13 / 33
Ⅳ.加賀編
天然爆弾
しおりを挟む
出社すると、昨日泥酔していた後輩の高橋がデスクに頬をつけて眠っていた。この時間にいるのは珍しい。
フロアにいるのは高橋の他に事務員の女性社員が二人。営業部は始業時間が九時からで、早朝は前畑若菜と後藤めぐみと俺の三人でいることが多い。高橋は五分前出勤が常だ。
後藤が俺に気づいて「おはよう」と言った。
デスクでスマホをいじっていた前畑も、「加賀君、おはよう!」と声を張り上げる。前畑は早朝に出社しても、仕事をせずにスマホをいじっているだけだ。本人いわく、俺と少しでも長く一緒にいたいからだそうだ。
同い年だが入社二年目で、当時から付き合ってと言われ続け、そのたびに社内恋愛はしないと断っている。
「おはよう。こいつ、いつからここで寝てんの?」
デスクに鞄を置いて、訊いた。後藤がうんざりした顔で高橋の頭を睨む。
「私が出社したときにはもういたよ。いびきうるさいから起こしてくれる?」
「了解」
向かいのデスクに回り込んで、寝癖のひどい頭をかき混ぜながら、耳元で囁く。
「おはよう」
「わっ、えっ、あっ、主任、おはようございます」
飛び起きて、えへへと取り繕うように笑ってよだれを拭う。
「今日は早いな」
「親に早起きさせられて、車で送って貰ったんです。もっと寝てたかったのに」
あくびをしてから、「あ」と思い出した顔をする。
「昨日ありがとうございました。よく覚えてないけど、僕、何か迷惑かけたみたいで。お母さんに怒られました」
後藤が観葉植物に水をやりながら、ちっと鋭い舌打ちをした。おそらく「お母さん」という言葉にいらついたのだろう。前に「そこは母、でしょう」と叱っていた。
高橋に対して辛辣なのは、後藤だけじゃない。前畑も同様に、高橋をこき下ろす。男女問わず多くの社員から疎まれていて、入社一週間で付けられたあだ名は「ゆとり」だ。
「覚えてないってどこから覚えてないんだよ」
「主任のアパート行った記憶がなくて」
「お前もう酒やめろ」
高橋は口をとがらせて「やですよう」と言った。これで二十二歳だとは思えない。倉知のあの老成した部分を少し分けてやりたい。
「ちょっとゆとり、あんたまた加賀君んちに行ったの?」
前畑がデスクを叩いて立ち上がる。新入社員の歓迎会で前後不覚になるまで酔った高橋を、仕方なくアパートに泊めたことがある。それを知ったとき前畑は怒り狂い、高橋は憎悪の対象になった。
「行った記憶ないんですってば」
高橋が応戦する。
「でも行ったんでしょ? 馬鹿じゃない? 厚かましい! 迷惑すぎ!」
「前畑さん、羨ましいんでしょ?」
「はあっ? そうだけど!」
「へっへーん、いいでしょー」
「もおおおお、むかつくこいつ! マザコンのくせにいい!」
いつからここは小学校になったのか。後藤が絵に描いたような呆れ顔で二人のやりとりを見ている。
「高橋お前、髪なんとかしろよ」
寝癖がひどすぎる。まるでアフロだ。
高橋の椅子を回転させて自分のほうに向かせると、修復を試みる。手櫛で整えていると、「キャーッ!」と前畑が悲鳴を上げた。
「そんな奴の髪なんてほっとけばいいじゃない! やめてよ、汚い、加賀君の手が穢れる!」
「ほっとけないっつの。朝一で営業一件入ってんだから」
後藤が「加賀君」と呼んで、何かを投げてきた。片手でキャッチすると、折りたたみ式のクシだった。普通は手渡す場面で投げるのが、女らしくなくて後藤の面白いところだ。
「主任の手がいいなー。気持ちいいなー。もっとしてくださいよー」
「キモイ」
三人の声がハモった。
「高橋君、あなたもう大人なんだから、トイレで鏡見ながら自分でやりなさい」
