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SP(息抜きサブストーリー集)
SP1 仔狼だって、押し倒したい。(3)
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(お、おいらが魔女に負けた……?)
ギャンが呆然としていると、籠を片づけてきた魔女がラグの方に戻ってくる。
彼女はギャンの隣に座り、それを差し出した。
「はい、干し肉」
白く、柔らかな手のひらに乗ったそれをくんくんと嗅ぐと、とてもいい匂いがする。
(旨そうな匂いと、甘い匂いがする)
たまらず舌を出し、干し肉に食いついた。
狼たちの為に加減した干し肉であるが、わずかに塩気のするそれは、乾燥させたことで旨みを増している。その上、いつもより噛みごたえまであるのだから、狼としてはたまらないごちそうなのだ。
「ふふ、これは特別よ? 冬の備蓄も残り少ないから、皆にあげるには足りないのよねぇ」
夢中でがぶがぶと噛みしめていると、にこにこと伊都が言う。
(特別……)
その言葉の持つ、甘酸っぱいような感覚に、ギャンはたまらず魔女の顔を見上げて、キャンっと高い鳴き声を上げた。
「特別? おいらにだけか?」
その拍子に、かみかみしていた干し肉を思わず飲み込んでしまう。
「あっ……」
大事に噛んでいようとしたのにと、口中が寂しくなったギャンは、キュンキュンと悲しい声を出した。
「あらあら、まだ口寂しい感じ? じゃあ、玩具でも出してきましょうか」
「う、もっとくれねぇのか?」
しょんぼりと言っても、「だーめ、あれは特別よ」 と、いつもは仔らに甘い伊都が少しばかり厳しい。
「むう……」
ふてくされていると、今度は玩具のロープと共に、着古した服を沢山持ってきた。
早速ロープにかみつきながら、ギャンは魔女に聞く。
「それ、何するんだ?」
「これはねぇこうして切って、糸玉にしてから編むのよ」
「え、それ、布じゃねぇか」
「だから、こうして……」
と、魔女は古布に大胆にハサミを入れて、細く切った方を白く細い指で摘んで見せ、ギャンの前でひらひらと振る。
「ほら、細くなったでしょう? で、これをぎゅって引っ張ると……」
「おっ、何か丸まったぞ?」
「それで、こうして……輪っかを作って、指でざくざく編んでいくのよ」
「おお、すげえや」
きらきらした目で、目の前で切られ、糸になり、編まれていくものを眺めるギャンに、魔女は優しい笑顔を向ける。
隣に座った魔女は、穏やかな声で話を聞かせてくれた。
何でも魔女らは今、部屋の改装ブームだとか。
住まいの装飾に凝っているらしい友人たちと相談していて、春夏用のインテリアアイテムが欲しいとなり、伊都は古布を使ったカゴを提供するという事になったらしい。
「それで、魔女や魔女のパートナー達の分も含めて古布をたくさん貰ってきたの。古い布でも、こうして別のものとして役に立つなら気分が変わるし、素敵でしょう?」
何せ、森の動物で、わざわざ人型でいる者らは変人に当たるので、素材提供者は魔女らと決まっていた。
彼女は楽しげに、器用にハサミを使って古布を一本の紐のように切っていく。
ギャンが呆然としていると、籠を片づけてきた魔女がラグの方に戻ってくる。
彼女はギャンの隣に座り、それを差し出した。
「はい、干し肉」
白く、柔らかな手のひらに乗ったそれをくんくんと嗅ぐと、とてもいい匂いがする。
(旨そうな匂いと、甘い匂いがする)
たまらず舌を出し、干し肉に食いついた。
狼たちの為に加減した干し肉であるが、わずかに塩気のするそれは、乾燥させたことで旨みを増している。その上、いつもより噛みごたえまであるのだから、狼としてはたまらないごちそうなのだ。
「ふふ、これは特別よ? 冬の備蓄も残り少ないから、皆にあげるには足りないのよねぇ」
夢中でがぶがぶと噛みしめていると、にこにこと伊都が言う。
(特別……)
その言葉の持つ、甘酸っぱいような感覚に、ギャンはたまらず魔女の顔を見上げて、キャンっと高い鳴き声を上げた。
「特別? おいらにだけか?」
その拍子に、かみかみしていた干し肉を思わず飲み込んでしまう。
「あっ……」
大事に噛んでいようとしたのにと、口中が寂しくなったギャンは、キュンキュンと悲しい声を出した。
「あらあら、まだ口寂しい感じ? じゃあ、玩具でも出してきましょうか」
「う、もっとくれねぇのか?」
しょんぼりと言っても、「だーめ、あれは特別よ」 と、いつもは仔らに甘い伊都が少しばかり厳しい。
「むう……」
ふてくされていると、今度は玩具のロープと共に、着古した服を沢山持ってきた。
早速ロープにかみつきながら、ギャンは魔女に聞く。
「それ、何するんだ?」
「これはねぇこうして切って、糸玉にしてから編むのよ」
「え、それ、布じゃねぇか」
「だから、こうして……」
と、魔女は古布に大胆にハサミを入れて、細く切った方を白く細い指で摘んで見せ、ギャンの前でひらひらと振る。
「ほら、細くなったでしょう? で、これをぎゅって引っ張ると……」
「おっ、何か丸まったぞ?」
「それで、こうして……輪っかを作って、指でざくざく編んでいくのよ」
「おお、すげえや」
きらきらした目で、目の前で切られ、糸になり、編まれていくものを眺めるギャンに、魔女は優しい笑顔を向ける。
隣に座った魔女は、穏やかな声で話を聞かせてくれた。
何でも魔女らは今、部屋の改装ブームだとか。
住まいの装飾に凝っているらしい友人たちと相談していて、春夏用のインテリアアイテムが欲しいとなり、伊都は古布を使ったカゴを提供するという事になったらしい。
「それで、魔女や魔女のパートナー達の分も含めて古布をたくさん貰ってきたの。古い布でも、こうして別のものとして役に立つなら気分が変わるし、素敵でしょう?」
何せ、森の動物で、わざわざ人型でいる者らは変人に当たるので、素材提供者は魔女らと決まっていた。
彼女は楽しげに、器用にハサミを使って古布を一本の紐のように切っていく。
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