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アイラと廉
その6-03
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「――あんた、私と喋ってる間に、セックスしてるんじゃないでしょうね」
「もう、寝る時間なのよ」
「私の電話の前でセックスするなんて、いい度胸じゃない」
「まだしてないわよ」
「言い訳するな」
ビシッ――と、冷たく怒られてしまう。
「アイラ、あんた、明日までに全部説明しないと、毎晩、邪魔してやるわよ」
「ええ?」
「しっかり報告しなさいね」
それだけを言いつけて、プツッ――と、美花は電話を切ってしまった。
プー、プーと、切断された音だけがアイラの耳に届いて、アイラは、その受話器を、ポイッと、ベッドの端に投げるようにした。
「美花さんは、なんて?」
「セックスするな、って怒られた」
「まだ始めたばかりだけど」
「私だって、そう言ったわよ」
「美花さんに、どこまで喋るの?」
「どういう意味? ――あっ……」
廉の腕がアイラの足に届き、微かに仰け反ったアイラの首元に、廉の唇が寄せられた。
「ベッドの内容も、全部、話す?」
「それはプライベートよ」
「それを聞いて、一応は、安心したかな」
「なんで?」
「わざわざベッドの内容まで話されたら、あまりに筒抜けしすぎてて、俺の立場もないし」
「ミカとは何でも話すけど、プライベートはプライベートなの。そのボーダーラインがあるでしょう」
「そうだけどね」
「なんで? 話されるのイヤなら、話さないわよ」
「女性の会話の内容には、極力、関わらないようにしてるんで」
「まあ、それは無難よね」
「アイラ、眠いなら寝ていいよ」
「この体勢で、眠れるわけないじゃない」
廉の動きが早くなって、アイラはかなり燃え上がり出していた。
「ミカが――明日までに報告しないと、毎晩、邪魔するって――」
「それは問題だな。しっかり報告済ませておくように」
「いい――じゃない……」
あぁ……と、アイラが堪えきれずに、そこで嬌声を上げていた。
「ねえ……もう来て」
「なんで?」
「引き伸ばされたら、明日、寝坊しちゃうもん」
「仕事休むんじゃないの?」
「それは来週の月曜。連休ね」
「そう」
「だから、もう来て」
アイラが腕を伸ばして廉を引き寄せるようにした。それで、自分の上に重みが増して、アイラの足がゆっくりと上がっていた。
「――あっ……いい感じ……」
「アイラはすぐに熱くなるな」
「いいじゃない。朝もしたんだし」
「それで残ってるの?」
「そう」
「へえ。それは、乗り気なんだな」
「だって――シャワーでしたの久しぶり」
「そう」
グイッと、強く押し付けられて、アイラだの体が更に仰け反っていた。
「アイラ、今は、昔の男の話、聞きたくないから、して欲しくないな」
パチッと目を開けたアイラは、
「ごめん。今のナシ」
珍しく、アイラが素直なほどに誤っていた。
言いたい放題言えるカップルだろうが、ある程度の礼儀はあるのだ。今のは、確かに行き過ぎである。
「ごめん。気持ちよくて、考えてなかったの」
廉はただアイラを見下ろしているだけだ。
アイラが腕を伸ばし、その廉を抱き締めるようにして、
「廉の昔の彼女の話、していいわ。それでイーブンね」
「別に」
「いいの。今のは、私が行き過ぎだから」
「アイラが素直だと、調子が狂う」
「なによ」
ムッとしたように、アイラが廉を睨め付ける。
だが、廉はアイラの背中に腕を回して、アイラをもう一度抱き締めるようにする。
「行き過ぎたわ……」
「気持ち良かった?」
「良かったわ」
「今のが? シャワーのが?」
アイラが、キッと、眉間を揺らせていた。
「ごめん。俺も行き過ぎた。これでイーブン。ちょっとムカついたから」