後藤がぴしゃりと言うと、高橋は「はぁい、わかりましたー」と間延びした返事をして立ち上がった。後藤は既婚者で、俺より二歳上だが、小学生の子どもがいる。以前、高橋は息子より何もできないとぼやいていた。それを聞いた全員が、言い過ぎだとは言わず真顔でうなずいた。
高橋は本当に子ども同然なのだ。
「加賀君、優しいのはいいことだけど、もっと突き放してもいいんじゃない」
高橋がフロアから消えると、後藤が言った。
「あれじゃ成長できない。それに、そのうちプライベートにも平気で割り込んでくるよ」
「そうだよ、ていうかもう割り込まれてるじゃん。酔ってアパート来るなんて怖すぎ」
二人が同調する。
俺が高橋に厳しくできないのは、単に周りがあまりにも攻撃するからであって、優しいとかじゃない。
それに、あいつはあいつなりに頑張っている。と思いたい。
「俺まで厳しくしたら、潰れる。あいつにも逃げ場は必要だよ」
「損な性格だよね。優しすぎ」
はあ、と後藤がため息をつく。前畑が両手を天井に突き上げて、叫んだ。
「もお、加賀君好き! 付き合って! むしろ結婚して!」
「はいはい」
毎度のことだから、軽く受け流す。悶絶する前畑をスルーして、自分のデスクに戻った。パソコンを起動させると、ポケットで携帯が震えた。メールだ。
『生殺しでつらいです。さわりたかったです。』
倉知にしては簡潔なメールだった。どんな顔をしてこれを打ったのか、想像できる。返信画面を開いて、メールを打つ。
『公共の場で欲情してんなよ』
送信。すぐに返信があった。
『ゴメンナサ──・゜・(。>д<。)──イ』
笑い声が出そうになった。業務メールしか送れないと思っていたのに、まさかの顔文字か。どうツッコミを入れようか、と迷っているとすぐにまた新着メールが届く。
『すみません、スマホ使いこなしてなくて、変なの送ってしまいました。』
なんだそれ。
必死で笑いを噛み殺す。朝っぱらから天然爆弾が炸裂か。
「加賀君!」
いつの間にかすぐ隣に前畑が立っていた。すごい勢いで顔を近づけてくる。
「何、つーか近い」
「もしかして、彼女できた?」
「え」
「だって、すごい嬉しそうな顔してメールしてるんだもん」
指摘されて自分の顔を撫でた。
「嬉しそうだった?」
「うん、それに、加賀君が携帯でメールしてるなんて珍しい」
「あー……」
探る目で俺を見ていたが、やがて悲しげな顔に変化していく。
「彼女だ!」
「えーと、ごめんね」
「う……、うう、めぐみさん、私、今日早退します!」
泣きながら後藤に飛びかかっていく。受け止めた後藤は「ほんとに?」という目で見てくる。
俺は自他ともに認める仕事馬鹿だ。以前付き合っていた彼女はそれが気に食わなくて、「仕事と私とどっちが大事?」というよく聞くあの選択肢を突きつけてきた。
その科白自体理解できなかったし、仕事の手を抜けと要求されるのが苦痛で、別れた。
後藤は俺のそういう事情を知っている。社内で唯一プライベートをさらすのは、後藤だけだ。
無神経な上司たちのように「彼女は作らないのか」と下世話なことは言わないし、前畑を応援したりもしない。俺より二歳上の、勤続年数も二年上の、しかも女性を、この会社では誰より信用している。
ごめん、と顔の前で手を合わせて拝む。後藤は少し笑って、泣きつく前畑の背中をさすった。
「え、主任、彼女できたんですかー?」
髪を整えて戻ってきた高橋の一言に、前畑のスイッチが入り、号泣する。きっと泣き真似だろう。
「じゃあ合コンいけないですね」
つまらなそうに言う高橋を無視して、携帯の画面に目を落とす。
顔が笑う。
倉知は、俺の癒しだと自覚した。
