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1日1狩り。魔物を追っ払います。
7.訓練所の管理人。
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「せいっ!!……はぁ、そろそろ目眩がしてきた。」
早朝から剣を振り続け数時間が経過した頃になって、そろそろ限界が近づいてきた。さすがにスタミナが切れてきたことを自覚し、休憩スペースらしき場所に立ち入る。
ベンチがいくつか設置されているその場所には、体を休めている人も何人かおり、ハッとして後ろを振り返った。先程までいたカカシがいくつか設置されている場所にも鍛錬を続けている人たちがいた。
……いつの間にこんなに増えてたんだ。
「お、ようやくこっちに来たか。お前さんいつまでたってもカカシに向かって剣振ってるから、いつ休みに入るのか不安だったんだ。」
「あ……昨日の入口あたりで茶化してきたおじさんか。どうしてこんな所に?」
「どうしてって、ここは俺が管理してる施設だぞ。」
「……マジで?」
「大マジだ。ありがたく使ってるか~?」
「そりゃあ、もう全く感謝しかないよ……。ありがとうな。」
そんなまさかの縁に驚きつつも、そのおじさんもとい管理人にお礼を言う。
「それにしても、少年……あ、そういや名前聞いてなかったな。なんて名前だ?」
「ミノルだよ。」
名前を聞いたおじさんは、うんうんと頷くと再びこちらを好奇の目で見てくる。
「ミノル。昨日も前半の方は見てたっちゃ見てたが、他の仕事があってな。……鍛錬の様子を見たのは今日が初めてなんだが、お前本当にすげぇな。森で迷子になってたやつとは思えねぇ太刀筋だ。」
「一言余計だ。……おじさんには、俺の太刀筋が、立派なものに見えるのか?」
「?あぁ、そういったつもりなんだけどな。なんだ?気になることでもあるのか?」
首を傾げる管理人に、俺は思わずたじろいでしまった。今、俺が一番に悩んでいることに対してツッコまれて、動揺してしまったようだ。……ケード・フラットで話せそうな人物は現状、この人しかいないか。
「……実は俺の太刀筋のことで、リンと揉めたんだよ。現在進行形でケンカの真っ最中。」
「あらら。やっちまったな、ミノル。……ケンカの内容は、どんな具合で?」
「具合、か。……結果だけを言えば、俺が狩猟を大事に、重く扱うリンの前で、お気楽で無遠慮な発言をしてキレられた。」
「あぁ。お前が100パー悪いなぁ。」
「だろ?」
誰がどう聞いても、俺が悪者にしか聞こえない。おじさんから予想通りの反応が帰ってきて、俺はガックリと肩を落とす。その様子を見ておじさんはやれやれと両手をヒラヒラと仰ぐと、俺の肩を叩いた。
「……その様子だと、故意ってわけでもないんだよな?」
「あぁ、もちろん。彼女の狩りに対する意志の強さは、聞かなくとも見てわかった。それほどのものを侮辱する訳ないだろ?むしろ、尊敬するべきだ。」
「それがわかってんなら、後は問題ねぇよ。幸い、お前は一応口だけじゃない。改めて言うが、あの太刀筋は誰が見てもすごいと思わせられる。後は、どう謝るかだけじゃねぇかぁ?」
「……それが難しいんだ。どう謝るべきなんだろう。」
体と意識を合わせる以外に、俺は悩んでいることがもう一つある。俺は、彼女に何を謝ればいいのだろう。お気楽な発言をしたこと?狩りに対する姿勢?両方謝るのは、正直前提条件だと思うのだが……それ以上に、何か言わなければならないことがある気がするのだ。言語化できるかと言われれば、今はできないのだが。
「じゃあ、それが明日までの課題、ってとこか?」
「そう、だと思う。」
「なんだろうな、若いねぇ。悩みが。」
「茶化しか?」
「まさかぁ。」
そんな軽口を言い合いながら、しばらくの休憩を挟むことができ、体力の回復した俺は再びカカシと対面しようとしていた。
「……あぁ、ミノル。そういえばだが、ひとつ言い忘れてたことがあったわ。」
「?なんだ。」
「リンと真摯に向き合えよ?一昨日にも言ったが、あいつはアレでもお前のこと歓迎してたんだ。ちゃんと話せば、向き合ってくれるだろうよぉ。」
「……言われなくとも、そうするつもりだ。」
早朝から剣を振り続け数時間が経過した頃になって、そろそろ限界が近づいてきた。さすがにスタミナが切れてきたことを自覚し、休憩スペースらしき場所に立ち入る。
ベンチがいくつか設置されているその場所には、体を休めている人も何人かおり、ハッとして後ろを振り返った。先程までいたカカシがいくつか設置されている場所にも鍛錬を続けている人たちがいた。
……いつの間にこんなに増えてたんだ。
「お、ようやくこっちに来たか。お前さんいつまでたってもカカシに向かって剣振ってるから、いつ休みに入るのか不安だったんだ。」
「あ……昨日の入口あたりで茶化してきたおじさんか。どうしてこんな所に?」
「どうしてって、ここは俺が管理してる施設だぞ。」
「……マジで?」
「大マジだ。ありがたく使ってるか~?」
「そりゃあ、もう全く感謝しかないよ……。ありがとうな。」
そんなまさかの縁に驚きつつも、そのおじさんもとい管理人にお礼を言う。
「それにしても、少年……あ、そういや名前聞いてなかったな。なんて名前だ?」
「ミノルだよ。」
名前を聞いたおじさんは、うんうんと頷くと再びこちらを好奇の目で見てくる。
「ミノル。昨日も前半の方は見てたっちゃ見てたが、他の仕事があってな。……鍛錬の様子を見たのは今日が初めてなんだが、お前本当にすげぇな。森で迷子になってたやつとは思えねぇ太刀筋だ。」
「一言余計だ。……おじさんには、俺の太刀筋が、立派なものに見えるのか?」
「?あぁ、そういったつもりなんだけどな。なんだ?気になることでもあるのか?」
首を傾げる管理人に、俺は思わずたじろいでしまった。今、俺が一番に悩んでいることに対してツッコまれて、動揺してしまったようだ。……ケード・フラットで話せそうな人物は現状、この人しかいないか。
「……実は俺の太刀筋のことで、リンと揉めたんだよ。現在進行形でケンカの真っ最中。」
「あらら。やっちまったな、ミノル。……ケンカの内容は、どんな具合で?」
「具合、か。……結果だけを言えば、俺が狩猟を大事に、重く扱うリンの前で、お気楽で無遠慮な発言をしてキレられた。」
「あぁ。お前が100パー悪いなぁ。」
「だろ?」
誰がどう聞いても、俺が悪者にしか聞こえない。おじさんから予想通りの反応が帰ってきて、俺はガックリと肩を落とす。その様子を見ておじさんはやれやれと両手をヒラヒラと仰ぐと、俺の肩を叩いた。
「……その様子だと、故意ってわけでもないんだよな?」
「あぁ、もちろん。彼女の狩りに対する意志の強さは、聞かなくとも見てわかった。それほどのものを侮辱する訳ないだろ?むしろ、尊敬するべきだ。」
「それがわかってんなら、後は問題ねぇよ。幸い、お前は一応口だけじゃない。改めて言うが、あの太刀筋は誰が見てもすごいと思わせられる。後は、どう謝るかだけじゃねぇかぁ?」
「……それが難しいんだ。どう謝るべきなんだろう。」
体と意識を合わせる以外に、俺は悩んでいることがもう一つある。俺は、彼女に何を謝ればいいのだろう。お気楽な発言をしたこと?狩りに対する姿勢?両方謝るのは、正直前提条件だと思うのだが……それ以上に、何か言わなければならないことがある気がするのだ。言語化できるかと言われれば、今はできないのだが。
「じゃあ、それが明日までの課題、ってとこか?」
「そう、だと思う。」
「なんだろうな、若いねぇ。悩みが。」
「茶化しか?」
「まさかぁ。」
そんな軽口を言い合いながら、しばらくの休憩を挟むことができ、体力の回復した俺は再びカカシと対面しようとしていた。
「……あぁ、ミノル。そういえばだが、ひとつ言い忘れてたことがあったわ。」
「?なんだ。」
「リンと真摯に向き合えよ?一昨日にも言ったが、あいつはアレでもお前のこと歓迎してたんだ。ちゃんと話せば、向き合ってくれるだろうよぉ。」
「……言われなくとも、そうするつもりだ。」
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