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1話
しおりを挟む思ったことはないだろうか
『あぁ、超スゴい身体能力が欲しい』と。
アニメや漫画のキャラクター達が持つような、走るだけで大地が割れ、衝撃波が発生するような。
僕は、思うんだ。そんな『超スゴい身体能力』が欲しいと。
言うまでもなく、そんな『超スゴい身体能力』なんてもの普通は絶対に手に入らない。
現実の人間が、どれだけ鍛えても手に入らない力だ。絶対に。
絶対に手に入らない。
はずだった。
はずだったのに、なぜか僕は、突然なんの前触れもなく『超スゴい身体能力』を手に入れた。
ある日突然『超スゴい身……
あぁ『超スゴい身体能力』だと長いから、これからは『超身』と呼ぶことにするが
そんな『超身』を得た僕は思ったんだ。
金持ちになりたい、と。
不純だと。
その力を人の為に使えと。
そんなことを言う人もいるだろう。
だが、言わせてもらおう。
うるせぇ! と。
どんな理由で、いや、理由があるのかすら知らないが、僕がこの力を持ったんだ。
なら、この力は僕のもので、どう使おうが僕の勝手だ。
というわけで、大金持ちの第一歩として『超身』を活かした動画投稿を始めてみよう。まずは、撮影だ!
出来上がった初動画。【高速で踊ってみた!!】を投稿!
ふふふっ、これならバズるに違いない。フハハッ、ガッポガッポだぜ。
初めて動画を投稿してから一週間。
伸びない。動画の再生数が全く伸びない。伸びる気配がない。
ど、どうなってるんだ?動画は完璧だったはずだっ!
【高速で踊ってみた!!】
7回視聴 一週間 …
○ 『超身チャンネル』1 ________チャンネル登録
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◇◆◇
いつ見ても。
何度見ても。
再生数が変わらない。
全く、全然、バズってない。
なんてことだ……僕の"バズって広告収入でガッポガッポ作戦"が失敗するだなんてっ!
……けど、僕は諦めないぞ。
動画がだめなら、カンパでガッポガッポ作戦だ!
路上ライブでカンパもらってる人らがいるし、僕も多分、いや、確実に稼げる。
よし、思い立ったらすぐ行動だ!
近所でやるのは怖かったので、家から少し離れた渋谷にやってきた。
20km程度の距離だったので10秒もかからずに到着。
目の前に見えるスクランブル交差点。
ひとが、人が多すぎるッ!
くッ、これが、渋谷か……
少し、いや、かなり緊張するがお金の為だ、仕方ない。
僕の、超圧倒的高速ダンスを披露する時間だッ。
見よッ僕のダン───
「ちょっといいかな、君」
「えっ?──お、おまわりさん?」
「ずっと同じ場所で変な事をしている人物がいると、通報があってね。 少し見ていたんだけど、君のことだよね」
「つ、つうほ──ぇぁ、す、すみません……」
とてもすごく注意された。
ちくしょう。
通報するなんて、そんな変な事してなかったのに!
ちょっと、少しだけ速くクネクネしてただけなのに!
酷い奴もいたもんだ!
もう、寝る!
起きた。
頭がスッキリしてる、今の僕ならなんでも出来る気がするっ。
寝起き限定で IQ 1億5000万を超える、僕が考え出した最適な金稼ぎの方法。
それは
カツアゲだ!
勘違いしないで欲しいが、カツアゲと言っても悪い奴から金を奪うだけだから。悪いことじゃないから。
むしろ悪い奴に使われてしまう可哀想なお金を、僕が有効活用するんだから、これは善行です。
てなわけで、善行を積みにいくぜ!
深夜2時。
キツネのお面よし。
お金入れる袋よし。
準備OK。
悪そうな奴ら探しに行くぞッ!
むっ! コンビニの前で酒飲んでるそれっぽい悪そうな奴らを発見!
今のお面をつけた僕は無敵だ。近付くぜ!
「あ? 何だお前。きめぇお面つけやがって」
「飛んでみろ」
「あ゛?」
「飛んでみろ」
「何言ってん──」
「飛んでみろ」
「……お前ら、コイツが俺達と遊びたいってよ!」
その一言で、僕の体を押さえてくる悪そうな奴ら。
「押さえとけ。 俺が遊んでやるからよッ!」
殴りかかってくる。
とてもゆっくりに見えるその拳を、頬で受ける。
……正当防衛だ!
片足で地面を踏みつける。
それだけで、大きな揺れと共に衝撃波が発生。
僕を殴った奴以外の6人全員が吹き飛び、気絶。
殴った奴に近付き告げる。
「ひっ! な、なんなんだよお前ッ!」
「飛んでみろ」
「わ、分かったッ! と、飛ぶよ! 飛ぶから殺さないでくれッ!」
数度ジャンプする悪そうな奴。
そして、聞こえてくる"チャリンチャリン"という音。
これは……小銭の音ッ!
「出せ」
「な、何をッ?」
「出せ」
「わ、わかった! か、金だろ!? 出す! 出すから殺さないでくれ!」
悪そうな奴から 7万円 を手に入れた!
悪そうな奴ら(気絶中)計6名から 11万円 を手に入れた!
合計 18万円 手に入れた!
深夜2時から5時までの3時間で、合計56万円を手に入れることが出来た。
グヘヘ、気分的には大金持ちだ。最高。
僕はこの、深夜にカツア──お金の回収を二週間続け、合計230万円手に入れた。
お金を手に入れたのはいい。もっと欲しい。
けど、ここ最近、何故か悪そうな奴が全くいない。そのせいでお金が稼げないでいる。
はぁ……貯めてた貯金箱を無くした気分だ。
まぁいいか。飽きてきてたし。よし、別の方法で稼ごう!
とは言っても、どんな方法で稼ぐか、だ。
格闘家やスポーツ選手等で稼ぐことはできるだろう。けど、僕がやりたいのはそういうのじゃないんだ。
もっとこう、好き勝手してお金が入ってくるような……
うーん、ハッ! そうだ! マッチポンプだ!
この世界にファンタジーの怪物を作って襲わせる!
そしてそれを僕が守る!
そしたら、守ったお礼でお金をくれる!
ガッポガッポだ!
身体能力が凄いだけじゃ、怪物は作れないって?
いいか、身体能力に不可能はないんだよぉ!
よし! じゃあ、怪物いっぱい作るぞ!
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