163 / 220
SP(息抜きサブストーリー集)
SP1 仔狼だって、押し倒したい。(4)
しおりを挟む
そんな数の少ない彼女らであっても、いや、だからこそか。魔女らは独自のコミュニティができあがっている。その間で、互いに協力し合い物を出し合って暮らしているうちに、それなりの量の古材というものは出てくる。
「最低限と思ってても、女性というものはどうしたって新しい服とか仕立てたくなるからね。気分転換もあるけれど、身ぎれいにしておくっていうのは愛する人にいつも綺麗だと思って欲しいいじらしさも含んでいるのよ」
魔女って意外とかわいいでしょう? と、楽しげに友人らの話をする伊都。
それらを有効活用するのだと言う、彼女の顔には苦労を苦労と思わぬ、明るい笑みがある。
「おいらは、それが出来る魔女の方がすげえと思うけどなっ」
「あらあら、おだてても、もう干し肉は分けませんからね」
「むう……」
(おだてた訳じゃねぇのに)
魔女は素直にすごいと思うのだ。
その柔らかな白い手で器用に色々なものを作り、この灰色一色で冷たかった空間を暖かいもので埋めてくれた。
それだけでなく……。
柔らかな太股の上に顎を乗せる。
「こーら。ハサミを使ってるんだから危ないわよ……って、こら」
じりじりと距離を取ろうとする魔女の脇に鼻面を突っ込んで、その柔らかさと匂いを堪能していたら、鼻面を捕らえられた。
「もう。何で君達は狭い所が好きなのかしらねぇ。手元が狂ったら危ないでしょ」
そこを掴まれると、どうしようもなく。
ギャンはキュンキュンと鼻を鳴らしてごめんなさいをするしかない。
「そうね、やっぱりハサミは危ないわ。となると……」
今度はどさっと、くたびれ感のあるニットを持ってきた。
「それは何するんだ?」
今度こそ大人しく隣で眺めているギャンが聞くと、魔女は答える。
「これもね、いちど解いて糸玉にして、また別のものを編むの。再利用ね」
くったりしたり、フェルト化してきたものも味があっていいのだけれどねと、笑いながらニットを解く魔女は、本当に働き者だ。
(いいなぁ)
魔女の体温が届くくらいの近くで、ギャンは魔女を物欲しげな顔で見る。
(何でこんな、甘い匂いで暖かいのが、おいらのじゃないのかな)
ふと、思う。
もっと大きくて。
もっと強くて。
……人型の。
(ジルバーみたいな、立派な雄なら、魔女をおいらのモノに出来るのかなぁ……)
どこからか、突き上げるような欲が迸る。
ギャンは、ニットを解く魔女へ向かい、全力で肩口を押した。その柔らかな身体は、分厚いラグの上に倒れる。
「……ギャン君? ちょっと、どうしたの」
魔女は目を見開いて、きょとんとこちらを見ている。
押し倒されたのだという意識はないようで、その顔には純粋な驚きがある。
だが、ギャンは本気だった。
甘い匂い、甘い身体。それをどうしたらいいのかは、幼い頃に離れてしまった彼にはよくわからない。
いや、深夜に寝床で睦みあう男女ならば、見た事がある。
ずうっと身近で、何度も。
男の大きな体に隠れるように抱きすくめられた彼女なら、見た事があるのだ。
だからギャンは本気だった。
(おいらの、モノに)
ぎらぎらとした目で彼は、魔女を見つめた。
「最低限と思ってても、女性というものはどうしたって新しい服とか仕立てたくなるからね。気分転換もあるけれど、身ぎれいにしておくっていうのは愛する人にいつも綺麗だと思って欲しいいじらしさも含んでいるのよ」
魔女って意外とかわいいでしょう? と、楽しげに友人らの話をする伊都。
それらを有効活用するのだと言う、彼女の顔には苦労を苦労と思わぬ、明るい笑みがある。
「おいらは、それが出来る魔女の方がすげえと思うけどなっ」
「あらあら、おだてても、もう干し肉は分けませんからね」
「むう……」
(おだてた訳じゃねぇのに)
魔女は素直にすごいと思うのだ。
その柔らかな白い手で器用に色々なものを作り、この灰色一色で冷たかった空間を暖かいもので埋めてくれた。
それだけでなく……。
柔らかな太股の上に顎を乗せる。
「こーら。ハサミを使ってるんだから危ないわよ……って、こら」
じりじりと距離を取ろうとする魔女の脇に鼻面を突っ込んで、その柔らかさと匂いを堪能していたら、鼻面を捕らえられた。
「もう。何で君達は狭い所が好きなのかしらねぇ。手元が狂ったら危ないでしょ」
そこを掴まれると、どうしようもなく。
ギャンはキュンキュンと鼻を鳴らしてごめんなさいをするしかない。
「そうね、やっぱりハサミは危ないわ。となると……」
今度はどさっと、くたびれ感のあるニットを持ってきた。
「それは何するんだ?」
今度こそ大人しく隣で眺めているギャンが聞くと、魔女は答える。
「これもね、いちど解いて糸玉にして、また別のものを編むの。再利用ね」
くったりしたり、フェルト化してきたものも味があっていいのだけれどねと、笑いながらニットを解く魔女は、本当に働き者だ。
(いいなぁ)
魔女の体温が届くくらいの近くで、ギャンは魔女を物欲しげな顔で見る。
(何でこんな、甘い匂いで暖かいのが、おいらのじゃないのかな)
ふと、思う。
もっと大きくて。
もっと強くて。
……人型の。
(ジルバーみたいな、立派な雄なら、魔女をおいらのモノに出来るのかなぁ……)
どこからか、突き上げるような欲が迸る。
ギャンは、ニットを解く魔女へ向かい、全力で肩口を押した。その柔らかな身体は、分厚いラグの上に倒れる。
「……ギャン君? ちょっと、どうしたの」
魔女は目を見開いて、きょとんとこちらを見ている。
押し倒されたのだという意識はないようで、その顔には純粋な驚きがある。
だが、ギャンは本気だった。
甘い匂い、甘い身体。それをどうしたらいいのかは、幼い頃に離れてしまった彼にはよくわからない。
いや、深夜に寝床で睦みあう男女ならば、見た事がある。
ずうっと身近で、何度も。
男の大きな体に隠れるように抱きすくめられた彼女なら、見た事があるのだ。
だからギャンは本気だった。
(おいらの、モノに)
ぎらぎらとした目で彼は、魔女を見つめた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる