編み物魔女は、狼に恋する。〜編み物好きＯＬがスパダリ狼さんに夢と現実で食べられる話。

六章 貴方と現実で抱き合う日

四話 おいしい食事と、祝いの酒と。（2）

「それからしばらくは、ＳＮＳやサイトの運営の事を、いろいろお聞きして。白銀さんには本当にお世話になって……」

　振り返れば、白銀には迷惑の掛け通しである。
　そう、伊都が恐縮すると。

「私としては、それも貴女に会う口実になる為、むしろ歓迎していたのですけれどね」

　毎週末に会って話すのを楽しみにしていたのだと白銀に言われれば、伊都は嬉しくてはにかんだ笑顔を浮かべてしまう。

「私も、です。貴方に会える時間がいつも楽しみで……」
「それは違うのでは？」
「え？」
「最初は、私を苦手としてたでしょう？」

　秀麗な微笑みと共に言われてしまえば、伊都は口を閉ざすしかない。どうも白銀にはばれていたようである。

「ええと……あの、でも。最初から本当に白銀さんの事は、すてきな人だな、と思っていたんですよ？」

　足手まといでしかな伊都を助手として招き、嫌な顔もせず何でも教えてくれて。
「いい先生で、いい人で……格好よくて。白銀さんに呆れられたくないって一心で、あの頃は必死に勉強していたと思うんです」
　相変わらず、機械オンチで人の倍以上の時間を使って自分の作品ブログを更新する伊都だ。
　それでも、苦手な事に向き合い続けたのは……白銀の助手として恥ずかしくない自分で居たいと思っていたからだ。
「お陰で、今のブログを始めた時、昔ほど苦手意識を持たずにいられたんですよ？　白銀さんは……私にとって、すばらしい先生で、目指したい人で」

　真剣な顔でそう言えば、白銀は何故か食事の手を止めて、口元を片手で覆っている。
「どうしたんですか？」
「……伊都さんは時々、予想外に私を驚かせますよね」

　彼は気を取り直したように、うっとりするような美しい微笑みを浮かべ。
「てっきり怖がられていたのかと思えば、貴女には随分前から意外と好かれていたんだなと思いまして。正直嬉しいですよ」
　艶やかな声で、そっと囁いた。

　そんな顔をされたら、恋愛初心者な伊都など一発で真っ赤に染めあがる。
　人として、先生として尊敬していた、という意味で話した筈なのだが……。
　自分の発言を振り返ると、割と恥ずかしい事を言っていた事に気づいて思わず頬を覆う。
（わ、私また自然に告白めいた事言ってたみたい？）