短編 隙あらば「婚約破棄するか?」と繰り返し提案してくる王太子に、「では、こちらに署名を」と返してみた

「君は王太子妃として不適格だ」
「婚約破棄しても、俺は構わないぞ?」

三年間、繰り返されてきたその言葉。
私は耐え、黙り、従うことでしか生き延びられなかった。
感情を押し殺し、ただ“王太子妃の座”にしがみつくことで、存在を許されていたから。

──でも。

ある日、心の奥で何かが音を立てて崩れた。
あの人にとって、私は従者でしかなかった。
ならば、私は“王太子妃”という肩書きを、自らの手で手放しましょう。

繰り返される「婚約破棄してやる」という脅しに、私は静かに微笑む。
「では、こちらにご署名を。法務官立会いのもと、正式にご用意いたしました」

王太子殿下が言葉を失ったその瞬間、ようやく私は自由になれた。

──これは、「従順な婚約者」として飼い慣らされていた私が、
“婚約破棄”という呪いの言葉を、解放の鍵に変えるまでの物語。
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