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1日1狩り。魔物を追っ払います。
5.俺はそんなこと言うつもりなかった。
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「ほら!こっちよこっち!」
「待って……。この人、俺の体力のこと微塵も気にしてないんだけど……。」
ゼェハァと息をつきながら俺は今、案内……というより、ランニングに近いことをリンに強いられていた。タチが悪いのは、彼女がなんの悪気もなくただ施設の案内をしてくれていることで、俺も責めるに責められなかった。
「はぁ……はぁ……。っと、急に止まるな。ほんとに息が詰まる……うぷっ。」
「何やってるのよ。これでも私は最後の方、少しずつペースを落としてたのよ。」
「そんなん気づくか……はぁ。」
ついて行くのに必死で、そんな気配は微塵も感じなかった。冗談抜きで吐きそうになって、なんとかそれを押しとどめる。いやはや、リンがこんなにじゃじゃ馬みたいな奴だとは思わなかった。
「ほら、見てみなさい。あなたが今一番気になってそうなところよ。」
「へ?」
驚いて顔を上げて、現在自分のいる場所を確認してみれば、そこは訓練場だった。ケード・フラットの中でも一番規模の大きそうなその施設は、そのでかでかとした看板を入口の前で誇示するように掲げていた。
中に入ってみれば、その内部の設備も急ピッチにしては中々整っており、たくさんの種類の武器とそれを試運用出来そうな全身鎧を被ったカカシがこれでもかと準備されていた。
「マジか、すげぇ。」
「でしょ。ここでバリケードを守る人達は日々鍛錬を積んでいるの。自慢の訓練場だわ。」
確かにここでなら、思う存分自分の技術を高めることができるし、衛兵たちにとってはうってつけの場所だろう。かくいう俺も、普段お目にかかれないようなそのロマンの塊・たくさんの武器達に心踊っていた。
「おぉ……。」
「そんなに目を輝かせるほど、あなたには刺さったのね……。念の為聞いておくけど、ミノルは武器を扱ったことは一度もないのね?」
「うん、ないな。」
そうキッパリと答えると、リンは信じられないといった疑惑の目を向けてくる。さらに迫ってくるので、俺は首と手を横に振りながら否定を繰り返した。
「ほんとにないからな!?やったことないものはない!悪かったな!」
「信じられないわ……。森でのあの不用心な行動もそうだけど、警戒心皆無だったりとか死ぬ危険性考慮してなかったりする訳?」
「ボロクソ言ってくることに対して物申したいけど、それは一旦置いといてだな……。別に今までそれで生きてこれたんだから仕方ないだろ!」
そう弁明しても未だに疑ってくるリンに対して、どうしたものかと唸っていると一つの妙案を思いついた。
転生してきたことをリンに打ち明けること自体、別に問題ないのでは?俺は別に、世界に悪影響を与えるために来た訳では無い。なんなら、どっちかって言うと問題解決のために来たのだ。隠す必要なんてなくないか?そう思い至った俺はすぐに打ち明けようと試みた。
「あのさ、リン。実は俺……」
「え?」
そこで俺の口は、思いもしない動作を起こす。
『感覚で大体の武器使えるんだ。』
「……はぁ?」
「え。何これ。」
自分が言ったことについて理解が追いつかず、ただただ困惑する。今俺、なんでも武器使えるって言った?口の動作については一旦置いておくとして、おこがましすぎない?目の前に狩猟を生業としてきた、みたいな見た目した御方いるんだぞ?その人の前で、センスだけはあるんすよ……みたいな発言したら。
「あのね……ミノル……。」
「は、はい……。」
嫌な予感が頂点に達した。結末も読めた。
「そんな軽い気概で長の条件を呑んだのなら、私はあなたを軽蔑するわ。」
リンは俺の馬鹿にも程がある発言に眉を吊り上げて怒り、見下すような目を向けてきた。昨日からコツコツと積み上げてきた信頼が、あっという間に崩れ去ってしまったのである。
