七人のバ美肉 ~美少女V事務所を立ち上げたら、オッサンたちしか来なかった~

椎名 富比路

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第四章 バ美肉、ファンタジー世界へ

第25話 釘 五寸 父娘配信 前編

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 くぎ 五寸いつきの配信が始まった。

 彼女の父親は、七光ななひかりちゃんである。
 本名は菅生すごうさん。商社の役員で、めっちゃえらいさんだ。

 配信者としては、お客があまり多くない。
 リスナーと生活の次元が、かなり違いすぎるのだ。

 ウチの【ファン・レバレッジ】社長は、クズ鉄集めからのし上がってきた。文字通り、裸一貫からの商売人だ。服装もお金の使い方も、所帯じみている。庶民の気持ちに寄り添えるのだ。

 対して七光ちゃんは、生まれたときから富豪一族である。エリート家系のため、庶民の感覚がいまいちわかっていない。
 だからマイナスかと言われると、そうでもなかった。
 金持ちには、特有のポンコツさがある。電車の乗り方がわからん、とか。

 また七光ちゃんは最近、「虫が苦手」という弱点が発覚した。
 
 そういったキュートさも、ファン急増の手助けになっている。


「ハローエブリワン! 呪いのVチューバー、釘 五寸だよ~。今日もファンサという呪いをかけていくからね。今日は、くいパパに来てもらっているよ」

「どうも。V界の無課金おじさん、杭パパです」

 杭そのままの棒切れが、画面に現れた。
 この物体が、五寸の父親という設定である。

 五寸は親子共演するとき、それ専用のアバターで現れるのだ。

 釘の親だから、杭なのである。

「今日はパパに、質問が大量に来ているよ。マシュマロってやつ」

「はい。なんでもお答えしましょう」

「最初の質問。『近年お嬢さんがスキャンダルが発覚した、というか、誤情報だったわけですが、週刊誌にスクープされちゃいましたね? そこで質問ですが、五寸ちゃんと交際する際、必要な要素があればお聞かせください』とのことです!」

「それより、仕事をがんばってください」

 間髪入れず、杭パパは断言した。

 身も蓋もねえ!

「杭パパ。ぶっちゃけるねえ」
 
「いやだって、それしか言いようがありませんよ。仕事しないで家でゲームパッド持っているような旦那と、あなたは結婚したいですか? 家は洗い物も、洗濯物も散乱していて、夫は画面の向こうのアイドルに夢中とか、あなた結婚したいです?」

「ああーっ。ぜってーヤダ」

 五寸も、そこは同意する。

「でしょ? 主夫だっつっても、家事一切しないでテレビばーっかり見ているような相手なんて、夫としては失格でしょう。ヒモだって、家事くらいしますよ。きちんと家のことをやっておいて、罪悪感なくお小遣いもらい、馬やパチに行くんです」

「ヒモにやたら、詳しいですね?」

「知り合いの妹が、ヒモを飼っているそうなので」

 ああ、これ山梨やまなし 水沢みずさわの話じゃん。

 妹を漫才のネタにしてるんだよな、山梨って。

「うわあ、養分にされてますやん」

「親戚も、アイドルに入れあげていた過去がありまして」

 金持ちは金持ちで、苦労しているんだな。
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