121 / 305
第六章 幸福は義務
幸せの漫画家
しおりを挟む
夜の帳が下りた霧ヶ峰の山小屋。
京都から来た女子高生、吉岡理夢ちゃんの口から発せられたのは、思わず自分の耳を疑ってしまいそうな、驚きの一言である。
「うちのおとん、漫画家なんです。
漫画で稼いだお金で、杉の森を買い取って、広葉樹の森に植え替えてるんです。」
シーン、と静まり返る一同。
誰もが、どういうリアクションをしていいのか、分からないようだ。
「漫画.....、家?」
誰かが、ようやく口にする。
理夢ちゃんの母親のルミ子さんは、やや渋い顔をしている。
「はい。そうです。」
若い理夢ちゃんの顔に、誇らしげな表情が浮かぶ。
「何ていう漫画家さん?何、書いてるの?」
食い入るように、佑夏が聞く。
彼女は教育大生ではあるが、漫画・アニメを「勉強の邪魔」みたいな感じで、否定していない。
「それで......、その。ペンネームは゛やまね“いうんです。
おとん、今日も、えらい来たがっとったんですけど、いつも〆切に追われとって。」
理夢ちゃんの、この一言に、室内はどよめきに包まれる。
「やまね、さん、って、まさか、あの、゛ぴょんぴょん“の作者さんなの!?」
佑夏が心底、驚いている。
いや、これは無理もない。
「はい。そうです。」
同じセリフの繰り返しだが、理夢ちゃんは、今度はニッコリ笑う。
ぴょんぴょん。
「少年ユース」に連載中で、アニメ化もされた大ヒット作。
主人公の子兎「ぴょんぴょん」と、この国の森羅万象、自然に宿る神々、そして森に棲む動物達との交流を描いた、心暖まるファンタジーである。
連載されているのは、れっきとした少年誌ではあるが、絵柄、ストーリーが激カワであることから、女性にも、絶大な人気を誇っている。
ここで、インテリ才女の小林さんが口を開く
「お父さんが、ペンネームを゛やまね“にしているのは、ヤマネに特別な思い入れがあるからなんですか?」
「いいえ、本名はカッコ良すぎて、かなん言うて。吉岡総司いうんです。」
「理夢!本名はバラすな言われてるやろ、いちびりな!」
ルミ子さんが、テーブルを叩く。
娘は笑いながら、
「アハハ、堪忍え。」
「本当に、カッコいいお名前ね。本名で行けば良かったのに。」
僕の姫はそう言うが。
「佑夏ちゃん、身バレは色々、問題あるわよ。」
横浜のナース、水野さんが、釘を刺す。
「カッコええのんは名前やけですえ。オタクでダサ男です。」
ルミ子さん、そうなのか?
ちょっと、謙遜ではないだろうか。
ルミ子さんは、美人だし、理夢ちゃんは大変な美少女だ。
いくら、母親が良くても、父親があまりに酷かったら、こんな可愛い娘は生まれないと思う。
京都から来た女子高生、吉岡理夢ちゃんの口から発せられたのは、思わず自分の耳を疑ってしまいそうな、驚きの一言である。
「うちのおとん、漫画家なんです。
漫画で稼いだお金で、杉の森を買い取って、広葉樹の森に植え替えてるんです。」
シーン、と静まり返る一同。
誰もが、どういうリアクションをしていいのか、分からないようだ。
「漫画.....、家?」
誰かが、ようやく口にする。
理夢ちゃんの母親のルミ子さんは、やや渋い顔をしている。
「はい。そうです。」
若い理夢ちゃんの顔に、誇らしげな表情が浮かぶ。
「何ていう漫画家さん?何、書いてるの?」
食い入るように、佑夏が聞く。
彼女は教育大生ではあるが、漫画・アニメを「勉強の邪魔」みたいな感じで、否定していない。
「それで......、その。ペンネームは゛やまね“いうんです。
おとん、今日も、えらい来たがっとったんですけど、いつも〆切に追われとって。」
理夢ちゃんの、この一言に、室内はどよめきに包まれる。
「やまね、さん、って、まさか、あの、゛ぴょんぴょん“の作者さんなの!?」
佑夏が心底、驚いている。
