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第二楽章 恋が芽生える音(side花岡蒼良)
19.庇ってくれた?
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その日の放課後の事だった。
レッスンが無くなった蒼良は図書室に足を運ぼうとしてふと気づく。
(図書室行くの、久しぶりかもしれない)
テスト期間だったのもあるが、その前から通う頻度が減っていた。
(あ…そっか。レッスンが始まったから…)
週3日は鳥海と過ごし、残りの2日も真っすぐ家に帰っていた。
次は何を教えるべきか考えたり、指導のコツを動画サイトで視聴する為に。
いつの間にかそれが日常になりつつあった事に驚く。
断り切れずに始めたレッスンだったが、蒼良は徐々にやりがいを感じるようになっていた。
大好きだった合奏もサックスを吹く事もーー中3のある出来事があって以来、苦しくなるばかりで。
だから、音楽に触れていて楽しいと感じたのは久しぶりだった。
それもこれも、鳥海がいい生徒だったからだ。
蒼良の教えを素直に聞き、吸収して上手くなっていく彼がいたから。
(終わりにしたくないな…)
そうは思っても、もし鳥海本人にもういいと言われたら蒼良に成す術はない。
夏休み前のレッスンは、明後日の1回で最後。
そこから35日の長い休みを経て…果たして今の
関係は続くのだろうか。
(むしろ、明後日のレッスンすらあるか微妙だよなぁ)
図書室の前で項垂れる蒼良の耳に、誰かの声が聞こえてきた。
「あ、花岡!やっぱここにいたんだな」
声の主は吉川で、拓真に蒼良の居場所を尋ねて追いかけて来たらしい。
「吉川、どうしたの?部活は?」
「今日は顧問不在で休み。いや、朝の話しが途中だったからと思って。」
鳥海からのメッセージに気を取られて有耶無耶になっていたが、彼が何か言いかけていた事を思い出す。
「花岡と鳥海が仲いいのかって聞いただろ?実はそれには訳があってさ…」
恐らく、目撃情報が出るのだと蒼良は悟った。
さて、なんと言い訳するべきか…
「昨日俺が…その、花岡に失礼な事言っただろ。それで気まずくなって廊下に逃げたらさ、鳥海に声かけられて…」
「……うん?」
何か思っていた方向と違うらしく、蒼良は目を瞬く。
「それでさ、怒られたんだよね。」
「…え?」
「いや、怒るって言うか凄むっていうか…淡々としてて逆に怖かったんだけど『俺も部活やってなくてお前より成績いいけど何かあんの』って。」
「…へ?」
「俺が何も言えなかったらさ『優しくて許してくれそうな相手選んでんならダサいから止めれば』って。いや、本当その通りなんだけどさ…」
それは…自分の事を庇ってくれたんだろうか。
「それで俺、周りからそう見えるような事してたんだって反省してさ。」
吉川が謝ってきた経緯を知って愕然とする。
「鳥海って一軍以外と話してんの見た事無い…って言うか、他人に興味無さそうじゃん。それなのに態々言ってきたって事は、実は花岡と仲いいのかと思って。でも違ったんだな。…もしかして意外と正義感ある奴なのかな…?」
その後も吉川は喋り続けていたけれど、殆ど蒼良の耳には入って来なかった。
(鳥海君…)
初めて見た彼の笑顔が何故か脳裏を過った。
レッスンが無くなった蒼良は図書室に足を運ぼうとしてふと気づく。
(図書室行くの、久しぶりかもしれない)
テスト期間だったのもあるが、その前から通う頻度が減っていた。
(あ…そっか。レッスンが始まったから…)
週3日は鳥海と過ごし、残りの2日も真っすぐ家に帰っていた。
次は何を教えるべきか考えたり、指導のコツを動画サイトで視聴する為に。
いつの間にかそれが日常になりつつあった事に驚く。
断り切れずに始めたレッスンだったが、蒼良は徐々にやりがいを感じるようになっていた。
大好きだった合奏もサックスを吹く事もーー中3のある出来事があって以来、苦しくなるばかりで。
だから、音楽に触れていて楽しいと感じたのは久しぶりだった。
それもこれも、鳥海がいい生徒だったからだ。
蒼良の教えを素直に聞き、吸収して上手くなっていく彼がいたから。
(終わりにしたくないな…)
そうは思っても、もし鳥海本人にもういいと言われたら蒼良に成す術はない。
夏休み前のレッスンは、明後日の1回で最後。
そこから35日の長い休みを経て…果たして今の
関係は続くのだろうか。
(むしろ、明後日のレッスンすらあるか微妙だよなぁ)
図書室の前で項垂れる蒼良の耳に、誰かの声が聞こえてきた。
「あ、花岡!やっぱここにいたんだな」
声の主は吉川で、拓真に蒼良の居場所を尋ねて追いかけて来たらしい。
「吉川、どうしたの?部活は?」
「今日は顧問不在で休み。いや、朝の話しが途中だったからと思って。」
鳥海からのメッセージに気を取られて有耶無耶になっていたが、彼が何か言いかけていた事を思い出す。
「花岡と鳥海が仲いいのかって聞いただろ?実はそれには訳があってさ…」
恐らく、目撃情報が出るのだと蒼良は悟った。
さて、なんと言い訳するべきか…
「昨日俺が…その、花岡に失礼な事言っただろ。それで気まずくなって廊下に逃げたらさ、鳥海に声かけられて…」
「……うん?」
何か思っていた方向と違うらしく、蒼良は目を瞬く。
「それでさ、怒られたんだよね。」
「…え?」
「いや、怒るって言うか凄むっていうか…淡々としてて逆に怖かったんだけど『俺も部活やってなくてお前より成績いいけど何かあんの』って。」
「…へ?」
「俺が何も言えなかったらさ『優しくて許してくれそうな相手選んでんならダサいから止めれば』って。いや、本当その通りなんだけどさ…」
それは…自分の事を庇ってくれたんだろうか。
「それで俺、周りからそう見えるような事してたんだって反省してさ。」
吉川が謝ってきた経緯を知って愕然とする。
「鳥海って一軍以外と話してんの見た事無い…って言うか、他人に興味無さそうじゃん。それなのに態々言ってきたって事は、実は花岡と仲いいのかと思って。でも違ったんだな。…もしかして意外と正義感ある奴なのかな…?」
その後も吉川は喋り続けていたけれど、殆ど蒼良の耳には入って来なかった。
(鳥海君…)
初めて見た彼の笑顔が何故か脳裏を過った。
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