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巡りあわせ①
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――ガランガラン
寒さが厳しい二月の空の下、澄んだ鈴の音が聞こえてくる。
次いで二度、柏手の音が響いた。
「神様、迷子のコムギを見つけてください! お願いします!!」
小宮紡生は鼻を赤くしながら社に必死に手を合わせていた。
コムギは紡生の飼い猫で、白い体に麦のような茶色い模様がチャームポイントの子猫だ。
けれど一昨日の大雨の日、家の近くに落ちた雷に驚いて脱走してしまっていた。
それからずっと朝も夜もなく探しているが見つからず、藁にもすがる思いでここ「新音子神社」へとやってきた。
新音子神社は通称「猫社」ともよばれており、「猫との縁結び神社」として猫飼いの間では割と有名な神社だ。
なんでも「お参りすると脱走してしまった猫が戻ってくる」だとか、「猫との良縁を結んでくれる」だとか。
とはいえ小さな神社で、商店街の奥にひっそりと建っているので地元の人でも知らない人が多い。
紡生も今朝初めて噂を聞き、その足でやってきたところだ。
「あの子になにかあったら、私……。お願いです。コムギが無事に帰ってきてくれたらなんだってします!」
「それ、本当?」
「え?」
ふいに鈴を転がすような声がした。
きつく閉じていた目を開けて周りを見るけれど、自分以外に人影は見当たらない。
なんだったのだろう。空耳かな。
でもそれにしてはやけにはっきりと聞こえたような……
(……まさかおばけとか?)
いやいや、まさかまさか。
こんなよく晴れた日の朝、しかも神社におばけなんて出る訳がない。
そう思いながらも急いでここから離れようと立ち上がった。
そのとき一瞬だけ空が光った気がして上を見る。
「へ?」
大きな影が、紡生の顔に掛かった。
青い空、白い雲、そしてそこに浮かぶ……
「――え、は、猫!!?」
なんと一匹の三毛猫が紡生めがけて降ってきていた。
なんで猫が空から? とは思うけれど、さすがにあの高さから落ちたらいくら猫といっても危ないだろう。
紡生はとっさに受け止めようと手をのばした。
「あ、あああぶっ! おっ、ナイスキャーーーーッチ!」
ずしりとした重みが腕に加わり前のめりになるが、ギリギリのところで踏んばって耐えた。
……と思ったけれど
「……って、あつっ!? あっっつ!? なにこれ!?」
猫と共に降りそそいできた何かが顔や腕に当たった。
ものすごく熱いし、なんだかいい匂いがする。食欲を刺激するような、香ばしい香りだ。
なにがなんだかわからないけれど乗っかったそれを振り払おうと体をよじった。……が。
――ブニッ
「ひえっ」
運悪く足元にも落ちていたらしい。
踏んづけた足がつるりと滑った。
紡生はバランスを崩し、猫を抱えたまま後ろに倒れていく。
ゴチーーーーーン
鈍い音が辺りに響いた。
寒さが厳しい二月の空の下、澄んだ鈴の音が聞こえてくる。
次いで二度、柏手の音が響いた。
「神様、迷子のコムギを見つけてください! お願いします!!」
小宮紡生は鼻を赤くしながら社に必死に手を合わせていた。
コムギは紡生の飼い猫で、白い体に麦のような茶色い模様がチャームポイントの子猫だ。
けれど一昨日の大雨の日、家の近くに落ちた雷に驚いて脱走してしまっていた。
それからずっと朝も夜もなく探しているが見つからず、藁にもすがる思いでここ「新音子神社」へとやってきた。
新音子神社は通称「猫社」ともよばれており、「猫との縁結び神社」として猫飼いの間では割と有名な神社だ。
なんでも「お参りすると脱走してしまった猫が戻ってくる」だとか、「猫との良縁を結んでくれる」だとか。
とはいえ小さな神社で、商店街の奥にひっそりと建っているので地元の人でも知らない人が多い。
紡生も今朝初めて噂を聞き、その足でやってきたところだ。
「あの子になにかあったら、私……。お願いです。コムギが無事に帰ってきてくれたらなんだってします!」
「それ、本当?」
「え?」
ふいに鈴を転がすような声がした。
きつく閉じていた目を開けて周りを見るけれど、自分以外に人影は見当たらない。
なんだったのだろう。空耳かな。
でもそれにしてはやけにはっきりと聞こえたような……
(……まさかおばけとか?)
いやいや、まさかまさか。
こんなよく晴れた日の朝、しかも神社におばけなんて出る訳がない。
そう思いながらも急いでここから離れようと立ち上がった。
そのとき一瞬だけ空が光った気がして上を見る。
「へ?」
大きな影が、紡生の顔に掛かった。
青い空、白い雲、そしてそこに浮かぶ……
「――え、は、猫!!?」
なんと一匹の三毛猫が紡生めがけて降ってきていた。
なんで猫が空から? とは思うけれど、さすがにあの高さから落ちたらいくら猫といっても危ないだろう。
紡生はとっさに受け止めようと手をのばした。
「あ、あああぶっ! おっ、ナイスキャーーーーッチ!」
ずしりとした重みが腕に加わり前のめりになるが、ギリギリのところで踏んばって耐えた。
……と思ったけれど
「……って、あつっ!? あっっつ!? なにこれ!?」
猫と共に降りそそいできた何かが顔や腕に当たった。
ものすごく熱いし、なんだかいい匂いがする。食欲を刺激するような、香ばしい香りだ。
なにがなんだかわからないけれど乗っかったそれを振り払おうと体をよじった。……が。
――ブニッ
「ひえっ」
運悪く足元にも落ちていたらしい。
踏んづけた足がつるりと滑った。
紡生はバランスを崩し、猫を抱えたまま後ろに倒れていく。
ゴチーーーーーン
鈍い音が辺りに響いた。
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