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第三章『狭間の街トイン』
第十九話『狭間の街トイン』
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リルンスの上位種と言えるミルモスがギャアギャアと奇声をあげて威嚇するのに構わず、ナシャは猛然と群れの中に突入していった。
ナシャの気迫に圧され、ミルモスが一瞬怯んだのを見逃さず、メイスを頭蓋に叩き込む。
背後から襲ってきたミルモスには後ろ回し蹴りを見舞う。
腹部に強烈な蹴りを食らって吹っ飛んだミルモスは、ウルの容赦ない短剣の一突きで絶命した。
仲間の仇を討とうと刃こぼれした剣で襲いかかってきたが、ハーシマの眠りの雲の魔法により動くことすら許されず、ナシャによって命を刈り取られていった。
なんとか眠りの雲を避けたミルモスが、せめてもの一太刀を浴びせようと決死の形相でハーシマに駆け寄ろうとしたが、すんでのところでハーシマの後ろに回り込んでいたウルに防がれ、喉を切り裂かれた。
ミルモスは虚空を見つめながら声にならない声を出し、崩れ落ちた。
「無事、このフロアも制圧できたようだな」
ナシャがメイスをブンッと一振りしてミルモスの血を振り払き、肩に担ぐ。
「おう、次のフロアが目的のトインだ」
ウルがそう告げると、ハーシマは手を叩いて喜んだ。
「い、い、一体、どどんな所なんでしょうか?」
キラキラした眼差しで聞いてくるハーシマは未知の街への興味が尽きないようだ。
「まぁ、直接見ればわかるから、今のうち色々想像しとけ。多分、違うから」
ウルが悪戯っぽい笑みを浮かべた。
ウルの表現で、普通に考えるような街ではないのだろうと想像できたが、ナシャはあえて何も考えずにありのままを楽しむことにした。
下へ下へ続く薄暗い階段を降りていき、トインの入口から漏れ出る光が見えたころ、ウルはナシャに渡した荷物を受け取り、2人に「とりあえず俺に任せておけ」と伝えた。
ナシャとハーシマが頷いたのを見て、ウルの先導で3人はトインの入口をくぐった。
そこには、牧歌的な風景が広がっていた。
広々とした牧草地では、カルタンと呼ばれる家畜が草を食み、その隣には様々な野菜が育っていた。
小川には小魚が泳ぎ、小鳥たちのさえずりも聞こえてくる。
上を見ると、そこに天井はなく、入道雲が浮かぶ空があった。
そして、ウルが指差す先には農村部の集落のようなものと、潜魔窟の入口があった。
「ここが、トインなのか?」
「ここここここは、潜魔窟の中、ですよね?」
ナシャとハーシマは、想像とは全く違う景色を前に呆気に取られていた。
ウルは、期待通りの2人の反応に気を良くして、トインの説明をしだした。
「そうだ、向こうに集落があって、そこにはさらに地下へと続く潜魔窟の入口もある。潜魔窟と潜魔窟の間の街、それがこの狭間の街トインだ」
「では、兎にも角にも、まずは集落に向かってみよう。ウル殿、先導頼む」
ナシャの呼びかけに、ウルは軽く手をヒラヒラさせて応じ、3人は集落へと歩いていった。
集落には門があり、門番らしき存在が立っているが、見た目がリルンスのような魔物だ。
ナシャはやや身構えたが、ウルが制して、門番のところに歩いていった。
ウルは門番と何やら話をしているようだが、ナシャが知るどの国の言語とも違う言葉で話しているので内容がつかめなかった。
ナシャとハーシマが様子を見ていると、ウルがナシャに向かって何かを要求するような身振りをし始めた。
ナシャは、今回の探索前に渡された荷物なのだろうと察し、荷物をウルに渡し、ウルはそのままそれを門番に渡した。
ウルから渡された門番は中身を
見るなり、興奮した様子でウルと握手を交わし、3人を集落内に通した。
「よし、これで無事にトインに入れたな」
ウルはトインに入るなり、ひとつ伸びをした。
「ウ、ウルさん、あの魔物は?」
「あぁ、あの門番はトパ族と言われる種族で、トインの人口のほぼ全てがトパ族だ。リルンスよりも知能が高く強いから、門番にお土産を持っていっただけだ」
ウルはそう言うと、トインの中にズンズンと進んでいったので、ナシャとハーシマは慌てて後を追いかけた。
ナシャの気迫に圧され、ミルモスが一瞬怯んだのを見逃さず、メイスを頭蓋に叩き込む。
背後から襲ってきたミルモスには後ろ回し蹴りを見舞う。
腹部に強烈な蹴りを食らって吹っ飛んだミルモスは、ウルの容赦ない短剣の一突きで絶命した。
仲間の仇を討とうと刃こぼれした剣で襲いかかってきたが、ハーシマの眠りの雲の魔法により動くことすら許されず、ナシャによって命を刈り取られていった。
なんとか眠りの雲を避けたミルモスが、せめてもの一太刀を浴びせようと決死の形相でハーシマに駆け寄ろうとしたが、すんでのところでハーシマの後ろに回り込んでいたウルに防がれ、喉を切り裂かれた。
ミルモスは虚空を見つめながら声にならない声を出し、崩れ落ちた。
「無事、このフロアも制圧できたようだな」
ナシャがメイスをブンッと一振りしてミルモスの血を振り払き、肩に担ぐ。
「おう、次のフロアが目的のトインだ」
ウルがそう告げると、ハーシマは手を叩いて喜んだ。
「い、い、一体、どどんな所なんでしょうか?」
キラキラした眼差しで聞いてくるハーシマは未知の街への興味が尽きないようだ。
「まぁ、直接見ればわかるから、今のうち色々想像しとけ。多分、違うから」
ウルが悪戯っぽい笑みを浮かべた。
ウルの表現で、普通に考えるような街ではないのだろうと想像できたが、ナシャはあえて何も考えずにありのままを楽しむことにした。
下へ下へ続く薄暗い階段を降りていき、トインの入口から漏れ出る光が見えたころ、ウルはナシャに渡した荷物を受け取り、2人に「とりあえず俺に任せておけ」と伝えた。
ナシャとハーシマが頷いたのを見て、ウルの先導で3人はトインの入口をくぐった。
そこには、牧歌的な風景が広がっていた。
広々とした牧草地では、カルタンと呼ばれる家畜が草を食み、その隣には様々な野菜が育っていた。
小川には小魚が泳ぎ、小鳥たちのさえずりも聞こえてくる。
上を見ると、そこに天井はなく、入道雲が浮かぶ空があった。
そして、ウルが指差す先には農村部の集落のようなものと、潜魔窟の入口があった。
「ここが、トインなのか?」
「ここここここは、潜魔窟の中、ですよね?」
ナシャとハーシマは、想像とは全く違う景色を前に呆気に取られていた。
ウルは、期待通りの2人の反応に気を良くして、トインの説明をしだした。
「そうだ、向こうに集落があって、そこにはさらに地下へと続く潜魔窟の入口もある。潜魔窟と潜魔窟の間の街、それがこの狭間の街トインだ」
「では、兎にも角にも、まずは集落に向かってみよう。ウル殿、先導頼む」
ナシャの呼びかけに、ウルは軽く手をヒラヒラさせて応じ、3人は集落へと歩いていった。
集落には門があり、門番らしき存在が立っているが、見た目がリルンスのような魔物だ。
ナシャはやや身構えたが、ウルが制して、門番のところに歩いていった。
ウルは門番と何やら話をしているようだが、ナシャが知るどの国の言語とも違う言葉で話しているので内容がつかめなかった。
ナシャとハーシマが様子を見ていると、ウルがナシャに向かって何かを要求するような身振りをし始めた。
ナシャは、今回の探索前に渡された荷物なのだろうと察し、荷物をウルに渡し、ウルはそのままそれを門番に渡した。
ウルから渡された門番は中身を
見るなり、興奮した様子でウルと握手を交わし、3人を集落内に通した。
「よし、これで無事にトインに入れたな」
ウルはトインに入るなり、ひとつ伸びをした。
「ウ、ウルさん、あの魔物は?」
「あぁ、あの門番はトパ族と言われる種族で、トインの人口のほぼ全てがトパ族だ。リルンスよりも知能が高く強いから、門番にお土産を持っていっただけだ」
ウルはそう言うと、トインの中にズンズンと進んでいったので、ナシャとハーシマは慌てて後を追いかけた。
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