知らぬ間に既婚者になってた。

ひづき

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「承知しました」

 恭しく頭を下げてからアゼルは黒いモヤのような物体を引き摺り、絡まる人間達ごと玄関ドアを潜った。魔族領の空は漂う魔力が可視化して紫色に輝いている。ついて行こうとした由良ゆらだったが、アゼルが小さく首を振った為、大人しく立ち止まる。一応同族である人間の死を見せたくないのかもしれない。あるいは心変わりを心配したのか。いずれにせよ過保護だなぁと由良ゆらは呆れるだけだ。





「───なんでまだ魔王を俺がやんなきゃなんないの?」

 執務室に山積みになった各部署からの報告書を前に由良ゆらは項垂れる。

 人間達の襲撃があってから、以前よりも親しみを込めて「魔王様」と呼ばれるようになったことも由良ゆらには解せない。アゼルは相変わらず先代と呼ばれている。あの人間達と対峙した場面を見たなら、やはりアゼルこそが魔王だ!となりそうなものだが。

「ミーシア」

「ん?」

 アゼルは日中や部下達の前では由良ゆらをミーシアと呼ぶ。彼が由良ゆら由良ゆらと呼ぶのは寝室だけだ。どうもそういう切り替えが楽しいらしい。お陰で由良ゆらと囁かれるだけで最近は身体が熱くなるようになってしまった。

「我々魔族は妻を己の上位に置くのが当たり前なのです」

「─────それで?」

 つま、とは。予想外の単語に耳を疑いつつも先を促す。

「夫が魔王の座を妻に譲るのも当たり前のこと。先日の件で、貴方が私の妻であると、同胞達から納得を得られました。故に今は貴方が正式に魔王です」

 魔王よりも上の地位がないから、魔王は魔王の座を妻に譲り渡す。なるほど。

「………俺、アゼルの妻になった覚えはないんだけど。一体いつ結婚したの?」

 眉根を寄せて問えば、アゼルは納得したように小さく頷いた。そして呟く。失念していた、と。

「互いの魔力が混ざり合って馴染み、拒絶反応が起きなくなったら婚姻したことになります」

 魔力の馴染みを目の前で証明した結果、魔族達は由良ゆらをアゼルの伴侶として認めた、ということらしい。それって、つまり───

「あの襲撃事件がまさかの結婚式、しかも人前式になるとは………」

 予想外過ぎて頭が痛くなる。

「最初の接吻から拒絶反応はなかったので、あの時点で事実婚としては成立しています。この世界の人間達も同様の認識のはず。───貴方が異世界人だということを失念していました」

「まじかー…」

 文化の違いに驚くばかりだ。

 ふと思う。

「それって、離婚したくなったらどうすんの?」

 単なる好奇心だったのだが。

「───由良ゆら

「!」

 マズイ、と思ったが時既に遅し。

 アゼルは真顔で由良ゆらの身体を椅子ごと机から引き離す。

 弁解しようと顔を上げた由良ゆらは容赦なく顎を捕まれ、噛み付くような、普段の丁寧さが見られない荒々しい口付けをされた。乱暴に口腔へと侵入し、強引に舌を絡め取られる。

「~~~~~ッ」

 呼吸すら許さないような強引さ。ゾクゾクと背中が震えて逃げ出したくなる。腰まで甘く痺れ、身体を支えられない。

 いつ解放されたのか分からないほど酸欠で朦朧としていると、着ていたシャツを左右に引き裂かれた。驚く間もなく胸の突起を指で弾かれる。

「ひあっ」

 まるでもっとと強請るように跳ねた胸を吸われ、そちらに夢中になっているとアゼルの手が背中を撫で、下衣に侵入していた。そのまま彼の手は強引に由良ゆらの臀部の割れ目をつたい、後孔に辿り着く。

「ぁ、あぁんっ」

 いつもの魔法をかけながら指をズボズボされ身悶える。またしても分からないうちに椅子から引き離されており、床に座るアゼルの上に乗っていた。アゼルの熱い肉棒が会陰を撫で回す。その間にも乳首を交互に舐め回されて甘噛みされて。

 いつにない性急さに、求められているのだと実感して、それだけで絶頂しそうだ。

「いく、だめ、いっちゃうッ」

 だから、早く挿入して欲しい。そんな言葉にならない願いに応えるかのように、先走りでヌメりを帯びた熱い陰茎に穿たれた。ぷしゃっと音を立て、由良ゆらの陰茎から白濁が飛び出す。

「あああああ!」

 射精している最中でも関係ないとばかりに、ズブズブと内壁を暴かれ、前立腺をゴリゴリ削られ、容赦なく責め立てられる。口端から涎を零しながら由良ゆらは必死にアゼルを締め付け動きを制御しようとするが、後孔の締め付けは更にアゼルを膨張させるだけ。腕はアゼルの肩にしがみつくので精一杯で、彼を止めることなんて出来やしない。止まらない射精は気持ちいいを通り越してツライ。

「や、やぁっ、とまって!とまってぇ!」

 言葉で願えば、更に激しく最奥をゴツゴツと殴るように穿たれ、綻んだ隙間にぐりゅんっと捻り込まれる。

「─────っ」

 言葉にならない声を上げ、止まらない射精とは別の透明な液体を陰茎から吹き出させ、仰け反る。

 ぐりゅん、ぐりゅん、と繰り返し最奥で出し入れされる。その強烈な快感に由良ゆらは白目を向いて身体を痙攣させる。絶頂が止まらない。獣のように舌を突き出し、言葉にならない喘ぎを繰り返すだけ。

「んお、ぐ、ふはっ、んゃっ♡♡♡♡♡」

「ぐ…ッ」

 我慢ならないとばかりに最奥で熱が弾けた。

「やあああああんっ」

「───離婚など有り得ない。知る必要はない。わかりましたか?」

「わか…、わかっぁ、も、らめ」

 再び無遠慮に内部で動き始めた雄に、由良ゆらは泣きながら許しを乞う。床に寝かされ、腰をがっつり掴まれ、逃げられない。

「いい機会ですので、貴方には私しかいないのだと徹底的に教え込みます」

 覚悟して下さい。

 そんなアゼルの笑顔はいつも以上に眩しくて。

 由良ゆらは心臓がきゅーんっと締め付けられるのを覚えた。

「すき…ぃ」



【完】
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