知らぬ間に既婚者になってた。

ひづき

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 腰を上げ、膝立ちのまま改めてアゼルのそそり立つ陰茎を跨ぐ。ミーシアがアゼルを一瞥すれば、その意味を察したアゼルのは自身の指に唾液を絡め、ミーシアの尻穴へと差し入れた。そのままアゼルが何か呪文のようなものを呟くと、ゾワゾワゾワゾワとミーシアの胎内を清涼感のある何かが駆け抜けていく。

「ひぅ…ッ」

 何度やられても慣れない、そこで繋がる為に必要な魔法。浄化と粘膜保護液精製、らしい。魔法が使えないミーシアにはよく分からない。そのよく分からない魔法の刺激にすら性的興奮を感じてしまうのがミーシアは恥ずかしい。拒絶出来るものなら拒絶しているだろう。一度拒絶して物理的に洗われ生き恥を晒した結果、魔法の方がまだマシという結論に達している。

 そのままアゼルの指はミーシアの中を掻き混ぜ、指を増やし、ぐにぐにと穴を広げる。

「も、いい」

「しかし───」

 怪我をさせたくないと躊躇うアゼルの手を払い除け、腰を落とす。そそり立つ陰茎の先端を少し咥えただけで、期待と歓喜に体の芯が震える。ぱくぱくと飢えた穴が貪欲に喰らいついていく。強引に内部を開かれていく少しの痛みと違和感さえ気持ちいい。

「───んあああっ」

 じわじわ腰を下ろすのに疲れ一気に腰を下ろすとゴリゴリと内部を殴られ、衝撃が駆け抜けた。

「まったく、強欲な…」

「ひぅんっ」

 どちゅん、と下から突き上げられ、整いかけていた呼吸が再び乱される。腰を掴み、支えてくれるアゼルの手にしがみついて、離すまいと下半身でも肉を締め付ける。ぐ、とアゼルが小さく埋めいた。その上気した容貌を目に焼き付けたいのに、生理的な涙で視界が滲んで邪魔をする。払おうと瞬きをすると、雫は頬を流れ落ちた。

「…痛むのですか?」

 やや掠れた声が優しく問いかける。違う、と。ミーシアは首を横に振り乱す。

「もっと欲し」

 上下に腰を動かし始めたミーシアの苦悶の表情に生唾を呑み込んだアゼルは、腰を振りたいのを必死に耐えてミーシアの好きにさせる。

「ん、ん、ん、…ふふっ」

 馴染んできたことで欲しいところに欲しいだけ刺激を得られるようになってくる。ミーシアは恍惚とした笑みを浮かべ、改めてアゼルを見つめた。眉根を寄せて衝動を抑える彼の姿に笑いが込み上げてくる。

「何がおかしいのです?」

「俺を欲しがる顔が嬉しくて───」

 最後まで声に出す前に激しく下から突き上げられ言葉は途切れた。電撃のように駆け抜ける快感に神経が焼き付くような熱さを覚え、少しでも刺激を逃がそうと背を反らして喘ぐ。アゼルの両手に痛いほど力強く腰を捕まれ、揺さぶられ、逃げることを許されない。

「あ!ん!や!あ!ぁ!」

「貴方は!どれだけ!私を!煽って!焦らせば!」

「っあ!ひ!ん!んん!」

 いつの間に天地がひっくり返ったのか。分からないままガツガツと腰を打ち付けられ、シーツを握り込んで身悶える。

 降ってくる汗さえ悦びになる。求められている、そう考えただけで快楽が加速する。ぎゅぅぅぅっと締め付けて、世界が激しく明滅するような絶頂に襲われた。

「あ─────ッ!!!!!」

「───ぐっ」

 胎内で熱が弾ける。

 呼吸を整えつつ離れようとするアゼルを離すまいと腰に脚を巻き付けた。

「…離しなさい、ミーシア」

「もっと奥まで、来て」

 アゼルの陰茎を全て納めるとミーシアの入ってはいけない場所まで届く。激しいのも良いが、次は時間をかけて最奥まで暴かれたい。

「後で文句言わないでくださいね…っ」

「はやく…っ!」



 □□□□□□□□



 倦怠感の中、ミーシアは目を覚ました。間接照明が足元を薄暗く照らす室内を見渡してもアゼルの姿がない。珍しいなと重い頭で考える。

 いつもならミーシアが目を覚ますまでアゼルは傍を離れない。その違和感は些細と言えば些細だが、何か引っかかるものを覚えた。



「勇者様を返せ、魔王!」

 魔王城の玄関ホールに近づくと、聞き覚えのない声が耳に届いた。野次馬の魔物達が玄関ホールに繋がる廊下や内階段に集まり、固唾を呑んで事の成り行きを見守っているようだ。そんな彼らだが、ミーシアの存在に気づくと皆慌てて道を開けてくれる。玄関ホールの吹き抜け、その2階部分にある階段の踊り場からミーシアは下を覗き込んだ。

 白銀に輝く防具一式を身につけた人物が、アゼルに剣先を向けて騒いでいる。魔王と指名されたアゼルは腕を組んだまま立ちはだかり、相手の好きなように喋らせているだけ。反論もしない。反論する価値もないとでも言いたげな態度であり、それがますます相手の怒りを煽っている。憤る鎧の人物の後ろにも招かざる客が数人おり、口は開かないものの、彼らもまた各々の武器を構えてアゼルに睨みを利かせている。

 ミーシアは迷わず玄関ホールに繋がる螺旋階段を降り始めた。その足音に気づいたアゼルや客人達の視線がミーシアに集まる。

「勇者様!」

 地に足をつけたミーシアに、鎧の男は歓喜の声を上げる。ミーシアはそんな男達を無視してアゼルの元へ駆け寄った。

「…何故来たのですか」

 武装している連中と違い、アゼルは普段着だ。普段通りのシャツにスラックス。ミーシアも普段着だ。アゼルよりラフな格好である。職場兼自宅でしかない場所で武装する必要はないのだから当然といえば当然。

 アゼルの仏頂面など意に介さず、ミーシアはアゼルの両頬に手を添えてかがむように促し、唇を重ねる。無粋な来客達から悲鳴が上がったようだが気にしない。

「何故って、おはようのちゅーがまだだったから」

 ミーシアがふにゃりと笑うと、アゼルもつられて目元を和らげた。


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