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第二楽章 恋が芽生える音(side花岡蒼良)
15.お誘い?
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この日のレッスンも無事に終わり、蒼良は視聴覚室のカギを持った手を軽く振った。
「じゃあ、また明後日ね。」
レッスンが終わったら、楽器を片付けてその場で解散するのがいつもの流れだ。
因みにサックスは視聴覚準備室(視聴覚室の中にある小部屋)に置かせてもらっている。
どちらにもカギがかけられる為、防犯面でも安心だ。
蒼良は視聴覚室のカギを職員室に返却してから一人で帰路につく…筈だったのだが。
(何で…?)
職員室を出ると、そこには何故か鳥海の姿があった。
「あ…鳥海君も職員室に用事?」
壁に凭れて立つ彼はモデルのようだ。
そんな彼が自分を待っていたのかも、なんて考えを一瞬持ってしまった事が恥ずかしくて誤魔化すように尋ねる。
これまで一度もそんな事は無かったし、レッスンをするようになってからも教室で会話は全く無かった。
(まぁ、俺と鳥海君じゃ住む世界が違うからなぁ)
一軍に所属する彼と地味な自分が一緒にいたら、誰が見ても不自然だろうと思う。
今が放課後で人が少ないとは言え、他学年を含めて全校生徒に認知されている鳥海はとにかく目立つのだ。
目撃されたら変な噂…例えば鳥海が蒼良をパシりにてるとか…が立つかもしれない。
それに恐らくだが、このレッスンの事を鳥海は誰にも話していないと蒼良は思っている。
だから、蒼良の方も拓真や山田にだって明かしていない。
人知れずヒッソリと始まったレッスンは、鳥海のお
姉さんの結婚式まで。
それが終われば、何事もなかったように元のクラスメイトに戻るのだろう。
卒業するまで会話する事すらないかもしれない。
そういうものだと蒼良は思っているし、鳥海の方もきっとそのつもりだろう。
「いや、花岡の事待ってた。」
だから、サラリとそう言われて驚きに目を見開いた。
「いつもカギ返してもらって悪ぃなと思って。」
(あぁ、そういう事か)
態々お礼のために待っててくれたなんて、彼は律儀な性格なのかもしれない。
(そうだよね、お姉さんに感謝を伝えるために練習頑張ってるような人だし。)
クールでカッコイイと評判の彼だが、そういった一面もあるのだと知っている。
「全然大丈夫だよ?」
「本当は俺がそういうのやるべきなんだけどさ…俺が絡むと先生の信用度下がるから。」
「そんな事…」
ないよ、と言いかけて口を噤む。
鳥海自身はそうでもないが、彼が所属する一軍グループはとにかく騒がしい。
その筆頭たる田中とつるむ鳥海を教師陣が信用しているかと言われると…。
「そんな事…あるかも?…あっ!違くて!!」
「オイ、本音出てんぞ」
つい口にしてしまって、慌てて撤回しようとするがもう遅い。
怒らせたかとチラリと見上げると、鳥海はなんと唇の端を持ち上げていた。
「俺はイイコなんだけど、田中の馬鹿がなぁ」
「いい子って…アハハ!」
そのフレーズがあまりにも似合わなくて、思わず蒼良も笑みを零す。
すると、鳥海が僅かに目を見開いた。
「…あのさ、この後時間平気?俺のバ先カフェなんだけど、いつもの礼に奢らせてよ。」
「え…でも…」
「都合悪い?」
「ううん、時間は平気だけど…」
「じゃあ、行こうぜ」
そう言って歩き出してしまった鳥海の背中を数秒眺めて、我に返って慌てて後を追う。
(俺と帰ってるの見られちゃうけどいいのかな…)
だけど、少しだけ嬉しいような気もする。
(鳥海君が笑ってるの、初めて見た。)
「じゃあ、また明後日ね。」
レッスンが終わったら、楽器を片付けてその場で解散するのがいつもの流れだ。
因みにサックスは視聴覚準備室(視聴覚室の中にある小部屋)に置かせてもらっている。
どちらにもカギがかけられる為、防犯面でも安心だ。
蒼良は視聴覚室のカギを職員室に返却してから一人で帰路につく…筈だったのだが。
(何で…?)
職員室を出ると、そこには何故か鳥海の姿があった。
「あ…鳥海君も職員室に用事?」
壁に凭れて立つ彼はモデルのようだ。
そんな彼が自分を待っていたのかも、なんて考えを一瞬持ってしまった事が恥ずかしくて誤魔化すように尋ねる。
これまで一度もそんな事は無かったし、レッスンをするようになってからも教室で会話は全く無かった。
(まぁ、俺と鳥海君じゃ住む世界が違うからなぁ)
一軍に所属する彼と地味な自分が一緒にいたら、誰が見ても不自然だろうと思う。
今が放課後で人が少ないとは言え、他学年を含めて全校生徒に認知されている鳥海はとにかく目立つのだ。
目撃されたら変な噂…例えば鳥海が蒼良をパシりにてるとか…が立つかもしれない。
それに恐らくだが、このレッスンの事を鳥海は誰にも話していないと蒼良は思っている。
だから、蒼良の方も拓真や山田にだって明かしていない。
人知れずヒッソリと始まったレッスンは、鳥海のお
姉さんの結婚式まで。
それが終われば、何事もなかったように元のクラスメイトに戻るのだろう。
卒業するまで会話する事すらないかもしれない。
そういうものだと蒼良は思っているし、鳥海の方もきっとそのつもりだろう。
「いや、花岡の事待ってた。」
だから、サラリとそう言われて驚きに目を見開いた。
「いつもカギ返してもらって悪ぃなと思って。」
(あぁ、そういう事か)
態々お礼のために待っててくれたなんて、彼は律儀な性格なのかもしれない。
(そうだよね、お姉さんに感謝を伝えるために練習頑張ってるような人だし。)
クールでカッコイイと評判の彼だが、そういった一面もあるのだと知っている。
「全然大丈夫だよ?」
「本当は俺がそういうのやるべきなんだけどさ…俺が絡むと先生の信用度下がるから。」
「そんな事…」
ないよ、と言いかけて口を噤む。
鳥海自身はそうでもないが、彼が所属する一軍グループはとにかく騒がしい。
その筆頭たる田中とつるむ鳥海を教師陣が信用しているかと言われると…。
「そんな事…あるかも?…あっ!違くて!!」
「オイ、本音出てんぞ」
つい口にしてしまって、慌てて撤回しようとするがもう遅い。
怒らせたかとチラリと見上げると、鳥海はなんと唇の端を持ち上げていた。
「俺はイイコなんだけど、田中の馬鹿がなぁ」
「いい子って…アハハ!」
そのフレーズがあまりにも似合わなくて、思わず蒼良も笑みを零す。
すると、鳥海が僅かに目を見開いた。
「…あのさ、この後時間平気?俺のバ先カフェなんだけど、いつもの礼に奢らせてよ。」
「え…でも…」
「都合悪い?」
「ううん、時間は平気だけど…」
「じゃあ、行こうぜ」
そう言って歩き出してしまった鳥海の背中を数秒眺めて、我に返って慌てて後を追う。
(俺と帰ってるの見られちゃうけどいいのかな…)
だけど、少しだけ嬉しいような気もする。
(鳥海君が笑ってるの、初めて見た。)
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