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四章 冷たい部屋からの救出
八話 夢の計画、私の現実(2)
しおりを挟む「さすがは大地主の鵜飼さんらしい大胆なお話ですね」
余りにダイナミックな話に、葉山が苦笑している。
「なのでまあ、場所の有効利用もあるんだけど。普段なら、それこそスペース半分を何かで貸しちゃってもいいかなぁって話はしてたの」
「うんうん」
奈々が相槌を打ち、皆が頷いたのを見て、サキは続ける。
「で、この店もね、そろそろ地元でも認知度があがってきたと思うのよ」
「ええ、私も常連ですし。ここは何を頼んでも美味しいので、個人的にもよく利用していますよ」
白銀の言葉にサキは「ありがと」 と嬉しそうに答え。
再びピンクの手帳を掲げ、注目をそちらに移す。
「そこで、よ。ここでちょっと意識改革というか、まあ店を一歩前にね、前進させようかなって話なの。で、これが計画書……の前の前のまあ、走り書きみたいな?」
そう言って、サキはピンクの手帳を広げて見せた。
そこには、高齢者施設から外出先としての受け入れに関する調査や、教養講座の開設案、地域物産の売場展開、ライブ演奏やサークル発表会のステージレンタルなどなど、幅広く様々な利用方法が書かれている。
「これは、かなり詳細に調べられているようですね」
机上の空論でなく、相応の資料に当たって書いているようで、さまざまなURLや画像参照先などが走り書きされている。それを見て白銀が唸った。
「ええ、何かするとなったら、まずは市場調査ぐらい普通するでしょ。ニーズもなくただ好きなものをやったって受け入れられないもの。白銀君だって新規顧客の獲得となればそうするでしょう?」
「ええ、全く仰る通りです」
当然でしょ、と言わんばかりのサキに白銀は素直に頷く。
ただの夢でなく、起業でもするのかという綿密なそれに、白銀だけでなく皆も唸るしかない。
ただ、そこに水を注す者も約一名いる訳だが。
「うーん、これは無駄に手広い計画だねえ。ここまで来ると、完全に個人の計画でなくなっちゃってない? お役所周りやら高齢者施設の都合も聞かなきゃだし、周囲の公共施設との食い合いもありそう。余程の名士か企業をバックにして、お役所に話を持ってかなきゃ形になんないんじゃないの」
向かいの席からひょいと手帳を摘んで、パラパラやりながら松永が指摘する。
「えっ、ちょっとオジサン!」
ふいに近づいてきた手に怯え、伊都は背あてに思い切り背中を押しつけて、ガタリと椅子を鳴らした。
松永は、伊都を見てニヤリと笑う。
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