アイラはまだちょっと廉を睨め付けているような顔をしていたが、ふうと、小さな溜め息をついて、廉の唇に唇を寄せた。
「でも――顔は覚えてない――って言ったら、少しは気が軽くなる?」
「じゃあ、何で思い出したの?」
アイラはそれには答えない。
「なに?」
それでも、廉はそれをあやふやにしないようだった。
アイラはちょっとだけ唇を噛んで、
「――比べたんじゃないけど、レンの方が気持ちいいなって――」
「それ、おだててるの?」
それで、アイラがまたムッとしたように微かに唇を尖らせた。
廉がその膨れている唇にキスをする。
「俺がちょっと嫉妬してるって話したら、嬉しい?」
「嬉しくないわよ、この状況じゃ」
「だったら、言わないかな」
「あれは――行き過ぎだったわ。悪かったわよ……」
「そうだけど、――俺の方が気持ちいい?」
「そうね」
「だったら、それでチャラかな」
「なんで?」
「顔も覚えてないんだろう? だったら、大した男じゃないことになる。覚える価値もない、とか」
「そうね」
「アイラは気に入らない男は、すぐに捨てるだろうし、でも、俺はアイラと一緒に住んでるから。それで、簡単にチャラかな」
「ごめん。行き過ぎたわ」
アイラが素直で、廉にキスをしてくる唇が優しくて、廉もそのままキスを深めていた。
「――やっぱり、一緒に住み始めると、知らないことが見えてくるものだな」
「知らないこと?」
「自分の過失にはすごい素直で驚いたけど、アイラらしいかな。――アイラが触れてくるのは、癖になりそうだし」
「なったって、言ったじゃない」
「そうだけど、まだなりそうだ」
「それで?」
「だから、ミカさんに、毎晩、邪魔されるのは問題だから、しっかり報告を忘れないように」
「ミカは――言葉、違えないのよね――」
はぁ……と、アイラの口から扇情的な吐息が漏れていた。
「それじゃあ、尚更だな。――アイラ、俺は邪魔されるのには、文句を言うから」
「明日――まだ、仕事忙しいのよ」
「時間を作りなさい。邪魔は、許さないから」
「そう――ね――」
そこだけは、アイラも廉に同意していたのだった。
「もう、寝る時間なのよ」
「私の電話の前でセックスするなんて、いい度胸じゃない」
「まだしてないわよ」
「言い訳するな」
ビシッ――と、冷たく怒られてしまう。
「アイラ、あんた、明日までに全部説明しないと、毎晩、邪魔してやるわよ」
「ええ?」
「しっかり報告しなさいね」
それだけを言いつけて、プツッ――と、美花は電話を切ってしまった。
プー、プーと、切断された音だけがアイラの耳に届いて、アイラは、その受話器を、ポイッと、ベッドの端に投げるようにした。
「美花さんは、なんて?」
「セックスするな、って怒られた」
「まだ始めたばかりだけど」
「私だって、そう言ったわよ」
「美花さんに、どこまで喋るの?」
「どういう意味? ――あっ……」
廉の腕がアイラの足に届き、微かに仰け反ったアイラの首元に、廉の唇が寄せられた。
「ベッドの内容も、全部、話す?」
「それはプライベートよ」
「それを聞いて、一応は、安心したかな」
「なんで?」
「わざわざベッドの内容まで話されたら、あまりに筒抜けしすぎてて、俺の立場もないし」
「ミカとは何でも話すけど、プライベートはプライベートなの。そのボーダーラインがあるでしょう」
「そうだけどね」
「なんで? 話されるのイヤなら、話さないわよ」
「女性の会話の内容には、極力、関わらないようにしてるんで」
「まあ、それは無難よね」
「アイラ、眠いなら寝ていいよ」
「この体勢で、眠れるわけないじゃない」
廉の動きが早くなって、アイラはかなり燃え上がり出していた。
「ミカが――明日までに報告しないと、毎晩、邪魔するって――」
「それは問題だな。しっかり報告済ませておくように」
「いい――じゃない……」
あぁ……と、アイラが堪えきれずに、そこで嬌声を上げていた。
「ねえ……もう来て」
「なんで?」
「引き伸ばされたら、明日、寝坊しちゃうもん」
「仕事休むんじゃないの?」
「それは来週の月曜。連休ね」
「そう」
「だから、もう来て」
アイラが腕を伸ばして廉を引き寄せるようにした。それで、自分の上に重みが増して、アイラの足がゆっくりと上がっていた。
「――あっ……いい感じ……」
「アイラはすぐに熱くなるな」
「いいじゃない。朝もしたんだし」
「それで残ってるの?」
「そう」
「へえ。それは、乗り気なんだな」
「だって――シャワーでしたの久しぶり」
「そう」
グイッと、強く押し付けられて、アイラだの体が更に仰け反っていた。
「アイラ、今は、昔の男の話、聞きたくないから、して欲しくないな」
パチッと目を開けたアイラは、
「ごめん。今のナシ」
珍しく、アイラが素直なほどに誤っていた。
言いたい放題言えるカップルだろうが、ある程度の礼儀はあるのだ。今のは、確かに行き過ぎである。
「ごめん。気持ちよくて、考えてなかったの」
廉はただアイラを見下ろしているだけだ。
アイラが腕を伸ばし、その廉を抱き締めるようにして、
「廉の昔の彼女の話、していいわ。それでイーブンね」
「別に」
「いいの。今のは、私が行き過ぎだから」
「アイラが素直だと、調子が狂う」
「なによ」
ムッとしたように、アイラが廉を睨め付ける。
だが、廉はアイラの背中に腕を回して、アイラをもう一度抱き締めるようにする。
「行き過ぎたわ……」
「気持ち良かった?」
「良かったわ」
「今のが? シャワーのが?」
アイラが、キッと、眉間を揺らせていた。
「ごめん。俺も行き過ぎた。これでイーブン。ちょっとムカついたから」
アイラはまだちょっと廉を睨め付けているような顔をしていたが、ふうと、小さな溜め息をついて、廉の唇に唇を寄せた。
「でも――顔は覚えてない――って言ったら、少しは気が軽くなる?」
「じゃあ、何で思い出したの?」
アイラはそれには答えない。
「なに?」
それでも、廉はそれをあやふやにしないようだった。
アイラはちょっとだけ唇を噛んで、
「――比べたんじゃないけど、レンの方が気持ちいいなって――」
「それ、おだててるの?」
それで、アイラがまたムッとしたように微かに唇を尖らせた。
廉がその膨れている唇にキスをする。
「俺がちょっと嫉妬してるって話したら、嬉しい?」
「嬉しくないわよ、この状況じゃ」
「だったら、言わないかな」
「あれは――行き過ぎだったわ。悪かったわよ……」
「そうだけど、――俺の方が気持ちいい?」
「そうね」
「だったら、それでチャラかな」
「なんで?」
「顔も覚えてないんだろう? だったら、大した男じゃないことになる。覚える価値もない、とか」
「そうね」
「アイラは気に入らない男は、すぐに捨てるだろうし、でも、俺はアイラと一緒に住んでるから。それで、簡単にチャラかな」
「ごめん。行き過ぎたわ」
アイラが素直で、廉にキスをしてくる唇が優しくて、廉もそのままキスを深めていた。
「――やっぱり、一緒に住み始めると、知らないことが見えてくるものだな」
「知らないこと?」
「自分の過失にはすごい素直で驚いたけど、アイラらしいかな。――アイラが触れてくるのは、癖になりそうだし」
「なったって、言ったじゃない」
「そうだけど、まだなりそうだ」
「それで?」
「だから、ミカさんに、毎晩、邪魔されるのは問題だから、しっかり報告を忘れないように」
「ミカは――言葉、違えないのよね――」
はぁ……と、アイラの口から扇情的な吐息が漏れていた。
「それじゃあ、尚更だな。――アイラ、俺は邪魔されるのには、文句を言うから」
「明日――まだ、仕事忙しいのよ」
「時間を作りなさい。邪魔は、許さないから」
「そう――ね――」
そこだけは、アイラも廉に同意していたのだった。
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