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第一章 百合美少女事務所を立ち上げようとしたら、バ美肉ばかりが生まれた
第1話 七人のバ美肉
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なんだ、この地獄絵図は?
オレは、ゆりんゆりんな帝国を築き上げることを目的に、Vチューバー事務所を立ち上げた。
面接に来たのが、みんな男だとは。
アバターもとびきりかわいいのを用意していたのに。
まあいい。だったら、オレたちがかわいくなればいいだけ。
「はいどーも! 我々はバ美肉Vを専門に扱う事務所、マナティ・ネストでございます。その事務所からでびゅーするのが、我々【尾鰭なき野郎ども】でーす!」
ボーイッシュな3Dアバターに身を包んで、オレはカメラにあいさつをした。
「ワタクシがリーダーの円城景 つばさです」
オレの背中にある翼が、ピコピコと動く。
「さて、みなさん! 自己紹介ついでに、自分たちの好きなものを公開しましょう!」
バ美肉アバターで、オレはメンバーに呼びかける。
「はーい!」
女性アバターの面々が、元気よく返事をする。
中身は、ガチの男性ばかりだが。
「ホントは、【七人のバ美肉】って名前になるところだったんだよね?」
委員長風のVが、オレに声を掛けてきた。
「そうなんだよ! それはそれで、面白いかったんだけどね。ただ数字を入れるとさ、卒業とか脱退とかされたときに、変な感じになるでしょ? 元ネタの『七人の侍』も、結局は半数死ぬじゃん」
縁起悪いってんで、オレがボツにしたのである。
「それでね、なにかアイデアはないか募ったら、社長の昔見た青春映画ね。そのエンディングテーマから、取りました!」
「とびっきりの女ってのは、ウチらのことやで!」
一際豊満な女性が、カメラに向かって呼びかけた。彼は、この事務所の社長である。
「それ、元ネタの方なんで。権利に引っかかるんで、その辺で」
「あいや失礼!」
昭和のリアクションで、豊満な女性が後ろに下がる。
「あなたは後で、紹介してあげるからね。まずはトップバッター! ゆーなちゃん!」
「はい! 私はマナティ・ネストでツッコミ担当、【屋否井ゆーな】です!」
屋否井ゆーなは、メンバーでもっともオーソドックスな黒髪ロング委員長タイプの少女である。地味子だが、今後は新衣装差分で個性を出していく予定。
「ゆーなちゃん、まずは流行りの曲から、好きなものを告白していきましょー。ゆーなちゃーん♪」
「はーいっ♪」
「なにがすきー?」
「週二で通う『角源の担々麺』よりも、あなたぁ」
実物の彼は、スキンヘッドの元リーマンである。ラーメン大好きで、グルメライターという経歴を持つ。
「続きまして、どっちがいく?」
あと六人いるが。
「わたくしが!」
中身が骨のスケスケボディが、手を上げた。
「【スケる豚】でございます。わたくしは、オークのスケルトンでございます。ダイエットに失敗して餓死したという設定でございますわー」
スケる豚には、会社のマスコットも担当してもらっている。
「スケるちゃーん?」
「はぁい」
「なにがスキ?」
「大五郎とタコワサ、よりも、あなた!」