いや、これは無理もない。
「はい。そうです。」
同じセリフの繰り返しだが、理夢ちゃんは、今度はニッコリ笑う。
ぴょんぴょん。
「少年ユース」に連載中で、アニメ化もされた大ヒット作。
主人公の子兎「ぴょんぴょん」と、この国の森羅万象、自然に宿る神々、そして森に棲む動物達との交流を描いた、心暖まるファンタジーである。
連載されているのは、れっきとした少年誌ではあるが、絵柄、ストーリーが激カワであることから、女性にも、絶大な人気を誇っている。
ここで、インテリ才女の小林さんが口を開く
「お父さんが、ペンネームを゛やまね“にしているのは、ヤマネに特別な思い入れがあるからなんですか?」
「いいえ、本名はカッコ良すぎて、かなん言うて。吉岡総司いうんです。」
「理夢!本名はバラすな言われてるやろ、いちびりな!」
ルミ子さんが、テーブルを叩く。
娘は笑いながら、
「アハハ、堪忍え。」
「本当に、カッコいいお名前ね。本名で行けば良かったのに。」
僕の姫はそう言うが。
「佑夏ちゃん、身バレは色々、問題あるわよ。」
横浜のナース、水野さんが、釘を刺す。
「カッコええのんは名前やけですえ。オタクでダサ男です。」
ルミ子さん、そうなのか?
ちょっと、謙遜ではないだろうか。
ルミ子さんは、美人だし、理夢ちゃんは大変な美少女だ。
いくら、母親が良くても、父親があまりに酷かったら、こんな可愛い娘は生まれないと思う。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される
けるたん
青春
「ほんと胸がニセモノで良かったな。貧乳バンザイ!」
「離して洋子! じゃなきゃあのバカの頭をかち割れないっ!」
「お、落ちついてメイちゃんっ!? そんなバットで殴ったら死んじゃう!? オオカミくんが死んじゃうよ!?」
県立森実高校には2人の美の「女神」がいる。
頭脳明晰、容姿端麗、誰に対しても優しい聖女のような性格に、誰もが憧れる生徒会長と、天は二物を与えずという言葉に真正面から喧嘩を売って完膚なきまでに完勝している完全無敵の双子姉妹。
その名も『古羊姉妹』
本来であれば彼女の視界にすら入らないはずの少年Bである大神士狼のようなロマンティックゲス野郎とは、縁もゆかりもない女の子のはずだった。
――士狼が彼女たちを不審者から助ける、その日までは。
そして『その日』は突然やってきた。
ある日、夜遊びで帰りが遅くなった士狼が急いで家へ帰ろうとすると、古羊姉妹がナイフを持った不審者に襲われている場面に遭遇したのだ。
助け出そうと駆け出すも、古羊姉妹の妹君である『古羊洋子』は助けることに成功したが、姉君であり『古羊芽衣』は不審者に胸元をザックリ斬りつけられてしまう。
何とか不審者を撃退し、急いで応急処置をしようと士狼は芽衣の身体を抱き上げた……その時だった!
――彼女の胸元から冗談みたいにバカデカい胸パッドが転げ落ちたのは。
そう、彼女は嘘で塗り固められた虚乳(きょにゅう)の持ち主だったのだ!
意識を取り戻した芽衣(Aカップ)は【乙女の秘密】を知られたことに発狂し、士狼を亡き者にするべく、その場で士狼に襲い掛かる。
士狼は洋子の協力もあり、何とか逃げることには成功するが翌日、芽衣の策略にハマり生徒会に強制入部させられる事に。
こうして古羊芽衣の無理難題を解決する大神士狼の受難の日々が始まった。
が、この時の古羊姉妹はまだ知らなかったのだ。
彼の蜂蜜のように甘い優しさが自分たち姉妹をどんどん狂わせていくことに。
※【カクヨム】にて編掲載中。【ネオページ】にて序盤のみお試し掲載中。【Nolaノベル】【Tales】にて完全版を公開中。
イラスト担当:さんさん
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる