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十五章:懐かしの村とプロポーズ
186.ベルの過去と、彼の理解。
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すみません、本日はすごく短いのでなるべく早いうちに続きをあげます……。
+++++++++++++
私もうっかりしていたなぁ。
自分の常識なんて話したら、そりゃ記憶が戻ったって彼が気づくに決まってるのに。
でもまあ、これもいい機会なのかな?
「……これから聞いて貰う話は、荒唐無稽な話です。それでも聞いて貰えますか?」
私は決心して、アレックスさんの目をじっと見つめ、そう聞いた。
「ああ」
彼は真面目な顔をして頷いてくれた。
ふかふかのソファに、ハーブティーを淹れてから二人並んで座って。足元にはぽちが寄ってきて。
極めていつもの寛ぎの体制で、私はポツリポツリと隣の人に話し出したんだ。
声が震えないよう、ドキドキと早鐘を打つ旨の鼓動が聞こえないよう、気をつけながら。
「私、女神様の声を聞いたことがあるかもしれない、って言ったの覚えてる?」
「ああ」
「それね、本当なの。夢じゃなくて、私がかつて生きていた世界で死んだ時に、たしかに女神様の声を聞いたんだ」
アレックスさんは驚いたように息を飲んだ。そして、難しい顔をしたかと思うとメタリックグリーンの髪を掻きながら一つ大きなため息を吐いて。
「……質問は後にする。続けてくれ」
そう言った。
私はぽちを撫でながら頷く。
「うん。その時、女神様は幾つかの餞別をくれたの。一つはハーブ畑。私、前の世界でも尊敬する師匠に教えて貰ったりして、ハーブの勉強をしていてね。それでくれたんだと思う」
ぽちは私の緊張に気づいているのか、ゆっくりと尻尾を振りながら足元で静かにしている。
「二つ目は、多分この大きな魔力かな。ハーブで誰かを癒したいって気持ちを添えて差し出せば、みたいな事言ってたし、多分。後一つは、この森」
「この、森って……女神の森を、か?」
「うん。私がアレックスさんと初めて会った時、森に居た理由は、多分そのせいだと思う」
私は頷いて、ふかふかソファに背を預けた。
このソファ、いつだったか、このコテージにあったらきっと寛げるだろうなぁと思って知り合いの大工の棟梁に作って貰ったんだよね。実際、これがあると製薬したりして疲れた時、のんびりと背を預けられるからとても良いんだ。
……ではなくて。
ああ、言ってしまった。
どうしよう。流石にアレックスさんも嘘つきだと思うかな? 本当なんだけど。
アレックスさんはしばらく黙っていた。唸るような声がしてたから、きっと私の言葉をどう処理していいのか悩んでいたんだと思う。
「うーん……まあ、確かにこの世界の者でないならその物知らずぶりも納得だし、その膨大な魔力も、女神から直接貰ったって言うなら……あるいは……」
ブツブツと呟いてから、彼は突然両頬を自分で叩いて。
「よし、納得した。お前の話を、オレは信じる」
「え……信じて、くれるんですか?」
私は驚いて、彼の緑の目を覗き込むみたいにしてそう言った。彼は明るく笑って頷く。
「もう一年も一緒に居るんだぞ。お前の性格ぐらい分かってる。こういう大きな事で嘘を吐いたりしないだろ」
それを聞いたら、もう駄目で。
私はボロボロと、盛大に涙を流してしまったんだ……。
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私もうっかりしていたなぁ。
自分の常識なんて話したら、そりゃ記憶が戻ったって彼が気づくに決まってるのに。
でもまあ、これもいい機会なのかな?
「……これから聞いて貰う話は、荒唐無稽な話です。それでも聞いて貰えますか?」
私は決心して、アレックスさんの目をじっと見つめ、そう聞いた。
「ああ」
彼は真面目な顔をして頷いてくれた。
ふかふかのソファに、ハーブティーを淹れてから二人並んで座って。足元にはぽちが寄ってきて。
極めていつもの寛ぎの体制で、私はポツリポツリと隣の人に話し出したんだ。
声が震えないよう、ドキドキと早鐘を打つ旨の鼓動が聞こえないよう、気をつけながら。
「私、女神様の声を聞いたことがあるかもしれない、って言ったの覚えてる?」
「ああ」
「それね、本当なの。夢じゃなくて、私がかつて生きていた世界で死んだ時に、たしかに女神様の声を聞いたんだ」
アレックスさんは驚いたように息を飲んだ。そして、難しい顔をしたかと思うとメタリックグリーンの髪を掻きながら一つ大きなため息を吐いて。
「……質問は後にする。続けてくれ」
そう言った。
私はぽちを撫でながら頷く。
「うん。その時、女神様は幾つかの餞別をくれたの。一つはハーブ畑。私、前の世界でも尊敬する師匠に教えて貰ったりして、ハーブの勉強をしていてね。それでくれたんだと思う」
ぽちは私の緊張に気づいているのか、ゆっくりと尻尾を振りながら足元で静かにしている。
「二つ目は、多分この大きな魔力かな。ハーブで誰かを癒したいって気持ちを添えて差し出せば、みたいな事言ってたし、多分。後一つは、この森」
「この、森って……女神の森を、か?」
「うん。私がアレックスさんと初めて会った時、森に居た理由は、多分そのせいだと思う」
私は頷いて、ふかふかソファに背を預けた。
このソファ、いつだったか、このコテージにあったらきっと寛げるだろうなぁと思って知り合いの大工の棟梁に作って貰ったんだよね。実際、これがあると製薬したりして疲れた時、のんびりと背を預けられるからとても良いんだ。
……ではなくて。
ああ、言ってしまった。
どうしよう。流石にアレックスさんも嘘つきだと思うかな? 本当なんだけど。
アレックスさんはしばらく黙っていた。唸るような声がしてたから、きっと私の言葉をどう処理していいのか悩んでいたんだと思う。
「うーん……まあ、確かにこの世界の者でないならその物知らずぶりも納得だし、その膨大な魔力も、女神から直接貰ったって言うなら……あるいは……」
ブツブツと呟いてから、彼は突然両頬を自分で叩いて。
「よし、納得した。お前の話を、オレは信じる」
「え……信じて、くれるんですか?」
私は驚いて、彼の緑の目を覗き込むみたいにしてそう言った。彼は明るく笑って頷く。
「もう一年も一緒に居るんだぞ。お前の性格ぐらい分かってる。こういう大きな事で嘘を吐いたりしないだろ」
それを聞いたら、もう駄目で。
私はボロボロと、盛大に涙を流してしまったんだ……。
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