この七人の中でも、最強の酒豪だ。実家も酒蔵という、サラブレットである。ゆーなちゃんと違って、こちらは少食だ。豚の名を関しているにもかかわらず、である。
スケる豚が自己紹介をしている間に、他のメンバーがじゃんけんで順番を決めたようだ。
「次、おお、社長ですか!」
「はいっ。毎度みなさんこんにちは。ウチは、マナティ・ネスト代表取締役、【ファン・レバレッジ】でーす! ファンちゃんって呼んでや!」
さっきの豊満な女性が、再びカメラにINしてきた。
ガラガラ声の関西弁だが、ボイチェンでよりセクシーになっている。しゃべりはモロ昭和だが。
「ファン社長~♪」
「はいっ」
「なにがスキ?」
「喫茶ミカヤのあんみつ、よりもあなた! いえーい!」
水沢と違って、社長は甘党で酒が飲めない。
なんでこの二人がコンビを組んでいるのだろうと、オレも疑問に思うくらいだ。
とても中身が、バーコード頭とは思えなかろう。
「次! 【七光 八重】! いってみよう!」
虹色のグラデーションが掛かったドレスを着た、スレンダーな少女が前に出る。
「はい! 七光 八重です! 娘が、Vのトップアイドルです! 娘の七光り、という設定で、やっていきます!」
オレたちでも知っている、超有名アイドルが、娘だった。
「まじかよ?」
「このアバターも、娘と同じママで。3Dモデリングも、同じ方が担当なさってくれています」
「いわゆる、箱アイドルですよね? 許可は?」
「社長を介して、取ってもらっていますっ。ただし、名乗るだけね」
頻繁なコラボとか凸は、当然ながらムリである。
「わたしはわたしで、手探りでこの会社を大きくしていく所存です!」
「わかりました。じゃあ、なにがスキー?」
「娘! よりも……やっぱり娘しか勝たん!」
正直でよろしい!
「はい次は五人目、【山梨 水沢】!」
人魚の姿をした男性が、手を挙げる。
彼だけワケあって、3Dアバターがない。2D用アバターを、手に持ってもらっている。
「はーあーいっ。男の娘系一人二役Vチューバーの、山梨 水沢でーす」
「ご説明させていただきます。なんで彼だけ、アバターがないのか? 実はですね、彼は男の娘としての活動をやめておりません」
いわゆる「超美麗3D」という扱いにさせてもらっている。
「人魚コスの超美麗が【山梨】。人魚2Dアバターのほうが、【水沢】という設定ですっ」
「わかりました、では山梨水沢ちゃーん」
「はあい」
「なにがスキ?」
「女装、よりもオ・ト・コ」
一番熱のこもった発言で、全員が総毛立った。
「……以上を持ちまして」
「こらこらこらぁ!」
ナイスツッコミを、六番手が担当してくれる。
「冗談冗談! はいラスト二番目はー、【OYA・KATA】!」
「はーいですぅ! ガンカタ系Vの、OYA・KATAですぅ。特技はガンカタですぅ」
ガンカタが得意な、ロリアバターである。我々の中でもっともフリフリ率が高い。
「えっと、ヤバいです。こんな見た目ですけど、中身五〇代の元関取です」
会場が、どよめく。いい、リアクションだ。
我々は中身を見ているので、今更って感じなのだが。
「では、OYA・KATA~♪」
「はーい」
「なにがすき?」
「お・に・い・ちゃ・ん!」
ずい、ずい、と、OYA・KATAがカメラの前に迫ってくる!
「OYA・KATAは! おにいちゃんのことが! 大好きなの!」
アドリブで、OYA・KATAがカメラを掴む。
「OYA・KATAは、おにいちゃんが! 大、大、大好きなっ、のっ!」
「キツい! OYA・KATA、キッツいって!」
「大好きっ、なーっのっ!」
ドアップで、OYA・KATAがカメラに迫る。
「ラスト、つばさちゃーん」
最後に、全員からオレが呼ばれた。
「はーい」
「何がスキ?」
「もちろん大好き、ス・パ・チャ!」
オレは好感度ゼロ系V、円城景 つばさとは、オレのことだ。
「では、このバ美肉七人でお送りいたします! それでは、お付き合いくださいね~。最後OYA・KATA! なんか言いたいことある?」
「見てくれないと、張り手!」
「では、尾鰭なき野郎ども、よろしくおねがいしまーす!」
OYA・KATAが往年の張り手をカメラに向かって見舞い、配信は終わった。
この人、中身は五〇代の元関取・元マジモンの親方なんだよなあ。
親方の情熱がなかったら、七人のバ美肉事務所は立ち上がらなかっただろう。
事務所を立ち上げる際に、いの一番で面接しに来たのが彼である。
オレは、ゆりんゆりんな帝国を築き上げることを目的に、Vチューバー事務所を立ち上げた。
面接に来たのが、みんな男だとは。
アバターもとびきりかわいいのを用意していたのに。
まあいい。だったら、オレたちがかわいくなればいいだけ。
「はいどーも! 我々はバ美肉Vを専門に扱う事務所、マナティ・ネストでございます。その事務所からでびゅーするのが、我々【尾鰭なき野郎ども】でーす!」
ボーイッシュな3Dアバターに身を包んで、オレはカメラにあいさつをした。
「ワタクシがリーダーの円城景 つばさです」
オレの背中にある翼が、ピコピコと動く。
「さて、みなさん! 自己紹介ついでに、自分たちの好きなものを公開しましょう!」
バ美肉アバターで、オレはメンバーに呼びかける。
「はーい!」
女性アバターの面々が、元気よく返事をする。
中身は、ガチの男性ばかりだが。
「ホントは、【七人のバ美肉】って名前になるところだったんだよね?」
委員長風のVが、オレに声を掛けてきた。
「そうなんだよ! それはそれで、面白いかったんだけどね。ただ数字を入れるとさ、卒業とか脱退とかされたときに、変な感じになるでしょ? 元ネタの『七人の侍』も、結局は半数死ぬじゃん」
縁起悪いってんで、オレがボツにしたのである。
「それでね、なにかアイデアはないか募ったら、社長の昔見た青春映画ね。そのエンディングテーマから、取りました!」
「とびっきりの女ってのは、ウチらのことやで!」
一際豊満な女性が、カメラに向かって呼びかけた。彼は、この事務所の社長である。
「それ、元ネタの方なんで。権利に引っかかるんで、その辺で」
「あいや失礼!」
昭和のリアクションで、豊満な女性が後ろに下がる。
「あなたは後で、紹介してあげるからね。まずはトップバッター! ゆーなちゃん!」
「はい! 私はマナティ・ネストでツッコミ担当、【屋否井ゆーな】です!」
屋否井ゆーなは、メンバーでもっともオーソドックスな黒髪ロング委員長タイプの少女である。地味子だが、今後は新衣装差分で個性を出していく予定。
「ゆーなちゃん、まずは流行りの曲から、好きなものを告白していきましょー。ゆーなちゃーん♪」
「はーいっ♪」
「なにがすきー?」
「週二で通う『角源の担々麺』よりも、あなたぁ」
実物の彼は、スキンヘッドの元リーマンである。ラーメン大好きで、グルメライターという経歴を持つ。
「続きまして、どっちがいく?」
あと六人いるが。
「わたくしが!」
中身が骨のスケスケボディが、手を上げた。
「【スケる豚】でございます。わたくしは、オークのスケルトンでございます。ダイエットに失敗して餓死したという設定でございますわー」
スケる豚には、会社のマスコットも担当してもらっている。
「スケるちゃーん?」
「はぁい」
「なにがスキ?」
「大五郎とタコワサ、よりも、あなた!」
この七人の中でも、最強の酒豪だ。実家も酒蔵という、サラブレットである。ゆーなちゃんと違って、こちらは少食だ。豚の名を関しているにもかかわらず、である。
スケる豚が自己紹介をしている間に、他のメンバーがじゃんけんで順番を決めたようだ。
「次、おお、社長ですか!」
「はいっ。毎度みなさんこんにちは。ウチは、マナティ・ネスト代表取締役、【ファン・レバレッジ】でーす! ファンちゃんって呼んでや!」
さっきの豊満な女性が、再びカメラにINしてきた。
ガラガラ声の関西弁だが、ボイチェンでよりセクシーになっている。しゃべりはモロ昭和だが。
「ファン社長~♪」
「はいっ」
「なにがスキ?」
「喫茶ミカヤのあんみつ、よりもあなた! いえーい!」
水沢と違って、社長は甘党で酒が飲めない。
なんでこの二人がコンビを組んでいるのだろうと、オレも疑問に思うくらいだ。
とても中身が、バーコード頭とは思えなかろう。
「次! 【七光 八重】! いってみよう!」
虹色のグラデーションが掛かったドレスを着た、スレンダーな少女が前に出る。
「はい! 七光 八重です! 娘が、Vのトップアイドルです! 娘の七光り、という設定で、やっていきます!」
オレたちでも知っている、超有名アイドルが、娘だった。
「まじかよ?」
「このアバターも、娘と同じママで。3Dモデリングも、同じ方が担当なさってくれています」
「いわゆる、箱アイドルですよね? 許可は?」
「社長を介して、取ってもらっていますっ。ただし、名乗るだけね」
頻繁なコラボとか凸は、当然ながらムリである。
「わたしはわたしで、手探りでこの会社を大きくしていく所存です!」
「わかりました。じゃあ、なにがスキー?」
「娘! よりも……やっぱり娘しか勝たん!」
正直でよろしい!
「はい次は五人目、【山梨 水沢】!」
人魚の姿をした男性が、手を挙げる。
彼だけワケあって、3Dアバターがない。2D用アバターを、手に持ってもらっている。
「はーあーいっ。男の娘系一人二役Vチューバーの、山梨 水沢でーす」
「ご説明させていただきます。なんで彼だけ、アバターがないのか? 実はですね、彼は男の娘としての活動をやめておりません」
いわゆる「超美麗3D」という扱いにさせてもらっている。
「人魚コスの超美麗が【山梨】。人魚2Dアバターのほうが、【水沢】という設定ですっ」
「わかりました、では山梨水沢ちゃーん」
「はあい」
「なにがスキ?」
「女装、よりもオ・ト・コ」
一番熱のこもった発言で、全員が総毛立った。
「……以上を持ちまして」
「こらこらこらぁ!」
ナイスツッコミを、六番手が担当してくれる。
「冗談冗談! はいラスト二番目はー、【OYA・KATA】!」
「はーいですぅ! ガンカタ系Vの、OYA・KATAですぅ。特技はガンカタですぅ」
ガンカタが得意な、ロリアバターである。我々の中でもっともフリフリ率が高い。
「えっと、ヤバいです。こんな見た目ですけど、中身五〇代の元関取です」
会場が、どよめく。いい、リアクションだ。
我々は中身を見ているので、今更って感じなのだが。
「では、OYA・KATA~♪」
「はーい」
「なにがすき?」
「お・に・い・ちゃ・ん!」
ずい、ずい、と、OYA・KATAがカメラの前に迫ってくる!
「OYA・KATAは! おにいちゃんのことが! 大好きなの!」
アドリブで、OYA・KATAがカメラを掴む。
「OYA・KATAは、おにいちゃんが! 大、大、大好きなっ、のっ!」
「キツい! OYA・KATA、キッツいって!」
「大好きっ、なーっのっ!」
ドアップで、OYA・KATAがカメラに迫る。
「ラスト、つばさちゃーん」
最後に、全員からオレが呼ばれた。
「はーい」
「何がスキ?」
「もちろん大好き、ス・パ・チャ!」
オレは好感度ゼロ系V、円城景 つばさとは、オレのことだ。
「では、このバ美肉七人でお送りいたします! それでは、お付き合いくださいね~。最後OYA・KATA! なんか言いたいことある?」
「見てくれないと、張り手!」
「では、尾鰭なき野郎ども、よろしくおねがいしまーす!」
OYA・KATAが往年の張り手をカメラに向かって見舞い、配信は終わった。
この人、中身は五〇代の元関取・元マジモンの親方なんだよなあ。
親方の情熱がなかったら、七人のバ美肉事務所は立ち上がらなかっただろう。
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