百合に挟まれて死ぬ悪役王子に転生した百合男子、百合ップルを見守ります!

椎名 富比路

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第五章 転校生は魔王! 百合おじ最後の戦い

第32話 尊すぎる修行

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「はあ、はあ。取り乱しました」

 まったく、だらしない。
 とはいえ、まだ百合に目覚めたばかりでは、こんなものか。
 
「ユリウス師匠、これからもよろしくおねがいしますっ」

「オレより、生徒会に入ったほうが効率的だと思うが?」

「しかし、転校してきたばかりの我を受け入れていただけるとは」

「ガセート先輩は、そんな器の小さい男ではない」

 さっそく、掛け合ってみよう。

「そこにいるんだろ? 先輩?」

「よく見破ったね」

 先輩は、テラスの花壇に化けていた。なんか一つだけ余計に花壇が増えているなと、思っていたのだ。

「うわ! あなたが生徒会長!?」

 アッシェが、テーブルから飛び退く。
 ラスボスなのに、リアクションがデカいな。

「いかにも。百合に詳しくなりたいんだって?」

「はい。ぜひに」

 さすがに男三人で話し合うのは、絵的にキツイ。ここは百合を見ることで、心の平穏を保とうではないか。

 二人がカフェを出ていくので、オレたちも向かうことに。
 
「おお、今日は、ティナ殿が男装なさっていますよ」

 ティナが、ボーイッシュな衣装でトマ王子と並んで歩く。ヒザまでのハーフパンツとカーディガンという、秋を意識したファッションだ。男装でありつつ、女性っぽさは多少残してある。

 これは、これでアリだ。 

「いいねえ。百合は。トマ王子が不憫でならないよ」

「今日はそういうデートの日か」

「どうにか彼女が、トマ王子が女性としてでも生きられる世界にできないかどうか」

 トマ王子は、クーガー国の跡取りだ。今後は勇者の家系として、国を導かねばならない。
 その責任が、トマの重荷になっている。
 本来支えられるべきは、トマなはずなのに。
 
 その重圧をともに背負ってくれるのが、ティナ王女だ。

 聖女ティナなら、トマ王子と肩を並べて歩ける。
 いや、そうすべきだ。

 だが、強制的に百合を普及させようとするのはいただけない。

 たとえ尊くても、それは自然に百合になっていくべきである。

「そのためにも、修行してもらうぞ」

「はい。コーチ!」


 翌日から、オレはアッシェに特訓を開始した。
 早朝から、グラウンドで組手をする。
 マギアーツの腕前は、さすがヴァンパイアといったところ。魔族の上位種だけあって、筋がいい。また血筋に頼らず、自分を高めることも重視している。

「おはようございます、ユリウス王子」

「おお、ティナではないか。おはよう」

「今日は、アッシェさんのコーチをなさっておいでで?」

「そうだ。稽古をつけてほしいとな。キミたちも、トレーニングか?」

「いいえ。涼しくなったので、朝食を兼ねたピクニックです」

 二人きりの時間を作るなら、早朝のほうがいいだろう。

「オレたちに構わず、続けてくれ」

「ありがとうございます、王子」

 ティナがベンチに腰掛けて、オレたちの組手を観察する。

 しばらくして、トマ王子がかけつけた。

「今日は、ボクが弁当を作ってきたよ」

「まあ!」

 まあっ!

 オレとティナが、同時に手を叩く。

「スキありです」

 渾身の肘打ちが、オレのみぞおちに迫る。

 オレは素早く攻撃のモーションを解き、アッシェを組み伏せた。

「まだだ。食べさせ合いイベントの邪魔をしてはならぬ」

「はい、コーチ」

 組み伏せを解除して、二人でティナとトマのピクニックを愛でる。
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