103 / 536
体育大会編
3
しおりを挟む「は?」
「聞こえなかったんですか? 副会長たちを生徒会室に呼び戻してくださいと言ったんです」
「いや、お前こそ俺が言った事聞いてなかったのか? あいつらを呼び戻すよりも俺1人でやった方が遥かに効率が良いんだ、何でわざわざ戻す必要がある? 別にいらねぇだろそんなん」
「何言ってんだこいつ」と呆れたように見てくる目を、真っ直ぐに見つめ返す。
「ーー貴方、馬鹿ですか?」
「…………あ?」
「何のための生徒会長ですか?何のためのトップなんですか? 業務が全てではないでしょう」
「あぁ? ……なにが言いたい」
(ここまで来ると甚だしいな)
本当に、この人は外側しか大切だと思ってない。
「僕たちは、1つのチームです」
〝生徒会〟という名の、1つのチーム。
「生徒会の業務をこなすのは〝当たり前〟です。その為のチームなんですから。
ですが、その業務をこなす過程でメンバーが困っている時、悩んでいる時は手を差し伸べるべきだ。チームとはそういうものです。貴方はそれのトップに選ばれた。本来ならばそれを貴方が率先して行わなければいけないのに、何をやってるんですか?」
「あぁ?チームだと? んなもん俺は望んじゃいねぇ。大体、仮にチームを組むんだったらもっと人選をすべきだ、あいつらは使い物にならねぇ」
ダンッ!
「だからっ! その考え方がいけないって言ってるんです!!」
会長の机を両手で叩く。
「チームなんて人選が出来る事もあれば出来ない事だってあるでしょう? 何でもかんでも自分の思い通りにはいかない。世の中にはそんな事がいっぱいある」
(そう、思い通りにはいかない事ばかりだ)
ハルの事だって両親の事だって、婚約者の事だって。
俺は今まで全てを諦めてきた。
でもハルの事を思うと婚約者のこいつだけはどうにも諦めきれなくて、今絶賛立ち向かってる最中なんだけど……
(でも、俺の世界にはいつも選択権なんてもんは無かったんだ)
「今回のメンバーは学力や実力で選ばれている。選んだのは貴方じゃない、先生方だ。だからこれは貴方じゃ人選出来なかった事。それを、どうして受け入れようとしないんですか?」
「あぁ!? なんで受け入れなきゃならねぇんだ!あんな使い物にならねぇやつらは早々に生徒会に来なくなって正解なんだよ!」
「使い物にならないなら、貴方が育てれば良いでしょうが!!」
「……は?」
「使い物にならないなら、貴方が育て上げるべきだ。貴方にはその義務がある、だって生徒会長だから。貴方は僕に〝俺と同じレベルで業務が出来る〟って言いましたよね? だったら同じレベルまで副会長たちを育てればいいんです」
「…んで、俺がそんなだりぃ事しなくちゃいけない。ただでさえ俺は業務があって忙しいんだよ、それに会長だからって理由であいつらの面倒手取り足取り見れってか!?それこそ理不尽だろ!俺にはそんな義務はねぇ」
「それでも、貴方は了承して会長になった。トップは部下の責任を負い、部下の成長の手助けを行うものです。貴方も経営者の息子なら嫌という程知ってるでしょう?
はっきり言って、今の貴方の考えでは今後社会に出て生きていけるとは思えません」
「っ!」
もし、この人がこのまま社会に出て社長になったら。
先ずはこいつ同等のレベルに達してない社員をことごとく切り捨てるだろう。
そして自分はこれくらいなんてことないと思う量のタスクを部下へ回し、下はそれをこなす事が出来ず、厳しさのあまり退職者は増え続け
結局…こいつ1人がポツンと会社に残るのが簡単に想像できる。
「学校だって1つの社会です。その部署ひとつまとめきれてない貴方なんて、この先死んでいくのが目に見える」
「っ、……ほぉ、言ってくれんじゃねぇか…」
ゆらり、と会長が立ち上がり机越しに睨んでくる。
「じゃぁ俺にどうしろと? 今の業務全部そっちのけであいつらの面倒見ろってか? 大体、やる気のない奴らにどうやってーー」
「そんなの簡単です。
〝外側〟じゃなく〝内側〟を育てればいいんです」
「ーーは?」
(あぁ、まったく)
しょうがないなぁと微笑み、会長を見つめる。
「恐らく内側なんて貴方の不得意分野でしょう? でも、内側を育ててマインドを育成し、仕事に対してのモチベーションを上げなければ皆んなは付いて来ません」
「っ、内側なんざ自分でどうにでもなるもんだろ。そんな目に見えない部分をどうやって変えられる」
「クスッ、 内側は目に見えますよ? 貴方が見ようとしてないだけだ」
「あぁ?」
「理解しようとしてないからですよ。だから貴方は内側じゃなく外側だけで人を判断する。
僕にだってそうでしょう?」
「………」
なにも言わずに、押し黙ってしまった会長。
俺も、なにも言わずただただ見つめる。
少しの沈黙が生徒会室に流れた。
ーーやがて。
「……っ、ククク…そうだなぁ小鳥遊。俺は確かに外側しか見ない、それで判断してこれまで生きてきた」
「会長……」
(わかって、くれたのかな?)
ほぉっと安堵の息を吐いて、ゆっくりと会長を見つめる。
「お前の事も、俺はせいぜい外側しか理解していないしするつもりもない。 だが、お前がそんなに内側内側言うならお前の内側を理解してやってもいい。
ーーだから」
グイッ!
「ぇ、」
ダンッ!!
「教えてくれよ。この俺に、お前の〝内側〟ってやつを。
ーーお前のカラダでな…?」
バチバチバチ!!と凄い音がしてシャツのボタンが引きちぎられ
シャンデリアの光を浴びて、キラキラと綺麗に飛んでいった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
鈴木さんちの家政夫
ユキヤナギ
BL
「もし家事全般を請け負ってくれるなら、家賃はいらないよ」そう言われて鈴木家の住み込み家政夫になった智樹は、雇い主の彩葉に心惹かれていく。だが彼には、一途に想い続けている相手がいた。彩葉の恋を見守るうちに、智樹は心に芽生えた大切な気持ちに気付いていく。
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる