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初めての出動
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今回の出動は余程のことがない限り、日帰りで完遂できるミッションだと言う。移動距離もそれほど長くないため、おおまかな作戦会議は事前に行われた。
馬車で向かった山あいの現場は、緊張した空気が流れていた。村人はみな、隣の村に避難しているらしく、人の気配は無い。
「事前調査によると、森の主と思われる魔物は林の奥にいるようです。ですから、まずは村に近づいている魔物を倒した方が良いでしょう」
「了解した」
「練習通り、ディーターを先頭にして下さい。なるべく陣形は崩さないように」
「「「「ヤー!」」」」
森に向かうと、ぎらりと鋭く光る眼が見えた。
「早速お出ましだ」
シュトルツさんが先頭をきって切りつけ、致命傷を負わせる。次に素早くレクラムさんが完全に殺し、僕は魔法でアイテムを回収。マルクルさんは僕の護衛だ。しかし、万が一に備え、アイテムを回収しながらも、周囲に気を巡らせる。
「アヴシュナイデン!」
シュトルツさんに襲い掛かろうとしていた魔物を切りつけ魔法で追い払う。
「おわっ。気付かなかった。今の切りつけ魔法は誰だ?」
「あ、僕です。すみません。勝手に」
「いや、ありがとうマティアス。危ないと言われてからでは遅かった」
「いえいえ」
「ディーターしっかりしてよね」
「次に行こうか」
次々と敵を倒していくと、ついに「森の主」が現れた。
「グゥルルル」
低いうなり声に怯みそうになってしまう。
今までの敵は思っていたほど、たいして強いとは感じなかった。しかし、「森の主」は災害レベルが高いため、油断は禁物だ。絶対に倒さなければならない、失敗は許されないという重圧が心にのしかかる。騎士団員は人を守るために戦う。人の命がかかっているのだ。
とりあえず今までどおり、シュトルツさんが真っ先に切りつける。
「待て、レクラム。こいつは硬い。一発では倒せん!」
さきほどまでと比べると、やはり強さは段違いのようだ。シュトルツさんの腕力でも切れないとなると、僕の魔法の出番だ。
「防御力を下げます。アミーリッヒシュナイハ! シュトルツさん、もう一度お願いします」
「その前にカウンターが怖いから、目を潰しておくね」
マルクルさんが目を狙い、「森の主」が身動きできなくなったところを再びシュトルツさんが切りつける。
「防御力を下げただけとは思えないくらい柔らかくなったぞ」
そうして、無事に「森の主」を討伐するミッションを成功させることができた。
「今回のMVPは間違いなくマティアスだな」
「そうだね」
「そ、そんなことないです」
僕としては、あまり本気を出していなかったため、予想外の評価に驚く。
「マティアス、攻撃も回復も強化も、ぜーんぶ一人でやっちゃうんだもんねー」
「私の予想を遥かに超える活躍ぶりでした。相当の魔力を消費したと思いますが、欠乏症状は出ていないですか?」
「大丈夫です」
「それなら良かったです。では馬車に乗って帰りますよ」
「「「「ヤー!」」」」
無事に誰も負傷することなく、事が済んだ。その安心感から、僕は馬車でぐっすりと眠りについてしまったのだった。
馬車で向かった山あいの現場は、緊張した空気が流れていた。村人はみな、隣の村に避難しているらしく、人の気配は無い。
「事前調査によると、森の主と思われる魔物は林の奥にいるようです。ですから、まずは村に近づいている魔物を倒した方が良いでしょう」
「了解した」
「練習通り、ディーターを先頭にして下さい。なるべく陣形は崩さないように」
「「「「ヤー!」」」」
森に向かうと、ぎらりと鋭く光る眼が見えた。
「早速お出ましだ」
シュトルツさんが先頭をきって切りつけ、致命傷を負わせる。次に素早くレクラムさんが完全に殺し、僕は魔法でアイテムを回収。マルクルさんは僕の護衛だ。しかし、万が一に備え、アイテムを回収しながらも、周囲に気を巡らせる。
「アヴシュナイデン!」
シュトルツさんに襲い掛かろうとしていた魔物を切りつけ魔法で追い払う。
「おわっ。気付かなかった。今の切りつけ魔法は誰だ?」
「あ、僕です。すみません。勝手に」
「いや、ありがとうマティアス。危ないと言われてからでは遅かった」
「いえいえ」
「ディーターしっかりしてよね」
「次に行こうか」
次々と敵を倒していくと、ついに「森の主」が現れた。
「グゥルルル」
低いうなり声に怯みそうになってしまう。
今までの敵は思っていたほど、たいして強いとは感じなかった。しかし、「森の主」は災害レベルが高いため、油断は禁物だ。絶対に倒さなければならない、失敗は許されないという重圧が心にのしかかる。騎士団員は人を守るために戦う。人の命がかかっているのだ。
とりあえず今までどおり、シュトルツさんが真っ先に切りつける。
「待て、レクラム。こいつは硬い。一発では倒せん!」
さきほどまでと比べると、やはり強さは段違いのようだ。シュトルツさんの腕力でも切れないとなると、僕の魔法の出番だ。
「防御力を下げます。アミーリッヒシュナイハ! シュトルツさん、もう一度お願いします」
「その前にカウンターが怖いから、目を潰しておくね」
マルクルさんが目を狙い、「森の主」が身動きできなくなったところを再びシュトルツさんが切りつける。
「防御力を下げただけとは思えないくらい柔らかくなったぞ」
そうして、無事に「森の主」を討伐するミッションを成功させることができた。
「今回のMVPは間違いなくマティアスだな」
「そうだね」
「そ、そんなことないです」
僕としては、あまり本気を出していなかったため、予想外の評価に驚く。
「マティアス、攻撃も回復も強化も、ぜーんぶ一人でやっちゃうんだもんねー」
「私の予想を遥かに超える活躍ぶりでした。相当の魔力を消費したと思いますが、欠乏症状は出ていないですか?」
「大丈夫です」
「それなら良かったです。では馬車に乗って帰りますよ」
「「「「ヤー!」」」」
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