やっぱりやらねば(続)

Anastasia

文字の大きさ
19 / 45
アイラと廉

その6-03

しおりを挟む
「――あんた、私と喋ってる間に、セックスしてるんじゃないでしょうね」
「もう、寝る時間なのよ」

「私の電話の前でセックスするなんて、いい度胸じゃない」
「まだしてないわよ」

「言い訳するな」

 ビシッ――と、冷たく怒られてしまう。

「アイラ、あんた、明日までに全部説明しないと、毎晩、邪魔してやるわよ」
「ええ?」

「しっかり報告しなさいね」

 それだけを言いつけて、プツッ――と、美花は電話を切ってしまった。

 プー、プーと、切断された音だけがアイラの耳に届いて、アイラは、その受話器を、ポイッと、ベッドの端に投げるようにした。

「美花さんは、なんて?」
「セックスするな、って怒られた」

「まだ始めたばかりだけど」
「私だって、そう言ったわよ」

「美花さんに、どこまで喋るの?」
「どういう意味? ――あっ……」

 廉の腕がアイラの足に届き、微かに仰け反ったアイラの首元に、廉の唇が寄せられた。

「ベッドの内容も、全部、話す?」
「それはプライベートよ」

「それを聞いて、一応は、安心したかな」
「なんで?」

「わざわざベッドの内容まで話されたら、あまりに筒抜けしすぎてて、俺の立場もないし」
「ミカとは何でも話すけど、プライベートはプライベートなの。そのボーダーラインがあるでしょう」

「そうだけどね」
「なんで? 話されるのイヤなら、話さないわよ」

「女性の会話の内容には、極力、関わらないようにしてるんで」
「まあ、それは無難よね」

「アイラ、眠いなら寝ていいよ」
「この体勢で、眠れるわけないじゃない」

 廉の動きが早くなって、アイラはかなり燃え上がり出していた。

「ミカが――明日までに報告しないと、毎晩、邪魔するって――」
「それは問題だな。しっかり報告済ませておくように」

「いい――じゃない……」

 あぁ……と、アイラが堪えきれずに、そこで嬌声を上げていた。

「ねえ……もう来て」
「なんで?」

「引き伸ばされたら、明日、寝坊しちゃうもん」
「仕事休むんじゃないの?」

「それは来週の月曜。連休ね」
「そう」

「だから、もう来て」

 アイラが腕を伸ばして廉を引き寄せるようにした。それで、自分の上に重みが増して、アイラの足がゆっくりと上がっていた。

「――あっ……いい感じ……」
「アイラはすぐに熱くなるな」

「いいじゃない。朝もしたんだし」
「それで残ってるの?」

「そう」
「へえ。それは、乗り気なんだな」

「だって――シャワーでしたの久しぶり」
「そう」

 グイッと、強く押し付けられて、アイラだの体が更に仰け反っていた。

「アイラ、今は、昔の男の話、聞きたくないから、して欲しくないな」

 パチッと目を開けたアイラは、
「ごめん。今のナシ」

 珍しく、アイラが素直なほどに誤っていた。

 言いたい放題言えるカップルだろうが、ある程度の礼儀はあるのだ。今のは、確かに行き過ぎである。

「ごめん。気持ちよくて、考えてなかったの」

 廉はただアイラを見下ろしているだけだ。

 アイラが腕を伸ばし、その廉を抱き締めるようにして、
「廉の昔の彼女の話、していいわ。それでイーブンね」
「別に」

「いいの。今のは、私が行き過ぎだから」
「アイラが素直だと、調子が狂う」
「なによ」

 ムッとしたように、アイラが廉を睨め付ける。

 だが、廉はアイラの背中に腕を回して、アイラをもう一度抱き締めるようにする。

「行き過ぎたわ……」
「気持ち良かった?」

「良かったわ」
「今のが? シャワーのが?」

 アイラが、キッと、眉間を揺らせていた。

「ごめん。俺も行き過ぎた。これでイーブン。ちょっとムカついたから」

 アイラはまだちょっと廉を睨め付けているような顔をしていたが、ふうと、小さな溜め息をついて、廉の唇に唇を寄せた。

「でも――顔は覚えてない――って言ったら、少しは気が軽くなる?」
「じゃあ、何で思い出したの?」

 アイラはそれには答えない。

「なに?」

 それでも、廉はそれをあやふやにしないようだった。

 アイラはちょっとだけ唇を噛んで、
「――比べたんじゃないけど、レンの方が気持ちいいなって――」
「それ、おだててるの?」

 それで、アイラがまたムッとしたように微かに唇を尖らせた。

 廉がその膨れている唇にキスをする。

「俺がちょっと嫉妬してるって話したら、嬉しい?」
「嬉しくないわよ、この状況じゃ」

「だったら、言わないかな」
「あれは――行き過ぎだったわ。悪かったわよ……」

「そうだけど、――俺の方が気持ちいい?」
「そうね」

「だったら、それでチャラかな」
「なんで?」

「顔も覚えてないんだろう? だったら、大した男じゃないことになる。覚える価値もない、とか」
「そうね」

「アイラは気に入らない男は、すぐに捨てるだろうし、でも、俺はアイラと一緒に住んでるから。それで、簡単にチャラかな」
「ごめん。行き過ぎたわ」

 アイラが素直で、廉にキスをしてくる唇が優しくて、廉もそのままキスを深めていた。

「――やっぱり、一緒に住み始めると、知らないことが見えてくるものだな」
「知らないこと?」

「自分の過失にはすごい素直で驚いたけど、アイラらしいかな。――アイラが触れてくるのは、癖になりそうだし」
「なったって、言ったじゃない」

「そうだけど、まだなりそうだ」
「それで?」

「だから、ミカさんに、毎晩、邪魔されるのは問題だから、しっかり報告を忘れないように」
「ミカは――言葉、違えないのよね――」

 はぁ……と、アイラの口から扇情的な吐息が漏れていた。

「それじゃあ、尚更だな。――アイラ、俺は邪魔されるのには、文句を言うから」
「明日――まだ、仕事忙しいのよ」

「時間を作りなさい。邪魔は、許さないから」
「そう――ね――」

 そこだけは、アイラも廉に同意していたのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...