……勘弁してくれ、本当に。
「待って……。この人、俺の体力のこと微塵も気にしてないんだけど……。」
ゼェハァと息をつきながら俺は今、案内……というより、ランニングに近いことをリンに強いられていた。タチが悪いのは、彼女がなんの悪気もなくただ施設の案内をしてくれていることで、俺も責めるに責められなかった。
「はぁ……はぁ……。っと、急に止まるな。ほんとに息が詰まる……うぷっ。」
「何やってるのよ。これでも私は最後の方、少しずつペースを落としてたのよ。」
「そんなん気づくか……はぁ。」
ついて行くのに必死で、そんな気配は微塵も感じなかった。冗談抜きで吐きそうになって、なんとかそれを押しとどめる。いやはや、リンがこんなにじゃじゃ馬みたいな奴だとは思わなかった。
「ほら、見てみなさい。あなたが今一番気になってそうなところよ。」
「へ?」
驚いて顔を上げて、現在自分のいる場所を確認してみれば、そこは訓練場だった。ケード・フラットの中でも一番規模の大きそうなその施設は、そのでかでかとした看板を入口の前で誇示するように掲げていた。
中に入ってみれば、その内部の設備も急ピッチにしては中々整っており、たくさんの種類の武器とそれを試運用出来そうな全身鎧を被ったカカシがこれでもかと準備されていた。
「マジか、すげぇ。」
「でしょ。ここでバリケードを守る人達は日々鍛錬を積んでいるの。自慢の訓練場だわ。」
確かにここでなら、思う存分自分の技術を高めることができるし、衛兵たちにとってはうってつけの場所だろう。かくいう俺も、普段お目にかかれないようなそのロマンの塊・たくさんの武器達に心踊っていた。
「おぉ……。」
「そんなに目を輝かせるほど、あなたには刺さったのね……。念の為聞いておくけど、ミノルは武器を扱ったことは一度もないのね?」
「うん、ないな。」
そうキッパリと答えると、リンは信じられないといった疑惑の目を向けてくる。さらに迫ってくるので、俺は首と手を横に振りながら否定を繰り返した。
「ほんとにないからな!?やったことないものはない!悪かったな!」
「信じられないわ……。森でのあの不用心な行動もそうだけど、警戒心皆無だったりとか死ぬ危険性考慮してなかったりする訳?」
「ボロクソ言ってくることに対して物申したいけど、それは一旦置いといてだな……。別に今までそれで生きてこれたんだから仕方ないだろ!」
そう弁明しても未だに疑ってくるリンに対して、どうしたものかと唸っていると一つの妙案を思いついた。
転生してきたことをリンに打ち明けること自体、別に問題ないのでは?俺は別に、世界に悪影響を与えるために来た訳では無い。なんなら、どっちかって言うと問題解決のために来たのだ。隠す必要なんてなくないか?そう思い至った俺はすぐに打ち明けようと試みた。
「あのさ、リン。実は俺……」
「え?」
そこで俺の口は、思いもしない動作を起こす。
『感覚で大体の武器使えるんだ。』
「……はぁ?」
「え。何これ。」
自分が言ったことについて理解が追いつかず、ただただ困惑する。今俺、なんでも武器使えるって言った?口の動作については一旦置いておくとして、おこがましすぎない?目の前に狩猟を生業としてきた、みたいな見た目した御方いるんだぞ?その人の前で、センスだけはあるんすよ……みたいな発言したら。
「あのね……ミノル……。」
「は、はい……。」
嫌な予感が頂点に達した。結末も読めた。
「そんな軽い気概で長の条件を呑んだのなら、私はあなたを軽蔑するわ。」
リンは俺の馬鹿にも程がある発言に眉を吊り上げて怒り、見下すような目を向けてきた。昨日からコツコツと積み上げてきた信頼が、あっという間に崩れ去ってしまったのである。
……勘弁してくれ、本当に。
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