七人のバ美肉 ~美少女V事務所を立ち上げたら、オッサンたちしか来なかった~

椎名 富比路

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第五章 バ美肉、ダンジョンへ

第36話 お約束

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「ほな。ワイの出番やな!」

 ロールプレイを忘れて、レバっちが宝箱の側に近づく。

「気をつけてね~。レバっち。罠の解明が必要だよ~」

 なしこが、警告する。いっしょになって、宝に近づきながら。

 ああもう、これ、失敗前提で動いてやがるな。そういうロールプレイか。

「いきまっせ! キーピックを鍵穴に差し込んで、罠の判別をします!」

「では、罠の判別をしましょう。当たりは……」

 オレは、ダイスを振った。
 
「二と三と四と六です。一と五が出たら、罠を喰らいます」

「異世界に飛ばされたりするんか?」

「ないです。もうここが異世界なんで」

「さよか。具体的にどんな罠が」

「それも、ダイスの目で決まってます」

 一が、「石のツブテ」。目に当たると痛い。ダメージ判定。
 
 二は、「毒ガス」。パーティ全員に毒を食らうかの「判定」が入る。一番最悪かも。

 三を引くと、「警報」が鳴る。モンスターを呼び出してしまう。それだけではなく、宝箱の中身の判定も、やり直しになるのだ。
 
 四は、「ショック」。電撃で誰かが確定のマヒ状態に。
 
 五は、「毒の矢」だ。単体のみながら、毒ガスと違って「確定で」毒を食らう。

 六は、「盗賊の手」という。アイテムを一つ、ロストする。失うのは、回復薬が定番だ。リソースを割きたくないときは、裂けたい罠である。

 毒やマヒはダメージの強さというより、アイテムや魔法を遣わされる。いわゆる「リソース消費」が、ジワジワといやらしい。

 ただありがたいのは、罠を食らっても中身までロストしない点だ。
 罠だけ食らってアイテムも取れませんでしたでは、目も当てられないし。

「アバーッ! イッタイ、メガー!」

 目を押さえながら、レバっちが悶絶する。

 罠をくらったか。もうお約束というか、関西人特有のお家芸だな。

「三分の一を引いたか。それでこそ、芸人だな」

「言うてんと、回復してーな。相棒~」

 レバっちは、ゆーなを勝手に相棒扱いする。

「こんなところで、リソースを割きたくないんだけどな」

「いやあ。まったくだ」

 このゲームは、割といちいち引き返す必要があるのだ。

 アイテムの整理もあるが、なによりリソース管理が大変だから。

 ムダに動くと、すぐに魔力が枯渇する。

「で、中身は?」

「鑑定して、と。【ツノカブト】やて」

 どうしよう。序盤ではそれなりに強い防具である。

「死にやすいやつにつけるのが、鉄板だな」

「つばさちゃんが使ったら? あんた前衛だし。アタシは死にやすいかもだが、そこまで狙われないぞ」

 ゆーなちゃんは、装備を断った。

「私も、盾があるからな」

 もう序盤だと、結構防御が過剰なので。

「では、ワタシにください。前衛なんですが、盾持ちではなくて防御が紙なので」

 ヒカリが、手を挙げた。

「わかった。ヒカリちゃんにあげるよ。みんないい?」

 全員からOKをもらって、ヒカリがツノカブトを装備する。

「これくらいの罠やったら、任せてや!」

「いや、深く潜ると、罠の種類も変わるんで」

「おおおう……」
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