悪役令嬢の兄に転生した俺、なぜか現実世界の義弟にプロポーズされてます。

ちんすこう

文字の大きさ
27 / 53

18-2※

しおりを挟む

「兄ちゃん……」

 間近で視線を交わす。奏は泣きそうな顔をしていた。

「あいつにちゅー、された?」
「ううん。されてない」

 すぐ傍まで迫り来ていた男の顔を思い出して、ぶわっと鳥肌が立つ。
 あのとき奏が来てくれなかったら、俺はあいつと唇を重ねていたんだろう。

「恐ろしいことを言うな」
「だって、俺が入ったときゆうくんは」

 ベッドの上で向き合って座る俺と奏。
 小屋を出た後に奏にかけてもらったコートを脱がされると、ズボンはともかくシャツがひどい状態になっていた。
 白い布地が割けて肌が露出している。デイビッドにダイナミック脱衣させられた名残だ。
 それを見て語気を荒らげる奏に、俺は深く息を吐き出した。

「寸止めだよ。あと二秒遅かったら上も下も行かれてたかも」
「兄ちゃん……そういう軽口、心臓に悪い」

 奏は安堵とも疲弊ともとれる溜め息をつきながら、また唇を合わせてきた。

 ――ああ、やっぱり……全然、嫌じゃない。

 かえってほっとするっていうか。
 生理的に無理な相手ではキス一つすら気持ち悪くて仕方ないんだと、知ってしまった。

 ――つまり俺は、奏を……。

 唇が離れると、両肩を強く掴まれて頬のあたりに顔を埋められた。

「はー……よかった。とりあえずそこは守れたんだ」
「うん。さんきゅな」

 奏は苦い笑みを見せながら俺を抱き締めようとして、真顔になった。

「なにこれ」

 奏の手が俺の髪を払う。
 首筋を指でたどられて、はっと思い至ることがあった。そこは、デイビッドにしゃぶられまくった部分だ。

「兄ちゃん、今朝までこんな跡無かった」
「あ……唇にはされてないけど、首とかうなじはやたら舐め回されたかも――ってうわ痛たたたた!!」

 白状しながら押し倒される。教えた箇所を噛まれて、皮膚が伸びるほど引っ張られた。

「い、痛いぃ……」
「ちょっと我慢して。これが俺の跡に変わるまで」

 起き上がろうとして暴れたが、簡単に抑え込まれる。

「痛っ、ぁう」

 そうして強引に噛まれていると、捕食されるんじゃないかと動物的な危機感を覚えた。奏はそんなことしないって分かってるけど……。

「ここも」

 不愉快そうに呟いた奏が、首の横に吸い付いて歯を立てる。

「ぁ……っ」

 薄い皮膚にピリ、と痛みが走った。
 デイビッドに施された怪しげな魔法のせいで、変に甘い痺れが生まれる。

「こんなので感じちゃうくらい、強い催淫かけられたんだね」

 奏が苛立ちを含んだ声で言い、残された跡を一つ一つ吸い直していく。

「お前さぁ……っ、そこ、あいつが舐め回したとこだぞ」

 軽く息を弾ませながら奏の頬を撫でると、びたりと動きが停まる。
 が、またすぐにキスが再開した。

「だから俺が上書きしてるんでしょ」
「デイビッドと間接ディープキスみたいになるぞ?」
「いいもん」

 拗ねた口調で言って、体を横向けられる。シャツの残骸を脱がされながら、あいつに舐められた覚えのない背中まで舌を這わされた。

「ぅあ……っ」
「兄ちゃんが他の男に汚されたままになるより、俺の舌が汚れたほうがまだマシ」
「んなとこ、触られてねぇっ」

 肩まで舌が這い上がり、丸みを帯びた骨を食むように歯を立てられる。
 きつく吸われてできた赤い鬱血痕を、労わるみたいに舌の表面で撫でられる。
 エロいっていうより、大型犬に舐め回されてる気分になってきた……。

「他は?」
「ほ、ほっぺも食べられた、痛いっ!」

 言うんじゃなかったと頬をかじられてから気付く。俺は何回やらかしても学ばない。

「痛いたいたい、噛むな!」
甘噛あまふぁみ、あまふぁみ」

 なにが甘噛みだ激烈に痛ぇわと奏の顔を押しのけると、胸の尖りを口に含まれた。

「ひっ! そ、そこも噛まれてないから!」

 左胸の小粒を薄桃色の唇に含まれて、ちゅっ、ちゅっ、と耐え難いほど可愛い音を立てながら吸われる。

「ぁっ、んぅ……っ」

 変態伯爵に塗られた液体が今になって活性化し、触れられてもいない孔がじんじん発熱する。その熱が奏に吸われている乳首にまで伝染して、甘く吸い上げられるたびにびりびりと微電流が走った。
 そのあいだに右胸にも手が伸ばされて、濡れた指がピンクに色付いた乳暈を撫でる。

「あぅ、お前、それ……っ!」
「うん。モーリスの奴が使ってた催淫魔法って、これでしょ?」

 なんでお前がその魔法を、と訊く前に乳首をぐちゅりと摘まれて、声がひっくり返った。


しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! できるかぎり毎日? お話の予告と皆の裏話? のあがるインスタとYouTube インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

処理中です...