6 / 10
一章
特訓開始
しおりを挟む
「あなた、本当に『伝説の魔女マリー』なの?」
「せやで」
白髪の老女が事も無げに言った。
ここは、魔女の家。
入るなり靴を脱がされ、部屋に通された。
その部屋は特殊だった。
天井には天使の輪っかがぶら下がっており光を放っている。
黒板が壁際にたてかけている、ということはここで、誰かに教えている可能性がある。
他にも棚に、木彫りのクマや、ベルベットの服を着た人形、そして掌の大きさの人物画が置かれている。
魔女は部屋の真ん中に置かれた、低くて小さなテーブルの周りに座るように言った。
「嫌よ!スカーレル侯爵令嬢である私が、地べたに座るなんて!」
「ほな、これ使い」
老婆は青色のクッションをテーブルの周りに引いた。
しかし、魔女自分は背もたれのある、黒い椅子にどんと座った。
「いつまで立っとるねん。はよ座り」
魔女がアンリエットを睨んだ。
「大丈夫だって。古いけどちゃんと掃除はしてるから」
ユーリはなんの躊躇もなく、クッションの上に座る。
ーここまできたら、したがうしかない。
アンリエットは諦め、クッションの上に座った。
「単刀直入に言うわ。私、あなたが伝説の魔女だって信じてないの。証拠を見せて」
アンリエットは疑わし気に老女を睨んだ。
「まあそうやろな。証拠みせたるわ」
老女は、机の上にある黒い板を手に取った。
『おもろい番組やってるかな』
アンリエットが初めて聞く言葉だった。すると黒板に突然人の姿が映った。それも絵ではなく中で動いている。
「な、なに?こんな魔法見たことがない!」
「あんたらの魔法は、お互いケンカするのばっかりやもんなあ。ウチのは平和利用がモットーや」
老女は板についた突起を押す。すると黒板の絵が次々と変わっていく。
「で、でも、これくらいじゃあ大したことないわ!」
アンリエットは動揺を隠すように言った。
すると老女は、今度は机の上にある白い板を手に取り、天井の天使の輪に向けた。
『電気、明るすぎるわ』
また、聞き取れない呪文を唱えると、天使の輪から光が消え、部屋の中が真っ暗になった。
「なんてことを!天使のご加護を消し去るなんて!」
アンリエットが叫ぶ。
『ほな、つけよか』
魔女がもう一度呪文を唱えると、天使の輪から光が復活した。
アンリエットはホッとした。
「どうや。これで信じたやろ」
老女はにっと笑った。
「す、少しはね!でも、これが本当にマリエとの対決に勝てる保証は...」
「あのな、やってみんと、わからんやろ。あんたがこの魔法が使いこなせたら勝てる、使いこなせなんだら負ける、それだけのことや」
「ぐっ...」
アンリエットは言い返すことが出来なかった。
ー確かにその通りだわ。ここまで来てなにを怖気づいているの!アンリエット・スカーレル!
「どうする?ウチの特訓を受けるんか?それとも…」
「受けるに決まってるわ!このアンリエット・スカーレルに、二言は無くてよ!」
「よっしゃ!さっそく初めよか」
魔女マリーは机の上にドンっと本を置いた。
アンリエットは恐る恐る本を開いたが、まったく読めない。
「これがこっちの魔導書なの?」
「せや。まずは、ヒラガナの練習や」
「せやで」
白髪の老女が事も無げに言った。
ここは、魔女の家。
入るなり靴を脱がされ、部屋に通された。
その部屋は特殊だった。
天井には天使の輪っかがぶら下がっており光を放っている。
黒板が壁際にたてかけている、ということはここで、誰かに教えている可能性がある。
他にも棚に、木彫りのクマや、ベルベットの服を着た人形、そして掌の大きさの人物画が置かれている。
魔女は部屋の真ん中に置かれた、低くて小さなテーブルの周りに座るように言った。
「嫌よ!スカーレル侯爵令嬢である私が、地べたに座るなんて!」
「ほな、これ使い」
老婆は青色のクッションをテーブルの周りに引いた。
しかし、魔女自分は背もたれのある、黒い椅子にどんと座った。
「いつまで立っとるねん。はよ座り」
魔女がアンリエットを睨んだ。
「大丈夫だって。古いけどちゃんと掃除はしてるから」
ユーリはなんの躊躇もなく、クッションの上に座る。
ーここまできたら、したがうしかない。
アンリエットは諦め、クッションの上に座った。
「単刀直入に言うわ。私、あなたが伝説の魔女だって信じてないの。証拠を見せて」
アンリエットは疑わし気に老女を睨んだ。
「まあそうやろな。証拠みせたるわ」
老女は、机の上にある黒い板を手に取った。
『おもろい番組やってるかな』
アンリエットが初めて聞く言葉だった。すると黒板に突然人の姿が映った。それも絵ではなく中で動いている。
「な、なに?こんな魔法見たことがない!」
「あんたらの魔法は、お互いケンカするのばっかりやもんなあ。ウチのは平和利用がモットーや」
老女は板についた突起を押す。すると黒板の絵が次々と変わっていく。
「で、でも、これくらいじゃあ大したことないわ!」
アンリエットは動揺を隠すように言った。
すると老女は、今度は机の上にある白い板を手に取り、天井の天使の輪に向けた。
『電気、明るすぎるわ』
また、聞き取れない呪文を唱えると、天使の輪から光が消え、部屋の中が真っ暗になった。
「なんてことを!天使のご加護を消し去るなんて!」
アンリエットが叫ぶ。
『ほな、つけよか』
魔女がもう一度呪文を唱えると、天使の輪から光が復活した。
アンリエットはホッとした。
「どうや。これで信じたやろ」
老女はにっと笑った。
「す、少しはね!でも、これが本当にマリエとの対決に勝てる保証は...」
「あのな、やってみんと、わからんやろ。あんたがこの魔法が使いこなせたら勝てる、使いこなせなんだら負ける、それだけのことや」
「ぐっ...」
アンリエットは言い返すことが出来なかった。
ー確かにその通りだわ。ここまで来てなにを怖気づいているの!アンリエット・スカーレル!
「どうする?ウチの特訓を受けるんか?それとも…」
「受けるに決まってるわ!このアンリエット・スカーレルに、二言は無くてよ!」
「よっしゃ!さっそく初めよか」
魔女マリーは机の上にドンっと本を置いた。
アンリエットは恐る恐る本を開いたが、まったく読めない。
「これがこっちの魔導書なの?」
「せや。まずは、ヒラガナの練習や」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
石塔に幽閉って、私、石の聖女ですけど
ハツカ
恋愛
私はある日、王子から役立たずだからと、石塔に閉じ込められた。
でも私は石の聖女。
石でできた塔に閉じ込められても何も困らない。
幼馴染の従者も一緒だし。
【完結】私は聖女の代用品だったらしい
雨雲レーダー
恋愛
異世界に聖女として召喚された紗月。
元の世界に帰る方法を探してくれるというリュミナス王国の王であるアレクの言葉を信じて、聖女として頑張ろうと決意するが、ある日大学の後輩でもあった天音が真の聖女として召喚されてから全てが変わりはじめ、ついには身に覚えのない罪で荒野に置き去りにされてしまう。
絶望の中で手を差し伸べたのは、隣国グランツ帝国の冷酷な皇帝マティアスだった。
「俺のものになれ」
突然の言葉に唖然とするものの、行く場所も帰る場所もない紗月はしぶしぶ着いて行くことに。
だけど帝国での生活は意外と楽しくて、マティアスもそんなにイヤなやつじゃないのかも?
捨てられた聖女と孤高の皇帝が絆を深めていく一方で、リュミナス王国では次々と異変がおこっていた。
・完結まで予約投稿済みです。
・1日3回更新(7時・12時・18時)
欠陥皇女なので皇位はいりません ~元女王、無能として暗躍する~
はるかわ 美穂
ファンタジー
小国の女王として君臨していたネイシャは、従弟の策略により命を落とす。
次に目を覚ますと、帝国の皇女になっていた。
婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。
國樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。
声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。
愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。
古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。
よくある感じのざまぁ物語です。
ふんわり設定。ゆるーくお読みください。
【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます
なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。
過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。
魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。
そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。
これはシナリオなのかバグなのか?
その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。
【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】
悪役令嬢、休職致します
碧井 汐桜香
ファンタジー
そのキツい目つきと高飛車な言動から悪役令嬢として中傷されるサーシャ・ツンドール公爵令嬢。王太子殿下の婚約者候補として、他の婚約者候補の妨害をするように父に言われて、実行しているのも一因だろう。
しかし、ある日突然身体が動かなくなり、母のいる領地で療養することに。
作中、主人公が精神を病む描写があります。ご注意ください。
作品内に登場する医療行為や病気、治療などは創作です。作者は医療従事者ではありません。実際の症状や治療に関する判断は、必ず医師など専門家にご相談ください。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる