないで下さい!ここの食堂メニュー凄く多いんで忙しいんですよ僕、分かりました!? それじゃあ失礼します!

「ちょっ、小鳥遊待っーー」

パタパタパタ…と俺にとっては急ぎ足のようなスピードで去っていく背中を追おうとして。

ふと立ち止まる。


(は? なんで俺が追いかけてんだ??)


俺は追いかけられる側だろ、なのになんであいつを追いかけなきゃいけない。

(大体なんだメニュー全制覇って…なんだ今日はデミグラスハンバーグって…俺は食堂のメニューに負けたのか……?)

あいつは俺じゃなくデミグラスハンバーグを追いかけんのか?
これまで無敗の俺が、デミグラスハンバーグに負けるだと??

「いやいや、訳わかんね……」

(駄目だ、とりあえず中入ろう……)

これ以上考えたら頭痛くなりそうだ。


「…………は?」

俺の机の前まで来て、ハタと立ち止まる。

(なんであいつの机、あんなに離れてんだ?)

俺の専属秘書なんだから、俺の隣にくっつけて当然だろうと置かせた机。
その机が、露骨に思いっっきり離れた部屋の隅へ移動されている。

(しかもなんか壁の方向いてね? あいつ俺に背ぇ向けて座んのか??)


「…………っ、クッ、はははっ」


(あーまったく、意味わかんねぇっ)

あいつに対しての苛々も、ここまで来れば一周回って笑いに変わってしまった。

「ははっ、わけわかんねぇ…っ、ククッ」

(なんだあいつ、俺の予想の斜め上ばっか行きやがるのか?)

普通だったら誰もが喜ぶ席だぞ?
それをあんなに離すのかあいつは…しかもちょっと露骨すぎんだろ。

あいつと出会ってから起こる事全て、初体験ばかりだ。


あぁまったく ーー面白い。


「これから嫌という程振り向かせてやるよ、小鳥遊」

どうせ生徒会室で一緒に居る事になる事になるんだ。
さて、これからどうしてくれようか。


「ーーとりあえず」


シャンデリアの蜘蛛の巣、どうすりゃいいんだ?

(俺でも手ぇ届く訳ないってぇんだ、ったく…親衛隊の奴らを呼んでもいいが、非力なあいつが自分でやったのに俺だけ他人の力を借りんのは、なんか癪だな……)

仕方ない。

「こういう時は月森に聞いてみっか……」


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