フロアにいるのは高橋の他に事務員の女性社員が二人。営業部は始業時間が九時からで、早朝は前畑若菜と後藤めぐみと俺の三人でいることが多い。高橋は五分前出勤が常だ。
後藤が俺に気づいて「おはよう」と言った。
デスクでスマホをいじっていた前畑も、「加賀君、おはよう!」と声を張り上げる。前畑は早朝に出社しても、仕事をせずにスマホをいじっているだけだ。本人いわく、俺と少しでも長く一緒にいたいからだそうだ。
同い年だが入社二年目で、当時から付き合ってと言われ続け、そのたびに社内恋愛はしないと断っている。
「おはよう。こいつ、いつからここで寝てんの?」
デスクに鞄を置いて、訊いた。後藤がうんざりした顔で高橋の頭を睨む。
「私が出社したときにはもういたよ。いびきうるさいから起こしてくれる?」
「了解」
向かいのデスクに回り込んで、寝癖のひどい頭をかき混ぜながら、耳元で囁く。
「おはよう」
「わっ、えっ、あっ、主任、おはようございます」
飛び起きて、えへへと取り繕うように笑ってよだれを拭う。
「今日は早いな」
「親に早起きさせられて、車で送って貰ったんです。もっと寝てたかったのに」
あくびをしてから、「あ」と思い出した顔をする。
「昨日ありがとうございました。よく覚えてないけど、僕、何か迷惑かけたみたいで。お母さんに怒られました」
後藤が観葉植物に水をやりながら、ちっと鋭い舌打ちをした。おそらく「お母さん」という言葉にいらついたのだろう。前に「そこは母、でしょう」と叱っていた。
高橋に対して辛辣なのは、後藤だけじゃない。前畑も同様に、高橋をこき下ろす。男女問わず多くの社員から疎まれていて、入社一週間で付けられたあだ名は「ゆとり」だ。
「覚えてないってどこから覚えてないんだよ」
「主任のアパート行った記憶がなくて」
「お前もう酒やめろ」
高橋は口をとがらせて「やですよう」と言った。これで二十二歳だとは思えない。倉知のあの老成した部分を少し分けてやりたい。
「ちょっとゆとり、あんたまた加賀君んちに行ったの?」
前畑がデスクを叩いて立ち上がる。新入社員の歓迎会で前後不覚になるまで酔った高橋を、仕方なくアパートに泊めたことがある。それを知ったとき前畑は怒り狂い、高橋は憎悪の対象になった。
「行った記憶ないんですってば」
高橋が応戦する。
「でも行ったんでしょ? 馬鹿じゃない? 厚かましい! 迷惑すぎ!」
「前畑さん、羨ましいんでしょ?」
「はあっ? そうだけど!」
「へっへーん、いいでしょー」
「もおおおお、むかつくこいつ! マザコンのくせにいい!」
いつからここは小学校になったのか。後藤が絵に描いたような呆れ顔で二人のやりとりを見ている。
「高橋お前、髪なんとかしろよ」
寝癖がひどすぎる。まるでアフロだ。
高橋の椅子を回転させて自分のほうに向かせると、修復を試みる。手櫛で整えていると、「キャーッ!」と前畑が悲鳴を上げた。
「そんな奴の髪なんてほっとけばいいじゃない! やめてよ、汚い、加賀君の手が穢れる!」
「ほっとけないっつの。朝一で営業一件入ってんだから」
後藤が「加賀君」と呼んで、何かを投げてきた。片手でキャッチすると、折りたたみ式のクシだった。普通は手渡す場面で投げるのが、女らしくなくて後藤の面白いところだ。
「主任の手がいいなー。気持ちいいなー。もっとしてくださいよー」
「キモイ」
三人の声がハモった。
「高橋君、あなたもう大人なんだから、トイレで鏡見ながら自分でやりなさい」
後藤がぴしゃりと言うと、高橋は「はぁい、わかりましたー」と間延びした返事をして立ち上がった。後藤は既婚者で、俺より二歳上だが、小学生の子どもがいる。以前、高橋は息子より何もできないとぼやいていた。それを聞いた全員が、言い過ぎだとは言わず真顔でうなずいた。
高橋は本当に子ども同然なのだ。
「加賀君、優しいのはいいことだけど、もっと突き放してもいいんじゃない」
高橋がフロアから消えると、後藤が言った。
「あれじゃ成長できない。それに、そのうちプライベートにも平気で割り込んでくるよ」
「そうだよ、ていうかもう割り込まれてるじゃん。酔ってアパート来るなんて怖すぎ」
二人が同調する。
俺が高橋に厳しくできないのは、単に周りがあまりにも攻撃するからであって、優しいとかじゃない。
それに、あいつはあいつなりに頑張っている。と思いたい。
「俺まで厳しくしたら、潰れる。あいつにも逃げ場は必要だよ」
「損な性格だよね。優しすぎ」
はあ、と後藤がため息をつく。前畑が両手を天井に突き上げて、叫んだ。
「もお、加賀君好き! 付き合って! むしろ結婚して!」
「はいはい」
毎度のことだから、軽く受け流す。悶絶する前畑をスルーして、自分のデスクに戻った。パソコンを起動させると、ポケットで携帯が震えた。メールだ。
『生殺しでつらいです。さわりたかったです。』
倉知にしては簡潔なメールだった。どんな顔をしてこれを打ったのか、想像できる。返信画面を開いて、メールを打つ。
『公共の場で欲情してんなよ』
送信。すぐに返信があった。
『ゴメンナサ──・゜・(。>д<。)──イ』
笑い声が出そうになった。業務メールしか送れないと思っていたのに、まさかの顔文字か。どうツッコミを入れようか、と迷っているとすぐにまた新着メールが届く。
『すみません、スマホ使いこなしてなくて、変なの送ってしまいました。』
なんだそれ。
必死で笑いを噛み殺す。朝っぱらから天然爆弾が炸裂か。
「加賀君!」
いつの間にかすぐ隣に前畑が立っていた。すごい勢いで顔を近づけてくる。
「何、つーか近い」
「もしかして、彼女できた?」
「え」
「だって、すごい嬉しそうな顔してメールしてるんだもん」
指摘されて自分の顔を撫でた。
「嬉しそうだった?」
「うん、それに、加賀君が携帯でメールしてるなんて珍しい」
「あー……」
探る目で俺を見ていたが、やがて悲しげな顔に変化していく。
「彼女だ!」
「えーと、ごめんね」
「う……、うう、めぐみさん、私、今日早退します!」
泣きながら後藤に飛びかかっていく。受け止めた後藤は「ほんとに?」という目で見てくる。
俺は自他ともに認める仕事馬鹿だ。以前付き合っていた彼女はそれが気に食わなくて、「仕事と私とどっちが大事?」というよく聞くあの選択肢を突きつけてきた。
その科白自体理解できなかったし、仕事の手を抜けと要求されるのが苦痛で、別れた。
後藤は俺のそういう事情を知っている。社内で唯一プライベートをさらすのは、後藤だけだ。
無神経な上司たちのように「彼女は作らないのか」と下世話なことは言わないし、前畑を応援したりもしない。俺より二歳上の、勤続年数も二年上の、しかも女性を、この会社では誰より信用している。
ごめん、と顔の前で手を合わせて拝む。後藤は少し笑って、泣きつく前畑の背中をさすった。
「え、主任、彼女できたんですかー?」
髪を整えて戻ってきた高橋の一言に、前畑のスイッチが入り、号泣する。きっと泣き真似だろう。
「じゃあ合コンいけないですね」
つまらなそうに言う高橋を無視して、携帯の画面に目を落とす。
顔が笑う。
倉知は、俺の癒しだと自覚した。
61
あなたにおすすめの小説
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる